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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第67号 住宅解体に関する知識とコスト

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 今回から、住まいづくりの初動から入居後までのポイントを時系列でいろいろ考えてみたいと思います。ただし、敷地購入の話は以前に書いたことがありますので、敷地がある想定で考えてみたいと思います。


1.解体費用の上昇


 このコラムでは、最近、法改正や新法の解説が多かったのですが、21世紀に入って建築関連法が大きく変わってきていることの流れがまだまだ続いているからで、最新情報とその影響は、今後も触れていくつもりです。特に、法改正により仕様が大きく変わり、コストアップにつながるケースは、読者の皆様にとって重要な情報だと思います。


 そんな法改正によるコストアップ要因の一つが、既存住宅の解体費用です。


 それこそ昔は木造住宅の解体で出た「木材」は、お風呂屋さん(銭湯)が喜んで引き取ってくれました。しかしその後、お風呂屋さんの燃料も木材を燃やす排気ガス規制などの問題から重油に代わり、同時に建築材が素材的に複雑化し、「廃材」として処理しなければならなくなりました。


 さらに、その処理においてダイオキシン問題や不法投棄が社会問題となり、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」や「廃棄物の処理および清掃に関する法律」等の法律ができました。木と金属など分別しなければならず、その人件費などが膨らみ、その費用は昔の数倍、数百万円になりました。


 現在の木造住宅の解体は、下の写真のように機械が主流になっていますが、木造と言っても古い建物の場合、壁や瓦下地に土を多く使った場合があると解体時に粉塵が多く飛ぶため、周囲に防塵防音養生シートを張ったり、水をまきながら施工することが必要になります。


木造解体

いろいろな廃材が

木材は釘を抜く?


 さらに、内装下地に防火を兼ねて石膏ボードが使われている場合や漆喰(しっくい)や入洛などの場合は注意が必要で、基本的に水で濡らすと重くなるばかりか、再資源化が難しくなることが考えられるのです。特に石膏ボードは、その防火性や施工のし易さ、手軽さから内装下地材の主流を歩み、大量に使われてきました。その分、解体時の量が半端ではなく、今後ますます増えていく傾向にあります。


 石膏ボードは、紙と石膏からなっていますので、分別することで再資源化して有効活用する必要があります。石膏ボードの場合、ビスなどで固定されているので板材としてはがしやすく、板材の方が搬出などでもやりやすいはずです。もう一つ、漆喰やボード類が築年数の古い建物に使われている場合、石綿やヒ素、カドミウムなど含まれている可能性があります。この扱いにも精通して対応する必要があるので、不用意に水をかけて粉砕することは問題なのです。


 このように、住宅解体だけでも、手間が増えていることから、費用は今後も上昇する可能性があります。


2.分別処理の知識


 具体的な分別は、図1のように解体や新築時に発生するいろいろな物を分別し、再資源化をするということですが、書かれている内容的にはビルなど大きな建築物が該当する感じです。


図1 建設資材の再資源化イメージ

 しかし、図2をみると床面積が80平方メートルとなっていて木造も該当することが分かります。80平方メートル以下でも、500万円以下の解体は、登録している解体業者が行うことになっている以上、分別することになります。


図2 分別対象

 一般的な木造住宅の解体費用ですが、分別解体の無かった時代と比べて倍以上になったといわれています。さらに、本体解体では基礎撤去費用だけでなく、地中障害があったとか、浄化槽など地中の処理問題もあります。まさに、予期していなかった費用の代表とも言えます。


 また、周囲に迷惑をかけないための解体時の粉塵の飛散防止や防音の養生などの付帯工事がいっそう厳しくなり、加算して考えなければならず、その分費用はかさみます。


図3 解体見積もり項目の例(項目はそれぞれの現場事情で異なる)

 もう一つ注意が必要なのが、石綿などの含有です。木造住宅では、コンクリート建物のように「石綿吹付」対策が必要な場合は少ないと思いますが、石綿の含まれている建材を使っている可能性はあり、よく確認しておく必要があります。


3.再資源化コスト


 建築物の解体で処分されるコンクリート塊は年間3200万トン(2005年)、石膏ボードは年間76.7万トン(2000年)など、その量は膨大です。木材だけ見ても、木造住宅を解体すると、延べ床面積1平方メートルあたり85キログラムの木材が発生すると言われています。例えば100~120平方メートル(30~40坪)で、おむね10トン程度の木材が発生することになります。その結果、建築廃木材年間発生量(2000年)は、重量にして20.2万トン、しかも、廃木材は、廃コンクリートと比べ体積的には大きいので、体積で換算すると年間53万立方メートル(2000年、内訳:建築解体木材40.4立方メートル)にもなるのです。


 世界の木材を使い尽くしている国の一つが日本とも言われていますが、植林と共に、建築廃材の再資源化は重要で、その意味から解体に費用がかかることは仕方ありませんが、その解体費用が新築住宅資金計画の中で大きな比重になってきていることと、地中障害や防塵防音対応など思いがけない費用も考えられますので、計画段階で設計者や施工者の話をよく聞いて頭に入れておく必要があると思います。


[2014/6/4]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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