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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第90号 中古物件のチェックポイント<外壁編>

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 前回は主にマンションの内装の調査方法についてお話ししましたが、今回は戸建て住宅の外壁の調査方法についてお話しします。


1.外壁の亀裂をチェック


 まず、建物の周りを見ます。建物の傾きや屋根の状態、外壁の状態などを目視します。さらに、外壁や基礎部分の亀裂を確認します。


 外壁については、モルタル仕上げやタイル張り仕上げ、そしてサイディング仕上げなどがあります。亀裂は、外壁材自体だけの亀裂もありますが、構造躯体や下地材の腐れや変形などから生じていることもありますので、亀裂の原因特定が重要です。


図1 亀裂の幅を測る道具

図2 外壁の亀裂



 亀裂の原因を特定するためには、その幅や深さ、長さを測定して判断材料にします。図1は、亀裂測定に使われる道具です。左側のピアノ線は、亀裂に刺すことで奥行きを判ります。中央にあるのは、亀裂専用の物差しで、右側のゲージは、亀裂に差し込んで幅を測ります。このような道具が無い場合、名刺やはがきを差し込むのも良いでしょう。典型的な名刺やはがきの厚さは、0.3ミリぐらいですからスイスイと入るようだと0.5ミリぐらいと思えます。


 現在、普及が考えられている既存住宅インスペクター制度では、測定結果で幅0.5ミリメートル以上、深さ20ミリメートル以上を問題のある亀裂としているケースが一般的です。それ以下の場合、単純な外壁材の収縮等による亀裂の可能性が高いので、構造的な面では問題が少ないと判断します。


 また、亀裂ですが、外壁面の真ん中に出ている場合と、開口部角などから出ている場合があります(図2)。図2の亀裂(B)は、サッシ枠の周辺の下地が補強されていない場合と考えられ、雨水の浸入などが懸念されます。 問題なのが亀裂(A)のケースで、壁面に対して斜めに入るのが「剪断亀裂」と言って、建物が変形した結果出る典型的なケースです。


 タイルの場合は、一枚一枚それなりの強度がある材料のために、構造躯体の変形は、図3のように階段状にタイルがずれることによって判断できます。この場合、単純に亀裂があるだけでなく、タイルが浮いている場合も考えられ、剥がれ落ちるなど危険性もあります。ずれているタイルを軽く叩いてみて、木琴のような音がした場合は、浮いていると疑ってみる必要があります。


 また、サイディングの場合は、構造躯体からの問題だけでなく張り方など他の要因もあるなど判断は難しい面もあります。


 いずれにしても外装面の高いところで見つけた場合は、落下して思わぬケガの原因にもなりますので、すぐに建築士や工務店など専門家に見てもらった方が良いと思います。


図3 タイルの亀裂

図4 基礎と化粧モルタル



2.基礎の亀裂


 基礎については、外見からの目視だけでは難しい面があります。というのは、図4でお分かりいただけるように、見える部分はおおむね化粧モルタルが薄く塗られていて、そのモルタル部分だけに亀裂を生じている場合と、基礎の亀裂が表面まで出ている場合があるからです。


 亀裂を見つけたら、まず、指の関節や棒などで表面のモルタルを軽く表面を叩いてみましょう。その時に軽い音がした場合、化粧モルタルが浮いている、つまり、基礎と化粧が剥離していることが多いです。この場合は、あまり心配はいりません。


 一方、亀裂が深く存在している場合、できれば床下から基礎の裏側をチェックし、そこでも亀裂が確認できれば、基礎自体が完全に割れていることになります。このケースは、鉄筋の入っていない無筋コンクリートの基礎で起きやすいのですが、昭和50年代くらいまでの木造住宅では、無筋コンクリートの基礎は存在していました。


 ただ、基礎は地盤の強弱で大きく左右される場合もありますので、念のためにネット上で公開されている地盤情報なども調べてみると良いと思います(国土地理院の「土地条件図」、地方自治体のボーリングデータベース、液状化ハザードマップ、「ジオダス」などがあります)。


3.建物の周辺調査


 既存住宅インスペクター制度は、建物だけが対象ですが、実際に購入を検討する際は、建物以外の周辺調査も大切です。例えば、隣地との境界線の杭はあるのか、境界線上の塀の持ち分(通常は、塀の中心が境目)はどうなっているのか、などです。また、塀自体の状態チェックも大切です。ブロックが何段も積まれている場合は、地震の際の倒壊も心配です。支え(袖壁)があるかなどチェックしましょう。構造的な問題については、建築士などのアドバイスをもらってください。


 問題は、塀に問題があり修理や設置のし直しが必要な場合でも、塀がお隣と共有だったり隣家の敷地内にある隣家の所有物だった場合です。この場合は、自分だけの判断ではできず、隣家の協力や承諾が必要となり、その交渉が簡単にいかない場合もありますので注意が必要です。


図5 境界線を越えている庇

図6 危険の可能性のあるブロック擁壁



 また、建物の庇やベランダなどが、空中とは言え境界線をはみ出している場合がたまにあります(図5)。将来、隣地とのトラブルの原因になる可能性も十分考えられます。


 さらに、擁壁のチェックも重要です(図6)。擁壁については、築年代、構造、建築確認申請(工作物)の有無など調査する必要があります。既存住宅インスペクター制度では、塀や擁壁の調査はオプション扱いになると思います。


 今回は、主として木造住宅の外観に関して既存住宅インスペクターに沿って話をしました。しかし、外構など仲介時の重要事項説明書やインスペクター調査書では明確になりにくい部分です。費用の問題はあるものの、購入しようと思う物件では、建築士など専門家に別に意見を聞くことも大切なのかもしれません。


[2016/5/11]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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