日本経済新聞 関連サイト

住宅サーチ for Premium Life

失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第91号 中古物件のチェックポイント<躯体編>

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をtwitterでつぶやく


 中古住宅の購入の際のチェックポイントを、今話題のインスペクター制度の解説と合わせてご紹介しています。今回は、戸建て住宅の内観のチェック方法についてお話しします。


1.内観チェックは和室から


 木造住宅場合、内観を見る中で一番判りやすいのはどこでしょうか?


答えは、和室です。その理由は、構造躯体が室内で見える唯一の場所だからです。実際に最初に和室に入り、柱と鴨居、長押などの納まりを見ると大工さんの腕、丁寧さ、心使いなどまで伝わってきます。施工が悪いと、柱と鴨居などいろいろな隙間が見えてきますし、ひどい場合は、柱自身が垂直ではない場合もあるのです。


和室は構造躯体が見える(イメージ)

 図1は、一般的な8畳の和室のイメージです。円で示したA~Dは、柱など構造躯体の組み合わせ部分を示しています。柱など構造躯体は、建て方などで水平垂直など位置が正確に決まり、後から調整するのは難しいです。最近は、在来木造でも工場でプレカットされ、現場ではプラスチック模型のように組み立てるだけですので、ある意味そのぶんの精度は向上していますが、昔は大工さんが木材屋さんの敷地などで、1本ずつ刻んで、ほぞなど組み合わせて部分の加工をしていました。


床の間

床柱

長押・入隅の納まり



 図2は、納まりの実際の画像です。各部の納まりでは、新築時から数十年経過しても、隙間が無ければ、大工さんや設計者ら建築の専門家でなくても見た瞬間にうまくおさまっていると感じられます。


 一方、木組みの隙間が目立ったり、ふすまを閉めたときにどちらかが傾いているように感じる場合など、施工時や完成後の自重で変形していた場合は、キッチンやトイレ、浴室、居室など、ほかの場所でも問題を生じているケースが多いと思われます。


 図3は、90度で木材を納めたときに、隙間が生じているケースです。図4のように、木を45度に切って合わせた場合、最初はおさまっていますが、AとBの長さの違いや、元々の木のどの部分をカットしたかによって、春夏秋冬の温度や湿気、日照等の差が時間の経過を経て、木が変化する結果、隙間を生じます。腕のよい大工さんは、微妙な角度でカットすることで隙間を最小限に留めているようです。また、床柱など表面がゴツゴツしている場合に、長押など接合する場合も腕の差が生じる気がします(図5)。


納まり例 45度

45度問題

床柱と長押等



 柱など構造躯体に関わる検査では、以前にも書きましたが、1000分の6以上の勾配傾斜があるかどうかを確認します。床の傾斜に関しては、畳ではわかりにくいので、廊下や居間、キッチンなどで検査します。


レーザーレベル

 検査には下げ振りなど用いるほか、図6のようにレーザービームを使って測っています。図7のように、垂直や水平のレーザー光を当てて、各部でメジャーなどで測定して傾斜状況を測るのです。


傾斜測定 左は柱、右は床の傾斜

 下げ振りについては、五円玉など穴の開いたコインに糸を通し、垂直の糸と柱の上下などを見て測定できますし、床についてはゴルフボールを置くなどして傾斜を推定することも可能ですので、試してみてください。


2.インスペクター調査における木造内部調査項目


 インスペクター調査の内部調査では、構造躯体など構造耐力上の安全性を確認します。具体的には、次のような調査項目になっています。


ア.天井:下地材まで達するひび割れ、欠損、浮き、孕み、剥落
イ.小屋組:著しいひび割れ、劣化、欠損
ウ.梁:著しいひび割れ、劣化、欠損、撓み


 このうち、アの「下地材まで」というのは、クロス貼りの場合では合板や石膏ボード、さらにその下地の木部材に達する、あるいは下地材からクロスにまで及ぶひび割れ、欠損、浮き、孕み、剥落のことです。釘やビス留めなどで発生する場合もありますが、原則、構造躯体や構造部材の劣化等に起因するおそれが想定されることから、劣化事象などに該当するとしています。アについては、ひび割れの幅を測ることはあっても、原則は目視で判断します。


 次にイですが、小屋裏(図8)を構成している構造部材の割れ、劣化、欠損の有無を調査します。目的は、台風や地震によって屋根構造そのものの変形や破損を招かないかを見るものです。小屋裏には屋根を構成する部材が組み合わされており、部材の乾燥収縮や腐れなどのひび割れでも、応力の伝達がされず変形してしまう可能性があるのです。


小屋組みのイメージ

 また、各部材の接合部に取り付ける接合金物(図9)については、腐食や接合部の不良などを確認したりします。ところで「子はかすがい」とか「豆腐にかすがい」などでおなじみの「かすがい」という表現を、木造建築でも昔から使われてきました。しかし、「かすがい」は、2つの部材をつなぐ意味で使われていますが、耐震性能を考慮すると、引張に対する強度はほとんどないとされていますので、検査上は、「使われている」と記載しても、性能判断としては微妙な扱いです。


小屋組みで使われる接合金物のイメージ

 インスペクター調査では原則、小屋裏の点検口や和室の押し入れなどから覗くだけで、小屋裏に入っての検査はオプションになりますのでご注意ください。


 ウの梁に関しての問題は、構造躯体でも最も重要な部材ですが、設備関係配管などで過度な貫通口や切り込みがつくられた場合など、施工時の不具合も含めて劣化事象に該当します。


3.雨水の浸入形跡を探がす


 住宅品質確保促進法や瑕疵担保履行法などでは、瑕疵の対象として構造躯体の問題とともに雨水の浸入を対象項目にあげています。雨漏りの跡が確認されたということは、周辺部にある構造部材の劣化を促進させる要因と想定され、そのまま問題を放置されないようにインスペクター制度でも雨水の浸入(雨漏り)については、劣化事象に該当する項目です。


野地板裏面雨漏り跡

雨漏り腐れ+蟻害



 雨漏りの形跡は、小屋裏、天井、各開口部の壁などにシミが出来る形で残されます。そして、いつできたシミか、補修や改修以前のものか、現在も漏れているかなど、住民へのヒアリングをしながら検査します。図10の屋根裏面(野地板)のような雨漏りでは、ある程度、原因箇所を特定できますが、図11のように外壁の内側の場合には、すぐ脇のサッシや外壁のモルタルからなのか。さらに1階の天井でもシミが見つかれば屋根か、2階の外壁か、開口部か、配管からかなど、なかなか特定できないこともあります。


 施工時の設計上の問題も踏まえ、特殊あるいは複雑な屋根で納まりに問題は無いのか、軒の出は少なくないかなど、雨漏りの事実と想定できる原因を推測していきます。


 次回もこの続きを書きます。


[2016/6/8]

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をtwitterでつぶやく


住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


バックナンバー


※正しく表示されない場合はしばらくお待ちいただくか
こちらのリンクをクリックしてください

 

このサイトについて

日本経済新聞社について