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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第66号 既存住宅インスペクター制度と住宅設備

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 前回、中古住宅の流通価値の見直し基準としての「既存住宅インスペクター制度」のお話をしましたが、今回は、住宅設備と住宅の価値について考えたいと思います。


 最近、省エネ住宅を実現する建築関連法律にかかわる話を続けていますが、その影響で気になることの一つに、住宅そのものの性能向上や現場での施工精度などにかかわる建設費の上昇、設備機器の性能向上によるコスト高が挙げられます。それだけでなく、住宅の評価価値が上がることに伴う相続税や固定資産税などの上昇も含め、どれをとっても消費者の財布に跳ね返る要素であることは確かです。


 今回は、その具体的な要素としての住宅設備の選択動向を考えてみたいと思います。


1.装備の時代変容


 自家用自動車を例に見ても、電動で開閉するパワーウインドウは高級車に限らず、大衆車でもごく当たり前になっています。さらに最近では、衝突防止のための自動ブレーキシステムでさえ、軽自動車クラスでも当たり前になっています。同じように、住宅でもひと昔前まではサッシのガラスをペアガラスにすることはオプション設定だったのですが、最近は、ペアガラスが当たり前の最低仕様で、「Low-Eガラス」とか「真空ガラス」などなど多様種を選定するようになっています。


図1 昔の車窓は手回しだった

図2 サッシのガラス


 と言ってもこの傾向は、平成11年の省エネルギー基準あたりからだと思うのですが、省エネルギーだけでなく21世紀前後に変わってきている仕様はほかにもあります。初めはマンションや商業施設などで使われていたもので以前は戸建て住宅では不向きと思われていたものが、今や一般住宅でも主流のなった事例はいくつかあります。例えば、ユニットバスやシャッターなどです。ユニットバスは、プラスチック(主にFRP)の安物という感じでしたが、今では在来工法の浴槽のタイルの壁は、建物の耐久性にも問題がありと思われるようになっていますし、雨戸についても、シャッターでは外観が悪いとか安物のイメージがあると言われていた時代もありましたが、今ではシャッターが主流で、特に最近では電動シャッターを採用する施主も増えています。


2.設備機器のトレンド


 設備機器では、例えばエアコンのように、出力の大小で能力は異なるものの、省エネルギー対応やイオン発生、加湿機能、自動清掃機能などますます多機能化しています。給湯器は、メーカーとしては省エネルギー化が進んでいるものの、ユーザーの方が、シャワーで勢いよくお湯を使いたいという要望や2カ所同時給湯などお湯をたっぷり使いたいという生活習慣の変化から、16号から20号、24号など能力の高い機種を好む傾向にあります。


 もっとも、既存のマンションなどで屋内専用給湯器スペースに置かれたFE式と呼ばれている「強制排気」式の給湯器の場合、燃焼のための空気(酸素)は室内から取り込み、排気ガスだけをファンで外へ吐き出す方式のため、現在16号給湯器が付いているとすれば、次も最大で同じFE式16号給湯器しか付けられないことになります(図3)。この対策は、別の機会に解説したいと思います。


図3 FE式給湯器のあった3LDKプラン例

図4 パイプスペース内FE式給湯器


3.インスペクター制度と住宅設備の評価


 そんななか、改正省エネ基準や低炭素法の認定低炭素住宅、ゼロエネルギー住宅などの義務化や税制優遇、ローン優遇など国を挙げた政策から見える今後の住宅の主流になるに設備機器仕様は、「トップランナー」と呼ばれる現在最高の効率化、省エネルギー化に支えられた機器になるのは間違いありません。


 図5は、トップランナーに選出されている給湯器の仕様ですが、いずれもその性能が優れているものの価格では高めになっています。例えば、2020年に新築義務化となる改正省エネ基準での仕様は、設計段階で定められた省エネルギーの計算をプラン確定段階で算出し、給湯器の選定もほとんどがトップランナー機種から選択されることになることになるのです。その影響で、単に給湯能力としての16号とか20号の選択ではなくなり、エコジョーズなどの省エネタイプからの選択になると思われます。


図5 給湯器省エネタイプ種別

 また、給湯器のメンテナンスを考えると、5年から10年くらいに一度部品の交換など対応が必要になることが一般的だとすれば、発売数量との関係も考慮する必要も考えられ、量的に多く生産される機種を選択することが、メンテナンス的にも重要になると思っています。


 さらに言えば、将来的な住宅に関する政策や法律は、既存住宅が5000万戸以上で世帯数より上回っている現状の中で、省資源や省エネルギーに関する対策が重要になり、断熱性能や耐震性能が劣る既存住宅にメスが入るのは必須で、併せて設備機器関係の性能も重視されるはずですから、給湯器やエアコンなどエネルギーに関わる機器の交換については、省エネルギー仕様を選択しておくことが賢明だと思われます。


 とはいえ、消費者にとって、ますます住宅にお金がかかる時代になっていくことは否めません。そこで、適正な投資をされた住宅が中古住宅として転売される際、次の住まい手にとってもメリットとなり、それなりの評価につながるというインセンティブを当たり前のようにしていかなければなりません。それが、インスペクター制度の目的だと思います。


[2014/5/7]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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