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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第77号 壁について考える

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 前回は床や畳に関する問題を取り上げましたが、今回は壁に関連していろいろ考えたいと思います。


1.ますます高まる壁の役目


 壁の役目はいろいろあります。人の目や日差し、雨風からの遮蔽性や音からの防音性、そして省エネ時代の現代では、やはり断熱性だと思います。


 ところで、壁の中身は、建てられた時期によって異なっています。昭和40年代くらいまでの木造住宅では、壁の中は空っぽのケースが一般的でした。耐震診断やリフォームの調査で壁の中をのぞくと、断熱材の代わりに雑草が忍び込んでいたことが何度かありました。


図1 壁の中に雑草が

図2 内装材で防火性能確保

図3 防火構造の仕様例



 もともと在来木造住宅は、基本的に石の上に建物をのせていましたので、床下には猫も入り込める構造でした。そこで床下から外壁、屋根裏まで隙間が連続しているので、ネズミの通り道でもありました。昭和の後期は、布基礎と風窓に格子を付けることで猫は入り込めなくなりましたが、それでも、ネズミはどこからか入ってきて、夜寝静まると歩く音や鳴き声が聞こえることもありました。


 断熱材が入れられるようになった後もしばらくはすき間だらけで、断熱材を入れないよりは効果があるものの、性能的には低いと言わざるを得ません。


 ご存知のように、2015年4月1日より、改正省エネ基準が完全施行されました。完全とは、2013年に定めた基準に対し、今までの経過措置が終了し、外壁や窓などの外皮断熱性(「外皮基準」)だけでなく、設備の性能や省エネルギーを総合的に評価する「一次エネルギー消費量基準」を完全に求めるということです。もっとも、まだ大型の建築物が対象ですが、5年後の2020年には、一般的な小規模住宅も含め義務化されます。


 また、既存住宅については住宅エコポイントがスタートしていますが、この制度を利用するしないにかかわらず、断熱材を使う場合、その断熱材の施工法について、メーカーや断熱材の業界団体のマニュアルを遵守する必要があり、標準施工法を守る義務が生まれています。


2.耐火性も重要


 壁の役割として、もう一つ忘れてはいけないのが耐火性能です。壁で火を食い止めることができると、逃げ場を確保することができます。ところで、耐火構造と聞くと鉄筋コンクリート造や鉄骨造を思うと思いますが、木造の耐火性能も見直されています。現に、低層に限りますが、木造の商業ビルが誕生しています。


 火災消火の後の現場を見ると、壁や屋根は見る影もないものの、柱は真っ黒にスス焦げしているものの倒壊せずに立っているケースが多いです。厚みのある柱を着火させるのは難しく、たき火に直に入れても芯まで燃えるには時間がかかります。専門的に言えば、木材は不燃ではありませんが、一定の厚みがあればすぐに着火しにくく、芯まで燃えるには時間がかかります。一定の厚みの無垢の木に不燃ボードなど被覆することで、耐火構造と同様の性能を持つため準耐火構造と呼ばれているのです。


 そこで、耐火構造も準耐火構造も、建築基準法上は人が避難するうえでの安全性(避難人命安全性)と構造躯体などの延焼を防ぐ性能(建物内延焼および市街地火災抑制で、もちろん消火活動上も含めた延焼防止)があるということで、今後は、木造中高層建築も生まれてくると思います。特に、日本の森林を再生する政策や林業育成のためにも、学校の校舎などを木造化する方向で進められていると言っても過言ではありません。


3.不燃ボードの厚さ選択


 以上のことから、新築だけでなくリフォームをする際も、断熱性能アップとともに耐火にも配慮が重要です。高齢化社会に向かっていると言われている現在、バリアフリーが重要だと思いますが、断熱化で快適さを確保し、防耐火で被害にあいやすい高齢者の人命も配慮することは最も大切なことの一つになるのです。


 具体的には、リフォームに際して居室の化粧合板など壁や天井の既存内装材を準耐火規準に合った石膏ボードなど不燃のボードに張り替えることで、室内の火災から構造躯体をある程度守ることが出来るようになるのです。


 ちなみに、防耐火の考え方は、表1のように人命と建物を火災から守る考え方で、木造では防火構造と準耐火構造などがあります。リフォームとはいえ、新築時の防火構造や準耐火性能で使われている厚みの石膏ボードなど使う(表2など)ことで、たとえば、火事の際に家具などが燃えても、内装下地材が一定時間以上燃え広がるのを防ぐ間に、消防活動が始まれば延焼を防止でき、避難面から見ても被害を最小限に押さえられる可能性が広がるのです。


 さらに重要なことは、使われている化粧合板の製造年によっては、火災時に有毒なガスなど発生することも考えられ、避難上大きな問題を引き起こすばかりではなく、消火活動の妨げになる可能性が高いのです。


表1 省令準耐火構造住宅の特徴

表2 石膏ボードと構造別



 施工上の注意点としては、壁だけでなく天井下地も防火性能を有する材料で囲まなければ意味がありません。法的な施工仕様について詳しい設計者に相談すれば、具体的な仕様を決定してくれるはずです。


4.壁のコンセントやスイッチの位置


 リフォームの際、特に高齢者の住まいの関係などでは、コンセントとスイッチの位置を変える動きがあります。


 まずスイッチですが、現在多く取り入れられているのは、床から120センチメートルあたりです。これを下げて90~100センチメートルにした方が使いやすいという意見も多くなってきています。


 一方、コンセントも、従来は図4のような赤印のところが一般的でしたが、もう少し高めの30~40センチメートルにすると、例えば掃除機などいろいろなところのコンセントに差し込む時に楽だという意見があります。


 私も掃除機を使用する場合、コンセントが高い位置の方が断然楽だと実感しました。


 また、テレビなども大型化し、専用の台座にのるスタイルが多くなったことでコンセントが低いと、台座と絡んでしまうなどもあります(図5)。


図4 コンセント位置

図5



 その他で言えば、介護用ベッドなど使用電気アンペアの問題も考慮して、アース付き専用コンセントを設ける検討も必要になると思います。


 リフォームというと老朽化したり汚れたり、家族構成が変わったりなどいろいろな理由がありますが、実際のリフォームでは、断熱性能や防耐火性能など性能面やコンセントやスイッチなど生活面での細かな点も合わせて検討することも大切だと思います。


[2015/4/1]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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