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失敗しない家づくり教室

一級建築士でFPの荒尾博氏が一戸建てを新築・改築する際のノウハウや注意点を解説。新しい法規制の動きなどもタイムリーに取り上げます。

第69号 施工以外の手続きが大変な時代に!

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 今回は、実際に家を建てる作業時間よりも、その前後にかかる手続きの時間のほうが膨大になっているという話です。着工前の作業としては、施主との打ち合わせは当然のこととして、建築確認申請がありまます。それ以外の新制度に対する手続きがどんどん生まれており、設計監理が厳格化の名のもとに複雑かつ長期化しています。


1.建築確認申請の複雑化と長期化


 工場であらかじめパーツを作成し、現場で組み立てるという工法のユニット型住宅やプレハブ型住宅などでは、極端に言えば数日で完成するケースすらあります。しかし、そのための建築確認申請にかかる期間は、最低でも1カ月は必要です。


 この建築確認申請が厳格化され、審査期間が実質長くなったきっかけは、構造データ偽造事件後の2007年建築基準法改正でした。当時、設計者としては申請に必要な作業が複雑化かつ倍加して採算が合わず、廃業する設計事務所も少なくなかったという話をこのコラムでも書いたと思います。


 木造住宅などで建築確認申請を必要としない地域が現在でも存在し、地域面積だけで言えば、全国土の70%とも言われています(建築確認申請の代わりとして「建築届」が必要なのですが、内容は配置図、平面図、立面図など建築確認申請に比較して少ない図面で済み、極端に言えば申請当日からでも着工可能)。といっても着工数から言うと数値は逆転しますが。


 一方、最近の悪徳リフォーム業者問題で注目されている「建設業許可」の有無の問題では、建築一式工事以外の27 業種で請負金額が500 万円未満(消費税込み)の工事が、建築一式工事の場合は請負金額が1500 万円未満(同)または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事が「軽微な建設工事」として建設業許可が不要です。


 建築確認申請が不要の地域と建設業受注許可の条件を合わせて考えてみると、農家などが点在するような郊外の都市計画区域外では、150平方メートル以内の木造住宅は建築届だけでよく、地元の大工さんが受け持ってきた経緯があるということです。地方に行って工務店名入りのトラック(図1)や店の看板は見ますが、「建設業許可○×県○×」など決められた建設業許可票(図2)の無い事務所、作業現場を見かけます。長年、許可のいらない新築や増改築を主に施工した「ひとり大工さん」、つまり、善意の大工さんに依頼して、気軽に木造住宅を着工できた時代があった名残りかもしれません。


図1 店名だけで建設業の表示が無い?     

図2 建設業看板の例



2.建築確認申請以外の申請作業が急増中!


 2009(平成21)年10月1日より施行された瑕疵担保履行法は、全ての新築住宅に適用される制度です。元々は、住宅品質確保促進法として工務店や分譲不動産会社に対し、新築住宅の瑕疵について10年間保証を求めたのですが、施工者の倒産などで保証が宙に浮くことを防ぐ目的で、保険加入か保証金の供託を求めたものです。


図3 国交省住宅瑕疵担保履行法概要の一部

 問題は、この保証の適用を受けるために提出しなければならない書面作成が作業として追加され、しかも建築確認申請より前に申請しなければならないということなのです。


 これは先ほどの建築確認申請が不要だった地域でも必要で、その中身は建築確認申請並みの図面なども求められることから、建築届でよかったケースでも、しっかりと必要図面や申請書を作成しなければならなくなりました。今まで、建築確認申請を必要とせず、経験と技術のみで建築行為を続けてきた善意の地元大工さんにとっては死活問題です。


 話を戻します。建築確認申請の前に同等の図面など作成するということは、その後の変更についても対応しなければならないということです。一般の施主は、計画が図面化されて初めてイメージができる人も多く、図面完成後の変更依頼は、決して少なくありません。


 いずれにしても、建築設計監理をする立場から言えば、住宅瑕疵担保履行申請のぶん仕事は増えたのですから設計監理報酬は従来の費用より増やしていただかないということになります。施主の費用増加に直結します。


 さらに、2020年から改正が決まった省エネ基準でも、建築確認申請前に申請作が必要で、構造躯体の断熱計算をした後、使用設備の選定を一次エネルギー消費量で換算して行う必要があります。手続き作業は、ますます増えるのです。


 このように、法改正や新法によって、設計監理に関する作業量は大幅に増えています。シンプルに考えれば施主である消費者にとって、より安心な時代になったということなのでしょうが、反面、負担も大きくなっていることは確かです。


 これから家を建てようとお考えの皆さんは、時間的にも費用的にも十分余裕を持って計画を進めていく必要があります。そして、一度決めたことの変更は、決して簡単ではないということもご了解いただければと思います。


[2014/8/6]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。


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