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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第75号 「相続税対策で二世帯住宅」の注意点

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 2015年1月から、相続税の実質増税が施行されました。「増税の影響は、大都市の土地価格が高い地域に限られる」「地価が高い東京の杉並区や世田谷区では、敷地50坪程度の普通の住宅でも課税対象になってしまうのでは?」など、いろいろな意見がありますが、「風が吹けば桶屋が儲かる」という風潮も耳にします。


1.今住んでいる家が相続税の対象となってしまう!?


 相続税改正については新聞記事などで読まれていると思います。改正前までは、相続人が妻と子供2人の場合、「基礎控除額5000万円+相続人の数×1000万円」で8000万円まで控除されていたのですが、改正後は「3000万円+600万円×3人」で4800万円となったことです。


 ここで問題なのは、相続の対象になる資産の中身です。高額の現金や株式などを相続する場合、相続税の対象となっても納得いきますが、今住んでいる家がたまたま立地が良く、評価額が高いために相続税を取られるとすれば、なんとなく違和感がありませんか。「主な相続財産=現在住んでいる不動産」であるという方が多いなかで、相続税の増税が始まったことが特色です。


 そうなると土地の評価額が気になるはずです。土地の評価(価格)には、実は5種類もあるのです。


(1) 公示価格
 公示価格は、新聞などで銀座の○×ビルが日本一などとよく取り上げられるもので、地価公示法に基づき定期的に評価されている公的地価基準です。個別の地点、適正な価格が一般に公表されているものです。


(2) 路線価
 敷地が接している道路部分の基準価額です。税金関係の基準額として採用されることが多いです。だいたい公示価格の80パーセントぐらいとされています。


(3) 固定資産税評価額
 固定資産税を賦課するための 基準となる評価額で、公示価格の70パーセント相当とされています。


(4) 実勢価
 実際に取引されている価格です。上記の基準を参考にするも、不動産の売買価格は、自由な契約行為によって決まります。


(5) 国土法価格
 バブル経済時のように、国土の適切・効率的な利用の妨げとなる土地取引や地価の高騰を抑制するため、土地の利用目的だけでなく取引予定価格についても審査する制度です。


 さて、この中で、相続税の評価基準として土地については「路線価」を採用されるケースが多いと思いますので、路線価について説明します(建物は、減価償却として年々減額する固定資産税評価額が採用される)。


 図1は、路線価図のイメージです。インターネットで「路線価」と検索すれば、国税庁のホームページが一番上に出てきて簡単に調べることができます。道路上に書かれた数字は、1平方メートル当たりの評価額で1000円単位です。そして、その横に書かれたアルファベットは、借地権割合で、Cは、30パーセントが地主さんの評価するうえでの持ち分と解釈できます。


図1 路線価図イメージ

 路線価で「270C」とされている道路に面する宅地は、接道幅や変形地など評価減となるケースは別として、一般的な宅地であれば、165平方メートル(50坪)で、4455万円が路線価として評価されます。


 ここからが問題で、東京、大阪などの大都市では、例えば東京都世田谷区の住宅地を見ると400~600と言った数字が一般的です。つまり、50坪でも6000万~8000万円台の評価になっているのです。ここで相続が発生し、「小規模宅地の評価減」(相続人が自分で住んでいる家を相続する場合の軽減措置)が使えなければ、相続税の対象になるのです。


2.相続税の改正で二世帯住宅が増えている!?


 この話を具体的にお知りになりたければ税理士に相談するか、関連の書籍がいろいろ発刊されているのでご覧になっていただいた方が良いと思いますが、将来の相続税対策の一つとして、二世帯住宅にするという選択肢が注目されています。つまり、二世帯住宅にして親と子が同じ敷地内に住むことで、被相続人(親)だけでなく相続人(子)も、現在住んでいる不動産の相続として減税ができる小規模宅地等の評価減などの特例を生かし、相続税がかからないようにしたいという方が増えています。


 最近の住宅メーカーの広告を見ると、二世帯住宅に力を入れていることが分かります。そう言えば、バブル経済期において、土地が高くて買えないから二世帯住宅が盛んに建てられた時期がありました。その当時、私も多くの二世帯住宅の設計を経験してきましたので、その経験を踏まえ、二世帯住宅を設計する際の注意点をお話ししたいと思います。


