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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第71号 家は、できるだけ北側に寄せて建てたくなるものですが…

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 住宅の新築を考える時、敷地の配置について、南の庭は出来るだけ広くしたいとか西に大きな木を植えて西日を防ぎたいとか、車庫スペースはどうしようかなどいろいろ悩むと思います。また、地域によっては、接道道路や隣地境界線から一定の距離を離しなさいというところもあります。しかし、北側というとメンテナンスで人が通れればよく、法で定められたぎりぎりまで寄せてほしいと希望されるケースがほとんどで、設計者側もはじめからそうするケースが多いと思います。


 今回は、その北側境界線と建物の関係について考えてみます。


1.北側に関する法律


 日本庭園は北側が良いと言われます。なぜなら全ての花々や緑は太陽に向かって成長します。つまり、庭は、南から北方向に見るのが正面だとも言えます。話がそれてしまいましたが、一般の施主の新築現場は、決して敷地が広いわけではありませんので、やはりなるべく南を空けたいことは確かでしょう。


(1) 民法上の規定


 では、北側は境界からどのくらい空ければよいかというと、まず法律的には2つの要素があります。一つは民法234条の、境界から50センチメートル開けるという原則ともう一つは、北側斜線です。民法の50センチメートル原則は、過去には違う解釈もあったようですが、現在は境界線から建物の外壁外面(図1)までを意味しています。


図1 北側境界と建物

 ただし、敷地のどの位まで建てられるかという建築基準法の建坪率の話をすると、住宅地以外では100%もあるわけで、「民法VS建築基準法」では特別法である建築基準法のほうが優先されるということもあり、境界線ぎりぎりまで可能な地域もあるのです。しかし、商業地のビル同士とは異なり、住宅地の場合は採光だけでなく通風も大切ですから、可能な限りスパースはとりたいものです。


 また、民法の原則通り50センチメートル離した場合でも、実際には境界線上に塀があればその厚み分(境界線上)は狭くなりますし、雨樋などもあるので、結果的にかなり狭くなることも確かなのです。


(2) 建築基準法の北側斜線規定


 北側斜線とは、5メートル(場所によっては10メートル)を超える建築物の各部分の高さを、隣地境界線などからの真北方向の距離に比例して制限し、北側隣地から斜めの線で建築可能範囲を規定するものです。ただし、北側斜線が境界線から離す距離を定めているわけではなく、むしろ、建物自体の要件から離す距離が決まるというのが正解です。


図2 北側斜線と高さ制限

図3 斜線にかかる部屋は



 図2は、北側斜線の最も厳しい制限例です。真北の境界線から高さ5メートルまでは垂直に、それより上は、真南に対して1メートル南へ行くごとに0.6メートル高くなる角度上の線から建物が出てはいけないというもので、北側の日射を考慮した規定です。図2を見ると、建物を北へずらすと1階の軒先が線をオーバーするので、おのずと空けることになります。また、図3のように北側に部屋を造ると室内の高さに制限がかかります。


図4 北側斜線のイメージ

 この制限は正確な南北線上で判断ですから、図4の右下のように敷地や建物の方位がずれている場合でも南北線上で算定します。したがって、図4の右上のような真北の例より、建物の北側と西側に斜線が架かるなど、さらに厳しくなることが多いので注意が必要です。設計者としては、施主に詳しく説明するポイントでもあります。


2.北側に置かれがちな設備機器にも考慮が必要


 建物を民法の50センチメートルぎりぎりにした場合、もう一つの問題が、設備機器(エアコンの室外機と給湯器、風呂釜など)との関係です。室外機に日射が当たらない点では、設備機器の置き場所としては、北側はよいのかもしれませんが、設備機器の寸法を考えずに建物の配置を決めた場合、大変なことになります。たとえばエアコン室外機の寸法はいろいろあり、高さ50×幅65×奥行き30センチメートルくらいですから、境界線との間に置かれた場合、置くだけでぎりぎりになります。


 一方、給湯器と風呂釜ですが、最近は一体全自動型が主流です。全自動とは浴槽にお湯を張る、湯温を一定にするなど管理してくれるもので、浴室のすぐ外据え置きでなくても機能はしますが、あまり距離を隔てない範囲の外壁取付型もあります。この外形の奥行きは24センチメートル前後はあり、かつ、壁にぴったりではないので、最低でも30センチメートル離す、つまり境界線からは20センチメートルになってしまうのです。


 さらに、省エネルギー対応を考えると、従来の給湯釜機からエコジョーズなどへの移行が進んでいます。例えばエネファームやエコウィルなどは、2つの室外機から構成されており、エネファームでは高さ180×幅40~60×奥行き40センチメートル程度、エコウィルでも奥行き30センチメートルですから、境界線から50センチメートル空けてもぎりぎりで点検などは出来ないだろうと思えるのです。


 そのうえ、境界線にブロック塀など閉鎖的な塀があると、室外機の排気効率が悪くなるだけでなく、故障の原因にもなるので避けたいものです。


 家を建てる時の配置として、出来るだけ北へ寄せて南を確保したい気持ちは分かりますが、民法や北側斜線、室外機設置、通風など考えると、50センチメートル以下では問題が多く、1メートル程度は空けておいた方がよいことは確かなようです。


[2014/10/1]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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