失敗しない家づくり教室
一級建築士・FP・住まい創りプロデューサーの荒尾博氏が、21世紀の住まいの設計・監理・施工まで総合的に解説します。
第13回 設計段階で検討しておくべき諸問題 風水と建築
今回は、風水についてお話します。この風水は、昔から、建築や都市計画と切っても切れない関係にありました。もちろん、今でもそうです。
1.風水で都市計画……地相
家相と風水について、施主から話が出る確率でいえば家相が圧倒的に多く、風水の話は少ないという実感があります。また、一般的に家相は設計にかかわることが多く、風水は敷地や完成した家のインテリアの色、家具の配置などにかかわる話が多い気がします。
風水がいつごろ日本に伝わったかはよく知りませんが、少なくとも平安京(現在の京都)の碁盤の目のような町並みに見るように、古くから日本の住まいだけに限らず、都市の計画の上で重要な役割を持っていたことは事実です。また、陰陽師(おんみょうじ)は古代日本の律令制下において中務(なかつかさ)省の陰陽寮に属した官職ですが、映画などで紹介されている中では、占術・呪術・祭祀をつかさどるようになった職掌であり、悪魔、妖怪退治なども風水の一部なのかもしれません。
私は首都圏に住んでいますが、江戸の町もあちらこちらに風水との関係が見られる都市です。江戸の町というと、徳川家康が豊臣秀吉の命で関東に移封された時にさかのぼります。その際に、江戸の町を造るにあたって風水を取り入れたのです。その中心人物が徳川三代の懐刀の1人、南光坊天海だといわれています。
江戸の町は、東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武、そして鬼門など、それぞれ風水による都市計画がなされています。「青龍」とは清らかな水の流れで、隅田川(荒川)を指し、「白虎」とは大道、すなわち、大切なものを運び込むあるいは人の歩む道である東海道、中山道を指します。「朱雀」とは海や湖で東京湾を指し、「玄武」とは山を背にするということで、神宿る日光に家康が眠っています。
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| 図1 風水 四神 | 図2 四神と地勢 |
ついでにいえば、江戸を守り、あるいは江戸で悪いことをしないようにとでも考えたのか、日本橋を起点とした街道のうち、江戸に入る街道沿いには、東北道は小塚原に処刑場と将軍が眠る寛永寺、東海道は鈴ヶ森の処刑場と増上寺、甲州街道には新宿と八王子に忍者与力の百人町、千人町などさまざまな配置が見られます。
それでは個々の敷地ではどうでしょうか、それは地相ともいって、敷地とそれを取り巻く道路や傾斜高低差など狭い範囲の考え方もあるのです。たとえば、「北方角がやや高く南に緩やかな傾斜があると吉」などといった感じです。でも考えてみるとこの例では日当たりが良く、風の通りも良い感じがしますから、風水にかかわらず通常の分譲地でも当然に人気があります。
逆に、凶の地相では窪地で湿気が多いとか、東南方向に山など日照を遮る土地と聞けば、誰でも避けたいと思うのも分かる気がします。
敷地レベルから都市レベルまで、風水に関する書籍を読んだり、江戸や平安京などにある四神や鬼門について調べてみましたが、それぞれの意味については風の通りとか、空気が淀まないとか、日陰が少なく日当たりが良いとか連綿と語り継がれたいろいろな経験などから生まれたと思えることが多いと思います。風水の教えを守ることで、何かに守られているような、安心できる一種の心のよりどころにしてきたと考えられます。とすれば、設計や設備を駆使し、現代の生活様式のニーズを満たすことも、十分風水的にかなうことなのかもしれません。言い換えれば、風水のかたちのパターンは1つではないかもしれないということです。
2.厄日
「今日は厄日」とか「日破殺(にっぱさつ)日」という言葉を使うことがあります。設計士や工務店、大工、左官など建築屋の世界では、風水や家相だけでなく、易学の影響を色濃く受けています。
例えば、契約日や着工日、地鎮祭などの建築にかかわる行事の日を決める場合、「大安」を好まれる方がとても多いものです。大安というのは六曜の1つで、他に赤口、先勝、友引、先負、仏滅が日々に付けられています。
ところが実際には大安を選びたいが、多くの施主は平日は忙しく、土日祝日で良き日を決めようとするとなかなか良い日が見つかりません。これに関して、例えば、地鎮祭のように午前中に行うことの多い儀式では、大吉だけでなく午前中が吉とされる「先勝」や、午の刻(午前11時ごろから午後1時ごろまで)のみ吉とされる赤口に行うこともあります。
さらに、建築行事ではこの六曜だけでなく、十二直(じゅうにちょく)で「建・除・満・平・定・執・破・危・成・納・開・閉」を参考にする場合が多いのです。
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| 図3 十二直 |
なぜかと聞かれれば、信じるか信じないかとは別に、参加する職人さんたちも含め、そのようにしておいた方が無難であり、誰もが納得するなど、一種の「言霊」ではありませんがその傾向が強いと思います。
3.大黒柱!?
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| 図4 地鎮祭の祭壇 |
このように、住まいなど建築の世界には、色濃く風水や家相、易学や儒教や仏教など、いろいろな要素が絡み合って現在に至っています。
その世界で働く職人さんたちは、道具の扱いなどでも、初めて使うときは清めるほか、上棟式での清めなど、住まいの着工から完成までいろいろな場面でこれらの要素をないがしろにせず、長年引き継いできた歴史があります。
住まいを新築する際に、家相や風水や易学を取り入れることを強要する気持ちはありません。また、宗教上、信条など、施主の皆さまにもいろいろなお考えがあるかと思います。
ただ、もし、そういうことは一般的に行われている風習に従ってもよいということであれば、地鎮祭や上棟式もご検討いただいた方が、気持ちよく施工が進むように私は思います。
[2009/5/7]
住まい創りのプロデューサー 荒尾 博

一級建築士、FP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアプランナー、ビル管理士、横浜市木造住宅耐震診断士、神奈川県福祉のまちづくりバリアフリーアドバイザー、民間地震対策研究会主幹会員、地震防災と高齢社会住環境に興味あり。
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