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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第74号 一般住宅でも「PS」が必要!?

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 ビルやマンションでは設計図のほかに設備図もなければ施工できませんが、一般住宅では、これまで設備図は作成しない傾向にありました。ところが、昨今は設備図を書かないと問題になるケースが増えています。代表的なのは、「PS(パイプスペース)」。マンションの平面図によく書かれていますよね。PSは、一般住宅にも必要になってきているのです。


1.設備図の重要性


(1)ビル、マンションの場合


 設備図とは、その名の通り「建築設備に関わる図面」です。電気の配線や給排水の配管など、平面図や立面図に書き込むことで、設備の施工が出来るのです。さらに現場では、設備設計図を基に、設備施工図を作成し、設計と施工の双方の担当者が打ち合わせして実際の施工が進められていきます。


 壁など構造躯体に埋め込むスリーブ(配管)が図面から漏れていたため、あるいは、位置がずれていたために問題が発生し、マンション全体を解体せざるを得なくなった事件が東京と長野で起きました。この2棟、報道によればスリーブ不足(入れ忘れ、位置が違うなど)は、長野のケースでは100カ所近く、東京のケースでは600カ所程度もありました。現場での施工上のうっかりも考えられなくもありませんが、これほどの数となると、通常は設備図の不備が考えられます。それほど設備図は重要なのです。


(2)一般住宅の場合


 一方、一般住宅の設備図面というと、図1のような感じです。平面図に便器などの設備機器が描かれ、後はコンセントやスイッチ、スイッチからの線の先に天井に付けられた照明器具で施工されていきます。もっとも、一般木造住宅は、鉄筋コンクリート造とは異なり、構造躯体であるコンクリートに配管を埋め込むなど無く、比較的容易に配線できますので、取り付け位置さえ明示すれば、後は電気工事業者さんが適当に配線してくれるのです(とは言っても、勝手に構造躯体に穴を開けられても困るので、私は配線工事には立ち会うようにしています)。


図1 今までの一般的な住宅の設備図

図2 図面上のコンセント関係



 設備図でもう一つ重要なのは、便器など設備機器の給排水管の指示です。従来では、図1程度の図面と、実際に使われる便器などの機種が定まれば、水道工事業者さんと大工さんが相談して適当に工事を実施してくれます。問題は、2階からの給排水、特に排水管です。キッチン、洗面所などでは排水管の径が50ミリメートル程度で壁厚の中で配管することができますが、75ミリメートル管以上になるトイレなどでは、壁厚120で実質100ミリメートルの中で納めることは難しいです。それでも大工さん任せで、何とか納めているのが実情です。


2.PSの時代


(1)マンションのPS


 もし現在マンションにお住まいの方で、浴室や洗面、キッチンなど設備に関わるリフォームをしようとされる場合、請け負う設計士や施工業者は、実際の現場を調べた後でマンションの管理事務所などに保管されている設備図面を閲覧して具体的な施工計画を立てます。その図面からPSと床下に隠れた配管とその位置を確認して見積もりをしたり、施工を実施したりします。


図3 マンション平面とPS

図4 PSの内部例


 


 図3はあるマンション平面図ですが、PSと書かれた囲われた空間があることが分かります。PSとはパイプスペースの略で、各階のキッチンや洗面、浴室、トイレの給排水管をこの空間を縦に通して給排水を行っています。図4は、実際のパイプスペースの画像ですが、各階からの給排水管が全てここを通っているので、配管の径も太く、メンテナンスなどの考えて余裕あるスペースを取っています。


(2)一般住宅でもPSが必要な時代へ


 私は、今後、一般木造住宅でもPSは必須になると思っています。その理由は、大きくは2つあります。


 このコラムでもいろいろ書かせていただきましたが、まず第一の理由は、住宅の省エネ化です。高気密高断熱を達成するには、外壁や屋根、床など外皮となる部分は100ミリメートルとか厚い断熱材ですっぽり包む必要があります。特に、給排水管が絡む外壁の断熱層に配管することは、図5の上のように断熱材に食い込み、断熱性能を著しく低下させるだけでなく、結露などを引き起こすことになり、厳禁とも言える状態になります。


図5 外壁と排水管の位置関係

図6 住宅のPS

図7 防遮音排水管(参考:昭和電工建材)



 そこで、図5の下のように、外壁とは関係なく、別にPSを作ることが法規制と絡み一般化すべきです。図6は、実際に施工された例です。


 PSを設けるもう一つの理由は、防遮音です。木造と言っても2階からの排水の音は気になるものです。二世帯住宅に住んでおられる方から、「深夜は、階下に住む義理の両親に気を遣って、トイレの水を流さない」と聞いたことがあります。私は、PSを設け、石膏ボードなど防音性のある板材を張ることで防遮音性能を確保することを提案しています。また、図7のように、遮音性能を加味した住宅用防遮音排水管も製品化されています。実は、防遮音性能は施工の良し悪しで大きく左右されるので、製品化されたものは、その性能を施工に無関係で確保できるので、私は出来る限り設計に取り入れています。


 現実には、ただでさえスペースが無いなかで、PSを確保するのは大変ですが、省エネと防遮音のことを考えると、考慮しなければならない設計項目になっていくことは間違いありません。


[2015/1/14]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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