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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第94号 最終回~我が国の住宅評価の歴史と近未来

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 日本の住宅は、戦後の復興時代、高度成長期、バブル経済、そして失われた20年など経た今、また大きく変わろうとしています。いや、ある意味変えなければいけない時期とも言えます。


 私は設計者として住宅の新築や増改築などにかかわるほか、このコラムのような執筆や地震防災のアドバイスや講演、企業の顧問やコンサルタントを通じて住宅に関していろいろ携わってきました。今回は、最終回ということなので、住宅を中心に過去から未来まで私なりの考えを述べさせていただきたいと思います。


1.日本の建築関連法は、都市だけが対象だった

 日本の住宅と建築基準法の関係を考えると、いろいろ面白いことが見えてきます。一番びっくりすることは、今でもいわゆる田舎で木造住宅を建てる場合、建築確認申請は不要だと言うことです(※1)。ただし、申請は不要ですが、耐震性や防火性能など基本的な性能は、建築基準法等に関連する法律や施行令などに合致していなければなりません。


 では、なぜ都市と違い確認申請が不要かというと、大正時代、いや、江戸時代まで遡ると分かります。「火事とけんかは江戸の華」、「江戸時代からある町名・蛎殻町」・・・・これだけでは分からないと思います。特に牡蠣(かき)ではなくなぜ蛎殻(かきがら)なのか? 一節では江戸町奉行・大岡越前守が、享保15年(1730)に大火後、耐火のために、江戸城から本郷3丁目までの町屋を、土倉塗屋造、蛎殻ぶきにしなければならないというお触れを出したからという説があります。当時、瓦はまだまだ高価だったせいか、一般庶民の家の屋根は板ぶきが主流でした。つまり、蛎殻は防水ではなく、防火のためにだけ使われていたようです(図1)。


図1 屋根に蛎殻で防火対策

 その後、大正時代、現在の建築基準法の原点になる法律が、大正8年(1919年)に施行された「市街地建築物法」です。法律名からもお分かりのように、原則、市街地に建つ建築物だけが対象です。そして、市街地の建築物で重要なことは、何はともあれ防火でした(※2)。事実、法規制を受けるのは、東京や大阪など大都市の市街地に建つ建物だけだったのです。


 その他の地域というと、住宅も敷地は十分で、また点在していることで隣家から延焼することは少ないということで対象外でした。さらに、「市街地建築物法」は、大正12年に起こった関東大震災を受けて、世界的に見ても画期的な耐震規制が盛り込まれていました。そして、この法律の背景には、今では注目すべきことなのですが、大工さんを始め、各職人さんの技量も姿勢も確かだったことから、施工方法については特にルールは設けず、ただし、筋交いを設けることなど耐震についての配慮が必要となっていました。


※1 4号建築:建築物の種類は1号から4号に分類されています。木造の建築物で 2階建て500平方メートル以内で、高さが13メートル、軒高が9メートル以内は4号建築物となり、都市計画区域外の4号建築物は、建築確認申請は不要で建築工事届を提出するだけとなっています。


※2 延焼防止:ここで言う防火とは、隣家などから外部からの延焼を防ぐという意味で、外壁や屋根について延焼など防火上の措置を困じる事が求められています。(外壁:防火構造、屋根:不燃材で造るか葺く=建築基準法第22条)


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