日本経済新聞 関連サイト

住宅サーチ for Premium Life

失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第70号 設計プランは変更できないと思え!

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をtwitterでつぶやく


1.建築確認申請後でも平気でプラン変更していた時代からできない時代へ


 このコラムでは、これまで建築関連法の話をかなり割いて解説してきました。その理由は、瑕疵担保履行法や改正省エネ基準などの建築確認申請の考え方が大きく変わったからです。昭和の時代、あるいは20世紀であれば、建築確認申請が中心で、特に木造住宅の場合などは申請ありきで、極端に言えば申請さえすれば「後は勝手」とも思われていました。


 私は木造住宅耐震診断士として建物診断をすることもあるのですが、1981(昭和56)年以前の在来木造住宅で建築確認申請の図面があっても図のように、添付図面は1枚だけで、各平面図のほかには立面図は2面だけとか、面積計算や筋交いの位置も結構ラフな感じで書かれています。


 耐震診断をする際には、まず実際のプランを目視で書いてから建築確認申請の図面と照らし合わせます。なぜなら申請時と実際が一致することは非常に少ないのです。図面通りに書き写してから実際を見ると書いた図面が頭によぎり、間違う可能性があるからです。もちろん、33年以上前ですから増改築されたケースもあるのですが、当初から申請と異なると思われるケースもあります。


 さらに言えば当時の公的融資であった住宅金融公庫から融資審査のための検査を受けた場合でさえも、実際とは違う場合も多々あるのです。その理由は、上棟時(構造躯体組み立て時)に中間金が出る関係で公庫の検査を受けるのですが、その後は検査が無いため変更されてしまうのです。


 公庫に限らず、住宅融資は、完成時に一括払いでは施工側の負担が大きく、中間金の受け取りが認められています。しかし、完成時の検査については本来受けることとなっているものの、登記をして公庫の抵当権の設定ができれば最終金は交付されることから、申請時の面積と登記上の面積が一致すれば手続きは完了してしまうのです。具体的には、部屋割りや窓の位置など変更されても登記上の表示内容は同じなのです。さらに言えば、もっとも問題なのは、土地家屋調査を経て登記申請中や登記直後に増築をするケースすらありました。まさに、確信犯的な違法行為です。


 しかし、21世紀に入って、いわゆる「手抜き工事」等が社会問題になり、住宅の品質確保が目的の新法「住宅品質確保促進法」や構造計算偽造事件がきっかけになり建築確認申請が厳格化された建築基準法等改正で、公的融資を受けていない木造住宅でも中間完了検査が義務付けされるようになって、建築確認申請後にプランの変更はチェックされるようになりました。つまり、実質的には、変更できなくなったということです。


2.よくある契約後の心変わり


 例えば車を購入する場合、ショールームで実際の車を見て、オプションをどうするか決めて契約します。その日は、完璧と思っていても、その後時間がたつにすれ、ほかのタイプや色の方が良かったかなとか、オプション選択を変更しようかなど迷いが出てくるものです。自分以外の家族や知人の意見を聞くたびに、ますます迷いが出てくる、こんな経験はありませんでしょうか。


 住宅でも同じです。いや、車よりもっと高額の買い物ですので、もっと迷いが出るものです。法律的に言えば、契約した以上、変更はできないのが原則ですが、現実は、契約時に100%のイメージができるはずが無く、作業が進むごとにイメージが出てくるというのが本当のところかもしれません。情報量もどんどん増えていくでしょう。


 もちろん計画にそって複数の専門家(職人)が作業するわけですから、途中変更は負担が大きいのも事実です。しかし、それでも、施主のためと思って精一杯の協力をしてきたのですが、今回の建築確認申請等の厳格化により、変更は不可能と言ってもいいぐらい厳しくなりました。


3.変更できないからこそ最初が肝要


 建築確認申請だけでことが流れていた時代であれば、変更手続きをすれば出来ることもあったのですが、建築確認申請前に申請義務が必要な項目がいくつか現れてから事態は一変しました(前回お話ししましたので省略します)。


 まずは、「一度申請した設計プランは、変更できない」と思ってください。正確に言えば、申請し直せばいいのですが、それにかかる手間と費用、時間のことを考えると、「できない」と言っても過言ではありません。そこで、今後はプランニングの段階で、施主と設計士が十分に話し合い、意思を固めておかなければならないのです。しかも、間取りだけでなく、使われるサッシのガラスの種類から、給湯器など設備機器に至るまで機種を決めてからでないと申請できないし、その後の変更が出来ないことになるのです。


 ちなみに、今までの経験から、施工途中で施主から変更要請がある代表例をご紹介しましょう。


(1)開口部(窓の位置など)
 設計段階で、窓の位置については入念に打合せするのですが、それでも変更依頼があります。理由の一つは、家具やテレビの配置変更や新たに購入することによるサイズ変更などです。もう一つは、お隣との関係で、もう少し位置を変えて欲しいなどの要望です。 これら開口部の変更は、耐震壁の耐震性能計算の変更、採光計算の変更などから、最も変更困難と思ってください。
(2)設備の位置
 特に、エアコンのように、壁に穴をあけなければいけないような設備の位置の変更です。開口部と同じく、防湿断熱層の穴あけは、防水・省エネ施工の関係から、後からの穴あけは困難となります。 意外と注意が必要なのは電気配線関係で、コンセントの位置の変更はまだ可能ですが、数を増やす場合は、配電盤や電気の契約の関係から難しい場合があります。また、配管を伴うテレビや電話で外壁内に配管する場合は、防湿断熱層との関係で難しくなると思います。


 他にも外壁の変更など、きりがないですが、これからは、一度申請を出せば変更できないことを肝に銘じて、しっかりとプランニングする必要があると同時に、サッシのガラスや断熱材などから設備機器選定上の基本性能や運転上の諸データについて設計者もしっかりと説明できる知識が求められるようになるのです。


[2014/9/3]

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をtwitterでつぶやく


住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


バックナンバー


※正しく表示されない場合はしばらくお待ちいただくか
こちらのリンクをクリックしてください

 

このサイトについて

日本経済新聞社について