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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第92号 中古物件のチェックポイント<設備編>

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 中古住宅の流通を促進することを目的に誕生した判定制度「インスペクター制度」でも、意外と大変なのが設備関係の調査です。それは、調査対象である「設備」の考え方が一般の方の発想と多少違うことと、損傷や瑕疵(かし)が見つけにくいことです。


1.ガイドラインが示す調査内容


 インスペクター調査の対象範囲については、国土交通省が既存住宅インスペクターのガイドラインを公表しています。このガイドラインによりますと、「(検査項目)は、検査対象部位と確認する劣化事象等で構成され、劣化事象等については部位・仕上げ等の状況に応じた劣化事象等の有無を確認することを基本とする」と書かれています。そして、設備に関して実際に確認すべき劣化事象等は、「設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの。(例)給排水管の漏れや詰まり等」と書かれています。


2.設備の調査範囲


 「設備」と聞くと、一般の方の感覚から言えば、設計段階から設置され、建物や建具に固定されている物が浮かびますよね。例えば、給湯機、空調機(組み込み型のエアコンなど)、換気扇、水道の水栓器具などでしょうか。最近は、備え付け型のコンロやオーブン、浄水器もありますね。


 ところが、冒頭のガイドラインなどで示された検査項目では、「設備配管」とだけ記されているのです。ということは、既存住宅インスペクターの基本的な考え方は、図1の給水管と給湯管および排水管などの配管が対象であって、家電類はもちろん、エアコンなど空調機器、給湯機など設備機器でさえも対象ではありません。理由は、あくまで建物の構造躯体が検査対象であって、造り付けの造作設備や壁紙などの仕上げ材は、いくらでも取り換えることができるということで対象外だということです。


図1 住宅と設備配管のイメージ

 もう少し具体的に解説すると、図2をご覧いただければわかりやすいと思います。赤線で囲んだ部分だけが調査対象ということです。つまり、水栓部分はもちろんのこと、メーター類も調査対象ではありません。あくまでも配管自体についてのみ判断するのです。この背景には安心して支障なく日常生活を送るために問題になる可能性が高いもので、配管のように施主自身で確認が困難な部位と言うことなのです(水道メーターから道路までの配管や最終ますから道路までは、水道事業者の管轄です)。


図2 設備調査対象は

 では、給湯機やガスコンロ、換気扇など設備機器の作動不良などはどのようにして確認するかというと、依頼主の希望に応じたオプション検査として対応することになっています。ただし、私の場合は、このオプション調査については、水道屋さんやガス屋さん、電気屋さんに直接調査を依頼するようにしていただいております。なぜなら、漏水やお湯が出ないなど具体的な症状があった場合でも、給湯機など機器そのものの点検は、それぞれ資格を持った専門家が対応することが義務付けられているからです。また、ガス給湯機など一定期間で点検が必要なものについては、安全上の問題として、専門業者による点検を受けるようにお願いしています。


3.配管に釘が!?


 給排水管の問題として多く見られる事例は、配管に釘などが刺さったケースです。釘がゆがんで打ち付けられた結果、横になる配管に貫通してしまうような事例です(図3はそのイメージ)。


図3 配管にくぎ(イメージ)

 給水管の場合は、漏れ水があれば水圧が下がることから検査などで発見されやすいのですが、最近の施工現場では、くぎからビスへ移行しています。そうすると平滑なくぎに比べてビスのネジ山がパイプにからんで水漏れがやや起きにくくなるせいか、発見しにくかった事例もありました(図4)。もっとも、最近はサヤ管ヘッダー工法の普及で、固い配管材料からチューブ状の配管が普及し、壁内での固定が緩やかになって事故が起きにくくなってきたとの報告もあります。


図4 ビスとくぎ貫通とからみ

 一方、排水管は、常時流れているわけでもなく、また水圧が無いことなどから、漏水しても発見しづらいことがあります。実際には、数年たってからくぎのさびなどが原因で漏水が始まるケースは少なくありません。損傷や腐食の問題だけでなく、長年にわたる油分や洗剤のカス、水あかなどいろいろな要素で排水が流れにくくなることもあり、前の住人の使用状況や掃除状況も気になるところです。


4.購入後、早期に点検を


 いずれにしろ、中古住宅を購入する際は、購入後できるだけ早めにそれぞれの設備機器の専門業者の点検を受けることをおすすめします。中古住宅の設備機器は、多くの場合、耐久年数の到来もありますが、早めに発見することで、売り主にアフターサービスとして対応をお願いできる場合もあります。その場合、だいたい3カ月以内というのが一般的ですので、それまでに点検を受けると良いでしょう。


[2016/7/6]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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