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知っておきたい"生知識"(戸建て編)

「住宅ねっと相談室」のカウンセラーが戸建て建築に立ち会いながら、工程ごとにポイントを解説します。

第50回:緊急コラム 2007年改正建築基準法問題(その4)~まだまだ続く法改正の動き~

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 建築基準法の改正の結果、現場では混乱が続いているわけですが、さらに今年来年と気になる事柄が見え隠れしています。今回は、緊急コラムの最終回として、これから予想される新たな動きと影響について話をさせていただきます。


1.検査済証は保管されていますか
 まず、持ち家にお住まい方に質問です。建物の「建築確認申請書」とか「建築設計図書」を保管されていますか?


 さらに、お聞きします。「検査済証」はありますか?


 検査済証って何、と聞かれそうですが、建築確認申請をされていれば、完成検査が行われ、その結果、合格すると送られてくる書面のことで、以前は、はがき1枚だったこともあります。


 検査済証は、建築主に対して交付される文書で、建築主事(都道府県や市区町村に在籍する職員で、建築技術・建築法規の専門家)や指定確認検査機関が交付する適法な建築物の証明書です。


   
図1 指定確認検査機関交付検査済証図2 建築主事交付検査済証

 


ところが、これまでは検査済証についてあまり重要視されず、その有無で登記費用が数万円ほど高くなるだけといった程度の受け止められ方でした。事実、大都市でも十数パーセントしか交付されていないともいわれています。


 でもよく考えてください。車などに代表される工業製品を購入する際に安心して買えるのは、完成検査が当たり前に行われているからです。さらに、車検制度で定期的に検査することで、中古車でも価値が生まれて市場が成り立っています。同じように不動産売買でも、建物の完成時の品質を証明する検査済証の有無について告知しなければならなくなったのです。そうなると検査済証のありなしは、不動産価値に大きな影響を与えることになります。


 もっとも、このことは、当たり前といえば当たり前のことで、なぜ今までそうでなかったのかと思われるかもしれませんが、それほど建築確認審査が不完全だったということなのでしょうか。


 建築申請検査と違い、完成検査は、従来、特に2階建て木造では、行政も施主も重要視していなかったと思います。今回の法改正で申請部分を厳格化したのですが、完成検査については、依然あいまいな部分はあるように思えます。


 申請部分をいくら厳格化したいとしても、初めて住宅を建てようとする施主に、設計段階で細かな点まで決定させることの矛盾を強く感じます。施工中、形が見えてくるにしたがって「ああしたい、こうしたい」と思うのが自然で、しかも、建築士など専門家が付いていて法順守の範囲で検討するのですから、確認後は変更ができないというのは、何ともふに落ちないと思うのです。この点が、実に現実にそぐわないと思います。


 本来は、完成時の検査において法律を順守して建てられているかを確認し、適法を証明する検査済証の方が重要ではないのでしょうか。


2. 二階建て木造住宅でも構造計算義務化の動き
 今回の法改正のきっかけは、構造計算偽造事件だったという見方が一般的です。もちろん、この事件は大きく影響していますが、法体系全体で見れば、グローバルな意味も含め、新しい時代に合った法整備の一環と考えた方が正しいと思っております。中でも、建物に必要な性能や品質が重要視されてきています。事実、品確法(住宅品質確保促進法)とか、消費生活用製品安全法とか、建築確認申請の厳格化などは、その根底に性能や品質の問題が見え隠れしているのです。


 建築確認申請の構造計算について、従来の審査機関の審査だけでなく、第三者の機関でダブルチェックしようとする動きの中で、木造の二階建て住宅は、特例で対象外でした。正確には、構造計算までは不要で、壁量計算など簡易な判断方法でよかったのです。しかし、今年から来年にかけてこの特例が廃止される予定です。そうなると単純にいっても、構造計算の費用と審査期間が加算されることになります。また、構造計算をしようとすれば、材質履歴や材質強度、含水率、構造にかかわる数値などが必要になるのです。


 さらに専門的な話ですが、曲げ強度やヤング係数などの話をすれば、工業製品と違う天然木材ですから1本ごとに全量検査しなければ分からないともいえるわけで、構造躯体(くたい)の製材プレカット工場などの生産体制まで影響を及ぼすことになるのです。


 尚、この問題については、先の法改正の影響が大きかったことで、今年12月に施行する予定を延期する方向というコメントが国土交通省幹部の発言としてニュースになりましたが、いずれ施行される方向に変わりはありません。


3.住宅瑕疵担保履行法の施行の動き

図3 履行法のポスター
(国土交通省HPから転載)


 品確法(住宅品質確保促進法)では、新築の住宅について、構造躯体や雨水の浸入などの10年間瑕疵(かし)担保保証を、施工した工務店や建売業者に課しています。これは、住宅にまつわる手抜き工事などの問題解決の政策として施主や購入者を保護するのが目的です。しかし、肝心の施工した工務店や建売業者が倒産してしまうと保証者がいなくなり、保証は宙に浮いてしまいます。  


 そこで、消費者保護の立場から、瑕疵担保保証を保全するために住宅瑕疵担保履行法が施行されようとしています。もちろん、この法律により消費者は保護されるべきなのですが、問題は、このために工務店は保証金の供託が義務付けられるようになり、その金額が予定では10年間に1戸の施工でも2000万円、10戸の場合では3800万円と高額なのです。しかも、この金額は、新築住宅を請け負う仕事を続けている限り供託しておかなければならないのです。しかし、一般の工務店でこれほどの高額金を供託することは難しいのが現状です。

(国土交通省HPから転載)


 ならば、代わりに保険制度に加入すればという道もあるのですが、生命保険のように工務店の健康状態ならぬ企業規模で加入が左右されるでしょう。その基準がどうなるかによっては、多くの工務店が新築を受注できなくなる可能性が出てきます。


 現在でも(財)住宅保証機構などで瑕疵担保保証を80%保証する制度があり、多くの工務店が加盟しているのですが、もし、これより厳しい条件が付けられると、腕の良い小さな工務店が新築を施工する機会が失われる可能性もあるのです。


4.最後に
 昨年6月に施行された改正建築基準法の影響で、新築着工数の激減など、建築現場が大混乱を生じていることから、一般消費者である読者の方にも影響が大きいと感じ、緊急コラムとして4回に分けて解説してきました。


 重要なことは、今回の法改正は、単体の法改正ではなく、20世紀後半からの建築基準法とその関連法規の大転換の一環であるということで、結果として住宅基本法や200年住宅といった性能や品質を確保し、担保し、長寿命化させるための根拠となるなど、いろいろな意味合いが含まれているということなのです。


 そして、消費者保護やエコロジーなどの言葉の下、しかし、結果としてこの一連の動きに追随できない個人設計士や町の小規模工務店、専門建材メーカーは消えていっても仕方がないと言っても過言ではないほど、ある意味厳しい話となりつつあります。


 一方、良心的で小回りも利き、腕も良い小さな工務店が消えていく、それで本当にこの国の理想の住宅政策が達成できるのかという心配はないとはいえません。


※お知らせ
 おかげさまで、この「知っておきたい生知識」も2004年2月にスタートして、4年2カ月、50回目を迎えることができました。正直、初めはこれほど長く続けられるとは思っておりませんでした。これも皆様のご支援のたまものと思って感謝しております。
 そこで、50回を一つの節目として、今回で連載「知っておきたい"生知識"(戸建て編)」としては、一応終結させていただきます。
 来月からは新連載をスタートさせる予定でございますので、今後もよろしくお願いいたします。


[2008/3/3]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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