3.二世帯住宅を設計するにあたって


 二世帯住宅を計画する場合、まず、住む空間を上下にするか左右にするかがまずあります。多くの場合、1階は親世帯、2階が子供世帯という上下型でしょうか。そして、玄関については、上下で別々に設けるか、1カ所にしてホールで分けるなどが一般的です。これらをお聞きして敷地条件などからプランニングをするか、モデルの中から選択することで住宅が決まっていきます。


図2 玄関別二世帯住宅イメージ

 しかし、もっと大切なことがあります。それは、二世帯住宅に同居する方々が、新たな共同生活を始めると言うことなのです。夫婦は、縁があって愛し合って一緒になったはずです。そして、子供たちは2人にとってかけがいのない存在でかわいい存在です。


 しかし、両親と子の配偶者は義理の関係で、嫁や婿は、他人と同居することになると言っても言い過ぎではありません。また、親子間でも生きた時代が違うぶん、生活上の考え方が異なります。さらに、孫との関係はかわいいと言う感覚とは別に、しつけや教育方針などでも考え方が異なっています。これらのいろいろな関係が、一つの空間の中で気遣いしながら混在していくのが二世帯住宅なのです。


 また、入居時から時系列で、家族それぞれが生活や健康面で変化していくのです。孫は育ち、独立する方向になりますし、両親は老いていき介護が必要になる可能性があります。今は問題なくとも将来のことも考えておかなければならないのです。


 さらに、当事者それぞれに友人や近隣、サークル、宗教などの関わりから訪問者が増加するとか、旅行や転勤などいろいろな要素が絡むことも忘れてはいけません。


4.設計の際に、生活上のルール作りをすることが重要


 私の場合、二世帯住宅を考えたいというお客様に対して、カウンセリングというとおこがましいのですが、施主家族と両親、それぞれ個別とその後の合同の打ち合わせを何回かしています。そして、過去に設計した二世帯住宅や自分の経験など交えながら説明していきます。その際、二世帯で一つの空間に住む大変さを包み隠さずお話しします。もちろん、その結果「やめた!」と言われることも覚悟したうえです。


 まず、片付けや掃除の仕方などから皿の洗い方、ゴミの出し方など些細なことが、それぞれの人生というと大げさですが、微妙に違い、ほんの小さな動作さえ気に入らなかったりイライラしたりすることもあるのです。


 孫のことでは、2階ではしゃぎまわるのは我慢できるけれど、世話ばかり押し付けられると自分の時間が無くなるとか、しつけ、作法など違うと感じているとかもあります。また、宗教や趣味、サークルなどで来訪が多いとか、近隣との関係とか多種多様な問題が潜んでいるのです。


 そこで、KJ法(※)ではありませんが、私の考えている二世帯住宅で起きる可能性のある事例について、家族それぞれの意見を聞き、あるいは私の思った感じなどを分類して解説している中で、皆様にいろいろ考えていただくのです。そして、その結果から導き出した項目や設計の経験からの項目を「ルール」としてまとめていき、また、よく話し合ってその中から10項目以下、出来れば5項目くらいのルールとして決めるのです。この機会を通じて大切なことは、問題点をお互いに話していく過程で確認しておくことです。


 二世帯住宅と言っても、息子の家族か娘の家族かによっても大きく違いますが、ルールの大前提は、親子間といえども各戸別共同住宅であって、お互いの生活は別々である自覚です。


 ルールを決めておいた方が良い代表的な項目をあげておきます。


 ・お互いの来客は、別々のチャイムが鳴った時点で干渉しない
 ・親子間専用インターフォンを設置し、外出前は一声かける連絡確認
 ・相手に予定を伝え、相手のお出かけは詮索しない
 ・宿泊を伴う不在は、共有カレンダーに予定を入れる
 ・掃除や洗濯時間を決める
 ・家事の仕方には口出ししない など


 ※「KJ法」…データをまとめるために考案した手法で、データをカードに記述し、カードを意図したグループごとにまとめて、図解しまとめていく方法。企業などで創造的問題解決に効果があると採用された。


5.風が吹くと桶屋がもうかる?


 首都圏などの一部の地域だけだとは思いますが、相続税をきっかけに、二世帯住宅の新築が増加しているという、想像していなかった現象が起きています。このことは、住宅メーカーや建築業界にとっての追い風という側面だけでなく、福祉の面からも、自宅介護の促進として期待されている面もあります。


 二世帯住宅は、大変だというイメージを与えてしまったかもしれませんが、現代版同居生活スタイルとして、いろんな方面からの期待やメリットも予測されますので、二世帯住宅をお考えの方は、良い機会ですので、いろいろ情報を得て、十分話し合って、積極的に進めてください。


[2015/2/6]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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