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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第68号 省エネ時代は建築予算を甘く見ない!

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 新築住宅の建築予算というと、「坪いくら」という計り方思い浮かぶと思います。実際、住宅メーカーのテレビコマーシャルでも、坪いくらの住宅という表現もあります。


 実は、ここには落とし穴がいっぱいあります。


1.新法や法改正の影響で建築コストが大幅アップ!?


 前々回まで、改正省エネ基準など建築関連法の改正情報について解説してきましたが、実際の新築を計画する時に、早くも影響が見えてきます。例えば、設備費のコストアップです。給湯器などエネルギーを使う機器は、すでに改正省エネ基準対応機種が主流になりつつあるのです。新築やリフォームで使う断熱材などが改正基準を満たす施工が主流になり、断熱性能が良くなるわけですから、設計者として必要設備機器の選択を省エネルギーを加味すれば、改正省エネ基準向けの機器の選択になるわけです。そうでなくても「省エネ、省エネ」といろいろ聞いているので勧める側も使う側も意識しています。その結果、高性能の分、機器の購入価格が高くなる訳なのです。


 「新築木造住宅の建設費は?」と聞かれると坪40万円くらいと答える人が多いと思います。この金額は20年くらい前からそうだった気がします。ただ、最近、坪単価が安く表示されているケースをよく見ると、収納が少ないとか、雨戸が無いなど、何かカラクリがあったり、本体部分はこの単価ですがオプションはついていませんと表示されているケースなどがあり、実際の総工費は高くなっている傾向にあります。それもそのはず、仕様がグレードアップしているのです。


 リフォーム相談で既存住宅を見させていただくと、以前と現在の仕様の違いに気づきます。確かに20年ほど前にも内装のドアは2メートルの高さがありましたし、スイッチに小さな目印の光が点灯するものもありました。しかし、当時と現在の新築とは大きく異なっている仕様部分があるのです。それは、サッシと雨戸です。


2.仕様と建築コスト


(1)サッシ・雨戸


 サッシのガラスが単層だった頃、見積に書かれたサッシの価格は、アルミサッシ枠だけで、ガラスは別扱いでした。しかし、実際にはサッシ価格でガラスはサービスが一般的でした。つまり、単層ガラスはサッシ本体に含まれていたのです。


 しかし、ペアガラスを選択すると価格が高いので単層ガラスのようなわけにはいかず、別途ペアガラス代を見積ることになりました。以前から、設計士としては省エネだけでなく結露が起こりにくいなどの利点からペアガラスの採用を勧めるものの、予算的な問題で断念することがほとんどでした。最近は、施主の方からペアガラスを望まれます。


 また、以前は主流だった雨戸はほとんど使われることが無くなり、最近はシャッター、しかも電動シャッターが主流になっています。当然その分、コストが上がることになります。


図1 単層ガラスと複層ガラス

図2 雨戸とシャッター

(2)室内ドアと内装仕様


 室内ドアは、枠を大工さんがつくり、ドアは建具屋さんの仕事だったのが、最近は枠付きドアになり、高さも洋室は2メートルが当たり前になりました。実は、枠付きとなると幅木や回り縁さらにサッシ枠も色や質感を統一する必要があり、併せて階段や床板まで影響することで、コストアップにつながります。また、一つのメーカーですべて選択するようになります。その影響からか、従来施主宅や現場でカタログとサンプルで選択していたケースは減少し、メーカーのショールームにお連れして、実際に見てもらって選択してもらうようになり、メーカーとしてもエンドユーザーに対する案内が重要になるなどビジネスモデルが変わりつつあります。


図3 枠付きドアの影響が

図4 給湯器号数の目安例

(3)設備機器


 これまでの設備選定、例えばガス給湯風呂釜でいうと、家族構成や複数個所給湯などから能力を表す号数の選定が一般的でした。たとえば、少量使用なら10号前後、家族が多く大量に使いたいなら20号などです。また、2カ所同時給湯なら最低24号が必要などの目安でした(図4)。また、釜本体の大きさや壁掛けか床置きかなどの要素とバスタブに合わせてお湯を張る機能や湯温を保つ釜(全自動)についても検討要素だったのは言うまでもありません。


 ところが、これからは、改正省エネ基準のように省エネを考慮しながら、快適な湯量を確保する高効率な給湯器が要求されます。つまり、トップランナーと呼ばれる機器から選択せざるを得なくなるわけなのです。その機器はおおむね「エコ」と言う言葉が頭文字として付いています。しかし、エコ、省エネを実現するための高効率化にはそれなりの費用がかかる分、機器の価格は高くなっています。


 さらに言えば、全自動タイプのように、リモコンのボタンを押すとバスタブにお湯張りをするということは、給湯器やバスタブまでに残った前日の水が汚れているから自動洗浄を付けるとか、併せてバスタブの掃除もするなど便利な高機能が付いているなど、さらに高額化しているのです。


 その他、便器や食洗機、冷暖房などの機器の節水、省エネ化も進み、コストアップ要因が目白押しなのです。


 改正省エネ基準やシックハウス対策など、極端に言えば設備機器を法律に適合しなければならないことで自ずから高効率な機種になり、コストアップは避けられない中で消費税アップが重なり、これから住宅を求める方々にとっては、設計段階でプランなどデザインはもちろん、建物本体以外の費用についても十分に把握しておく必要があります。なぜなら、改正省エネ基準も瑕疵担保履行法も選択とは言え、長期優良住宅や認定低炭素住宅も建築確認申請前に申請が必要で、建築確認申請以後、着工してからの設計変更は難しい時代になっているからです。


[2014/7/2]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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