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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第72号 既存住宅の評価基準と基礎まわりを考える

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 日本には既存住宅が5000万戸ほど存在すると言われていますが、住宅の評価的価値は、築25年を超えると限りなくゼロの扱いになり、そのせいか、新築から滅失までの平均期間が27年(総務省住宅土地統計調査)と、世界的に見ても異常に短いのが現状です。しかし、台風・地震・火山噴火など自然災害が多い国ながら、農家などの古民家は100年以上使われてきた歴史もあり、世界の森林伐採など省資源など環境のことを考えると、既存住宅の活用も大切な問題だと思います。また、しっかりと建てられた住宅、あるいは付加価値のある住宅とそうでない住宅を一律に築年数だけで評価すること自体おかしな話だと思います。


 こうした背景もあり、行政や業界もここにメスを入れ、新たな価値基準を設ける方向に変わりつつあります。しかし、今回取り上げる「基礎まわり」に関しては、基準作りのハードルの高さを感じています。


1.既存住宅見直しの動き(概要)


 既存住宅の評価基準については別の機会で解説したいと思いますが、公的かつ客観的な物差しを使って既存住宅を評価し、その評価が中古住宅の売買上の価格(価値)に反映されると言うことです。築年数だけでない価値を見込めれば、耐震性や断熱など性能アップ工事で基準を達成しようとしますし、安心して購入するきっかけにもなります。これをバックアップするのが瑕疵担保既存住宅リフォーム保険や長期優良化リフォーム事業推進などです。


 この長期優良化リフォーム事業推進では、既存住宅インスペクター項目があります。先日、初めて調査依頼を受け対応しました。この調査項目の最初にあるのが「基礎まわり」で、換気口の項目とともに基礎まわりの雨はね防止策について調査項目があります。具体的には「基礎まわりの雨はね防止措置+維持保全の強化」と書かれています。


 つまり、基礎まわりの土が雨ではねて外壁を汚すとか泥が付着することが、美観だけでなく耐久性などにも影響するので防いでほしいということなのです。そこで、求められているのが基礎の外側、俗に犬走りと言われている部分で(図1・2)、土ではなく砂利やコンクリートにすることが求められています。


図1 建物と犬走り

図2 基礎断面



2. 基礎が低い時代の住宅をどうするか


 そして、もう一つ気になる項目が「基礎高さ」です。基本基準からは「地面から基礎上端までの高さ、または地面から土台下端までの高さが40センチメートル以上」と書かれています。ここにはただし書きがあって、冒頭の「基礎まわりの雨はね防止措置+維持保全の強化をした場合は、30センチメートルでよい」ということになります。


図3 過去の基礎断面(青図)

図4 低い基礎

図5 基礎高さ



 しかし、このハードル、実は意外と高いのです。最近のリフォームで事前調査をした時もそうですが、昭和40年代までの住宅の基礎高さは、図3のように地面から24センチメートル(図はミリメートルで記載)が多いのです。図4は、築年数の古い住宅の外壁をサイディングにリフォームしたものですが、基礎の水きり位置が非常に低いことが分かります。


 いずれにしても、基礎高さ(図5)が外部対策を講じて30センチメートルとされていると言うことは、長期優良化リフォーム事業推進の対象にはなりません。たしかに、30センチメートル以下では、床下換気の上だけでなく問題が発生した際に、人が潜り込んで作業するには難しく、長期優良化のメンテナンス上からは問題だと思いますが、新耐震基準の昭和56年以前に建てられた1800万戸の住宅の多くが、基礎高さ不足とも考えられ、除外するだけでなく、何か対応策を講じることが出来ればと思っています。


3.基礎まわりに物を置かない


画6 掃出入り口

画7 基礎廻りの植木

画8 基礎廻りは物置



 長期優良化に限らず、基礎まわりにとって大切なことは、床下換気を十分にとれるようにしておくことです。つまり、維持管理上「基礎まわりは、出来るだけ物を置かずきれいに」と言うことです。図6~図8は、基礎まわりに置かれた植木やもので基礎が隠れた状況になっている例です。これでは、せっかく換気口があっても、床下への外部からの空気は入らず、換気が行われず、結果として床下はいつも湿気が多い状態になっているのです。その結果、カビが生え、人体へ影響が大きくなるばかりでなく、湿気を好むシロアリに最高の環境を提供しているようなものなのです。


 また、木材を重ねて基礎に立てかけて置かれているケースもよく見ますが、これは、シロアリにとって「こちらが入り口ですよ、どうぞお入りください。」と、外部から白蟻に入り口へ誘導しているようなもので、防蟻上でも危険です。


 長期優良化リフォームで基礎廻りや床下の維持管理を義務付けされるまでもなく、基礎廻りに何も置かず、特に、換気口廻りを十分空けて換気を良くしておくことは、住宅の寿命にとって、とても重要なことなのです。


[2014/11/5]

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住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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