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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第89号 中古物件のチェックポイント<内装編>

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 今回も、中古住宅の価値について考えてみます。木造の場合20年で価値がゼロになるという話はよく聞く話ですが、20年なんてついこの間です。実際に20年以上経っても手入れが行き届いていて、まだまだ資産価値があるお宅はたくさんあります。


 私もお客様から「中古物件を購入するので一緒に見てほしい」と頼まれることがあり、測定器具を持って出かけます。その際、調査する点は3つあります。内装、外装などの「不具合」、「瑕疵」、「性能」です。


 今回は「内装の不具合」について考えます。


1. 内装のチェック


 汚れや傷、変形、動作などが不具合で、一般の方が一番気にされるチェック項目だと思います。壁紙のクロスやサッシ周り、洗面、トイレ、浴室などのカビや、掃き出しサッシの近くの床フローリングの色落ちなどは、特に気にされる部分だと思います。


図1 室内で劣化しやすい場所 

図2 洋室①室内の変色(結露、汚れ?)



 建築士などの専門家が見る場合は、個々の問題を見るのと同時に全体の問題を見ます。例えば、図1のマンションの洋室の窓の周囲に黒い汚れがあると、カビの可能性が高いのですが、その原因は何なのかを考えます。外壁の断熱材不足による表面結露なのか、サッシの結露水の影響なのか、漏水なのかなどです。


 図2は、図1の洋室①の室内イメージです。壁など室内表層の変色がA~Eまであったとします。実際にはいろいろな症状が出ているし、もっと広範囲になっている場合もあります。Cは外壁の断熱性能不足もありますが、主としてサッシに関連する漏水か、結露水の可能性が考えられます。マンションの場合、外廊下があって漏水の可能性は低いと思われますので、サッシの結露の可能性が高くなります。この場合、戸枠やガラス面の結露水が室内側にあふれたかどうかは、サッシ下部のレールなどに水を流してみると分かります。


 逆に、問題は枠の外、つまり、壁に隠れたサッシ枠裏面の結露水が壁ボードの裏面からしみ出て、壁の下部や床フローリング材(D)まで濡れ汚れやカビが見られた場合です。リフォームする際には、断熱材の選定から施工法まで考慮する必要があります。天井付近(E)やA、Bのケースでは、漏水のほかに断熱材不足が考えられます。洋室①は玄関が引っ込んでいる形(アルコーブ)になっているため、A、Bは外気に面した部分で、特に北側では外装面が冷えている場合もあり、結露しやすい部位の可能性があります。また、鉄筋コンクリートの場合、躯体自体が冷えていますので、その影響は内壁に影響する場合があり、図3のように外壁につながる内壁には一定以上断熱を施すことも大切なのです。


図3 外壁とつながる内壁

 写真1の場合、そうした影響に加え室内家具などの置き方により、カビ等で変色した範囲が広く分布しているとも考えられます。このケースでは壁付けのエアコンがあり、エアコン枠とサッシとの隙間の問題やエアコンの吸湿水の排水先などいろいろな状況も考えられますが、変色した壁の下地まで調べて、断熱材の選定など十分考慮したリフォームをしなければ再発する可能性が十分あると考えます。


写真1 改修直前の洋室北側窓周辺

2. 建具のチェック


 建具と言えば、何といっても扉(ドア)のチェックでしょう。玄関から始まって各室の扉の気になる事と言えば、開け閉めの際の引っかかりや閉まり具合、歪みです。私は、新築引き渡しの際に「建具については、春夏秋冬過ぎた段階で再度微調整させていただく予定です」と説明します。最近はドア枠とセットで既製品から選択することが多くなり、狂いは少なくなった感はありますが、それでも、木造であれば構造躯体の伸縮からの影響を受ける場合があります。


図4 室内ドア

 一般的な室内ドアの場合、よくあるのが蝶番の取付からくる不具合です(図4)。蝶番a、bの留め付けで、垂直線からずれたり傾いたりした結果、ドアの閉まりに影響が出ます。このケースの多くは、上側のaの蝶番に問題があることが多いと思います。マンションの場合は、玄関ドアを開けた際に強烈な風で室内ドアがバタンと閉まることで不具合が発生する場合が少なくありません。最近のマンションには、閉まる直前にブレーキがかかるような仕組みもあります。


 あるマンションで、玄関ドアの変形があった例がありました。マンションの場合、玄関ドアの補修は注意が必要です。ドアの外側は共用部分(管理組合の管理下)で、内側は専有部分(個人の管理下)として扱われることから、勝手に交換するわけにはいかないという問題もあります。


 室内ドア、特に洗面やトイレなどの扉について新築年代の法規制にもよりますが、一般的には下部にすき間を設けている場合が一般的です。この隙間は、室内間の換気を目的としているので、リフォームで交換する場合でも同様にすき間を設ける必要があります。


 浴室のドアは、アルミ製が多いと思います。特にマンションの場合、浴室は建てられた時代で全く規格が異なります。以前の浴室は広さ0.75坪(1.5畳)が主流でしたが、最近は最低でも1坪が一般的です。0.75坪サイズのドアはアルミ製の折れ戸が一般的で、その性質から、かなりの確率でガタが来ています。取り替えるためにはメーカーを調べて部品があるかどうかを確認しておく必要があります。また、浴室ドアの下部床については、よく踏んでみて、たわむようであれば下地の腐れの可能性があります。


 中古住宅については仲介時にインスペクター制度を導入する方向で行政などが動いています。とはいえ、専門家に同行を依頼して自分の目で物件を確かめることは、重要な行動だと思います。


[2016/4/6]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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