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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第76号 耐震診断で表面化する床のトラブル

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 木造住宅の耐震診断調査にお邪魔する際、依頼者から床のたわみやきしみについて相談を受けることがよくあります。「床が腐っているのですか?」とか「費用がかかるのでしょうか?」など、いろいろご質問されます。


1.和室の場合


 床のトラブルを調査する際、各部屋で歩き方が異なります。たとえば、畳の場合、縁と中央部に足全体で押すように踏んでいきます。そして畳の場合は、感触が3種類に分かれます。一つは畳自身の問題の場合、もう一つはたたみ下の荒床の問題、そして、根太の問題です。


図1 畳を踏む

図2 荒床

図3 床根太と土台



 畳自体の問題としては、劣化による腐れが考えられます。材料であるイグサの断面は、スポンジのように小さい穴がいっぱい空いている構造で、俗にいうハニカム構造のようなものなのです。その結果、畳は吸着機能があり、吸った湿気はゆっくり放出する性能があり、湿度調整役をしている日本の気候に合った材料の上に抗菌作用も期待できるのです。しかし、ぬれた状態のままだったり部屋の乾燥がうまくいかなかったりすると、カビなどが生える可能性もあります。畳自身の腐れは、表面の色や臭い、なにより裏面を見れば状態がよく分かると思います。


 次に、畳がしなるように下がる場合や、板の擦れた音がした場合は、荒床と根太の問題が考えられます。この場合、あまり強く踏み込むと荒床が割れたり外れたりする場合もありますので注意が必要です。


 乗った一枚の畳だけがたわむ場合は、荒床の不備が考えられます。この場合、畳を上げて荒床の確認をするのですが、注意点はチョークなどで荒床に番号などの印を付けておくことです。 荒床板は、まるでパズルのようなはめ方をしている場合が多く、うっかり外すと、元のようにはめられなくなります。さらに、板が劣化していて割れやすかったり、止めている釘もほとんどさびて、抜こうとすると破断してしまうことも多いので、ケガをしないように注意してください。


 根太の劣化によるたわみについては、畳に押し付けた足の振動が、サッシや壁などに伝わり、全体に揺れを感じるような音がしたりします。図3は、リフォームで床をはがした床根太と土台ですが、多くは床根太が腐ったり割れたりしていて、土台から外れたりしています。


 それでも、和室の場合は畳や荒床を簡単に外すことができますので、確認も修理もしやすいと言えます。


2.クッションフロアの場合


 洗面所やトイレ、キッチンなどでよく使われているクッションフロアは、通常、合板を張った上に接着剤で貼り付けたケースが一般的です。まず、かかとで押し付けるように歩いて調べます。かかとの押し付け具合を調整しながら、踏み込みすぎないようにすることが大切です。下地材の劣化で床材が割れ、沈んでしまうことがたまにあるからです。


 洗面所では、浴室の入口周辺が注意です。ドア近くの床を踏んできしむ場合、ドア枠下部の土台が腐っている場合があります。この場合、土台から取り替えなくてはならなくなり、タイルなど浴室の内装まで影響することが多いので、建築士や工務店、大工さんなど見てもらった方がよいでしょう。


 キッチンの場合は、流し台付近などで床にこぼれた水分が、クッションフロアの継ぎ目などから合板や断熱材に伝わって劣化している可能性があります。また、床下収納庫との継ぎ目も注意が必要です。もっとも、床下収納庫があれば、そこから床下をのぞくことが出来るので確認してみてください。床下の湿気やカビの臭いなど強く感じられた場合は、基礎が低いとか雨水が回り込みやすいなど他の原因も考えられますので、やはり建築士や工務店、大工さんなどに相談された方がよいでしょう。


 トイレの便器周辺の床がたわむ場合、便器と排水管の接合部やタンク内の断熱層が割れて、タンク外側が結露している場合があります。この場合、給水管の漏水も疑わなくてはなりません。気付きにくいですが、便器の裏側でタンクの下が濡れていることがあります。


3.フローリングの場合


 居間や洋室、廊下などのフローリングでは、かかとだけで軽く押し付けるようにしたうえで、凹む箇所を探します。居間など水を使わない居室での床のたわみは、床下の湿気が影響していることがあり、特に2階は、屋根などの漏水が思わぬ処から廻っている場合もあります。


 かかとを押すように歩いて行き、きしむ箇所があった場合、今度は、立つ方向を南北とか東西など向いて確認していきます。この確認は床根太の方向を知るためで、例えば、たわみが南北方向に広がっている場合、根太も南北方向に敷かれている可能性があるのです。


 そのうえで今度はやや強く押してみます。板が部分的にきしむ感じか南北方向に伝わる感じかで、板の劣化か根太の劣化かがある程度判断できます。仮に、強く押して南北に伝わり、周囲にある家具などまで揺れるようですと、根太や土台の可能性があり、キッチンの床下収納や和室の畳を上げて、その場所の床下に潜って見に行かなければなりません。しかし、部分的で根太間できしむようであれば、フローリング材自体の問題だと思われます(図4)。


図4

図5 ドアと框

図6 換気口を塞いでいる


 


 フローリング材の劣化の場合、フローリング材の上から新たにフローリング材を重ね張りする方法が採られることが多いと思います。ここでの注意点は、床が板の厚み分高くなりますので、開口部などとの調整が必要です。


 重ね張りをすることで結果的に段差が無くなりバリアフリーになる場合もあります(図5)。


4.修理のポイント


 床の腐れなどできしむ箇所としては、今までの経験から言えば、多くは洗面所や浴室のドア付近の床とキッチンの床です。前者は土台や浴室のタイルなど補修箇所が多くなり、後者は床材だけのたわみで床材の重ね張りで解決する場合が多かったと思います。


 床の修理で大切なことは、水が回り込みやすいところのメンテナンスと床下の湿気などの換気対策です。浴室のドアの下側ではコーキングをして、足ふきマットを敷きっぱなしにせず、常に乾燥させることです。床下の湿気については、雨天の時に周囲から雨水が回り込んでいないか確認することや、基礎の換気口廻りにいろいろな物を置いて通気を塞いでいないか(図6)などをよく確認してください。換気口付近に古木材を置いている例をよく見かけますが、白蟻を呼び寄せる格好の場所を提供しているだけです。


[2015/3/4]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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