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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第81号 意外な雨漏りの原因箇所、「軒天」を点検しよう

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 軒天(のきてん)ってご存じですか? 屋根や庇(ひさし)の下側にある天井の部分です。最近、ここが雨漏りの原因になるケースが増えています。


1. 軒天今昔


 軒天とは、図1のように屋根の先端で外壁から外側に出ている部分(軒裏部)の天井に当たる部分です。通常は、図1の右側のように屋根勾配に沿ってありますが、最近の建築物では水平にすることもあり、板を張っただけの面になっていることが一般的になっています。


図1 軒天

 他方、古民家などの軒裏は、屋根を支えている垂木(たるき=屋根の小屋組構造材)を見せていて(写真1)、表情や情緒があります。まさに軒天は日本建築の美を表現する部分でもあり、積極的に見せる方が一般的なのです。立派なお屋敷では、深く絶妙な美しい垂木に目を奪われます。丸材を使っているところもあります。


【左】写真1 茅葺き屋根の軒天と垂木 【右】写真2 大名屋敷の美しい軒天

 さらに、垂木を微妙に曲げたり、重ねたりすることでより印象を強くしているのが神社やお寺などなのです(写真3)。多くの神社仏閣では伝統的に競い合うように軒裏の複雑な垂木等の木組みが重要なポイントになっているのです。


写真3 閣の軒裏はいろいろな組合せが

 ちなみに神社仏閣などでの軒裏のデザインや仕組みにご興味がある方は、以下の名称をインターネットで検索してみるのも面白いですよ。「斗栱(ときょう)、組物(くみもの)、木鼻(きばな) 蟇股(かえるまた) 花肘木(はなひじき) 双斗(ふたつど・そうと) 撥束(ばちづか) 蓑束(みのづか) 大瓶束(たいへいづか)  笈形(おいがた) 蟇股(かえるまた)」などなど。


2. 軒天の劣化と点検


 話を戻します。冒頭でお話ししたように、平成になる少し前ぐらいから、図2のように住宅の軒天から垂木に板材を張って軒天が面状にするのが一般的になってきました。垂木と外壁などの納まり具合の関係で防水しにくいことや、狭い敷地では隣家との関係から北側斜線や道路斜線などで軒の出(屋根の先端)かかるため軒の出の少ない傾向になったことなどが要因です。


【左】図2 最近の軒天は平ら 【右】図3 軒先が短くなった

 耐震診断やリフォーム相談の機会に既存住宅を調べることがあるのですが、耐震診断の対象になる1981(昭和56)年以前の住宅では、軒天にいわゆるベニヤ板に塗装しただけの仕様が多くみられます。確かに図4のように通常の状況では、雨は当たりにくい部分ではありますが、想像してみていただいてもお分かりの通り、ベニヤ板に塗装しただけでは耐水性はなく、年月を経つにつれベニヤ板は写真4のように劣化して、ベニヤ自身の層剥離や釘の脱落などの症状が現れ、穴が開いたり表層が剥がれ落ちたりする場合もあるのです。また、勾配がある場合でも奥は釘など打つスペースが狭く、しっかり固定されにくいうえに、シーリングなどもしにくいので隙間が空いている場合が結構あります。


【左】図4 軒天は濡れにくい 【右】写真4 軒天のはベニヤ板はボロボロ

 そこで、通常の雨などでは特に問題は起こりませんが、台風やゲリラ豪雨など強い風を伴った強風雨などではこの軒天から雨水が入ってしまうのです。最近のサッシの上から雨漏れが起きるなどの相談の多くが、この軒天の劣化に伴うものがほとんどと言っても過言ではありません。


ちなみに、昔の建物の軒は、もっと広く長く取っていましたから、隙間があっても雨が入るということはありませんでした。しかし、住宅事情から最近の住宅では、どんどん短くなってきましたので、この軒天の仕様が問題になってきたということなのです。


 さて、軒天の点検方法ですが、2階の窓や地上から望遠鏡などで軒天を見ると、塗装された表面に細かく筋が並んで見える場合はベニヤ板の上に塗装されているだけの可能性が高いと考えてください。その場合は、さらに観察を続けて劣化していないかを確認してみてください。ご心配のある方は、日頃お付き合いのある工務店や大工さん、建築士などに相談された方がよいかも知れません。


[2015/8/5]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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