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第151回 第三者管理者方式はマンション管理の救世主となるか?

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 区分所有法と並び、マンション管理をつかさどる「マンション管理適正化法」が2001年8月に施行されてから10年余り。今、改めてマンションを適正に管理するとはどういうことなのか、マンション生活における適正な管理状態とはどういう状態を指すのか、根源的な問題を巡り様々な意見が取り交わされている。


 その意見が交錯する場となっているのが国土交通省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」だ。この検討会はマンションの新たな管理ルールのあり方について実態を把握するとともに、その諸課題を整理し、対応について一定の枠組みを提示することを目的に設置された。区分所有者の高齢化や賃貸化(=不在区分所有者の増加)、無関心化により役員のなり手が不足するなど、分譲マンションの管理不全が社会問題となる中で、その対策としてマンションの運営管理を区分所有者以外の第三者に委譲する管理方式=「第三者管理者方式」が俎上(そじょう)に載っている。


 10年前に制定されたマンション管理適正化法では、「管理組合はマンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう努めなければならない」と規定している。そして、適正化指針の中で「マンション管理の主体はマンションの区分所有者で構成される管理組合である」と明言しており、一戸建て住宅同様、分譲マンションも私有財産との認識に立ち、自分たちの財産は自分たちで守るのが当然であることを強調する。補足すれば、管理会社は業務の代行者(外部委託)でしかないという意味だ。管理運営の決定権は100%管理組合が有している。


 にもかかわらず、その決定権を区分所有者以外の第三者に委譲し、その第三者による適正な管理の実施を担保するための業務運営の枠組みづくりが上述の検討会で進められている。そこで、こうした検討会の議論に対して警鐘を鳴らしたのが社団法人高層住宅管理業協会だ。同協会は3月15日、国土交通大臣あてに意見書を提出した。その内容は、特定の専門家(第三者)が役員等に就任することに関し、「専門家の活用は例外的措置であるとの位置付けの明確化が必要」と持論を展開。「専門家の活用は真にやむを得ない場合に限定されるべき」と進言した。


 分譲マンションには様々な利用形態が混在し、区分所有者全体の意思決定が容易でないのは周知の通り。機能不全による管理の空洞化・形骸化が深刻さを増すなか、その救世主として第三者の活躍が期待されるのは理解できる。ただ、新たに就任した専門家による背信行為の心配など、弊害も指摘されている。要は、諸刃の剣というわけだ。実に悩ましい現実がそこには存在している。そこで、肝心の管理組合(マンション居住者)にとって第三者管理者方式はどのようなメリット・デメリットがあるのか、その期待と課題について考察してみることにする。


管理会社が管理組合の代表者になると、双方代理による利益相反の恐れ

 まずは、現在のマンション管理がどのような仕組みになっているか再確認しておこう。

 マンション管理の基本法となる区分所有法は「総会中心主義」を採用しており、マンション内の決議は最高意思決定機関である総会ですべて最終決定される仕組みになっている。簡単に言えば、全組合員の多数決によって意思決定されるのだ。


 しかし、たとえば数百世帯もある大規模マンションで事あるごとに区分所有者を招集して総会を開催していたら大変だ。現実的ではなく非効率でもある。そこで、理事会という執行機関を設け、区分所有者から選出された各理事(役員)が理事会を通じて日常的な組合運営を行なうようにしている。そして、こうした方式を「理事会方式」と呼んでおり、現在のマンション管理方式の主流となっている。


 理事会方式では各理事の互選によって理事長が選出され、理事長は管理規約・総会決議に基づき管理事務を執行し、その職務に関して管理組合を代理する。つまり、管理組合の代表者が理事長というわけだ。理事長は裁判沙汰になれば訴訟の原告あるいは被告となり、また、共用部分につき損害保険契約の契約者ともなれる。ありとあらゆる権利と義務が理事長の肩にのしかかる。


 前述した「第三者管理者方式」とは、この理事長に代わって第三者が管理組合を実質的に組織する仕組み(方式)をいう。現在、第三者にはいくつかの候補者がおり、常に議題に挙がるのが管理会社だ。理事会方式では外部委託(委任)の関係にある管理会社が、第三者管理者方式では委任の関係は温存しつつ、さらに組合代表としての業務も“兼務”する格好となる。管理組合の代表者としてマンション居住者の利益の最大化を図らなければならない一方で、営利企業として利潤の最大化を目指す必要もあり、完全な「自己矛盾」=「利益相反」の恐れが心配されている。


 管理会社が実権を握ることで、たとえば大規模修繕工事の際、おかかえの施工業者に優先的に工事を発注したり、自分たち(管理会社)が受け取る業務手数料を管理会社自ら決定できるようになる。もちろん、最終判断は総会決議(全組合員による多数決)となるのだが、そもそも管理不全のマンションが第三者管理者方式を採用するわけだから、そこまで監視の目が行き届くとは考えにくい。管理会社に“丸投げ”することで、各理事の管理業務が軽減されるメリットはあるものの、背信行為に対する不安はぬぐい去れない。


「所有と管理の分離」を定着させるべく、条件整備が急がれる

 そこで、次なる候補者として挙がるのがマンション管理士や建築士などの専門家だ。管理会社は委任の立場でこれまで通り管理組合をサポートし、その管理組合の代表者として新たに特定の専門家が実質的な組合運営を行う。マンション管理士などが理事長に取って代わるわけだ。この場合、双方代理による利益相反の心配はない。


 ただ、公平性や中立性は担保される一方、適任とされる専門家がどれだけいるか、担い手(人材確保)の面で不安が残る。「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」でもいくつかの問題点が指摘されており、たとえば、その専門家が辞退あるいは病気や事故などで死亡した場合に業務の継続性が脅かされないか、履行保証の仕組みが必要との意見が出されている。また、事実上のワンマン支配となるため、その専門家が単独で金銭管理を行うことへの心配もある。管理組合預金の通帳と印鑑を1人で同時保管すれば、もし魔がさした場合、容易に横領・着服することができる。管理組合が損害を受けた場合、毀損した組合財産をどこまで補てんできるかは未知数だ。


 対策としては複数の専門家を絡ませた管理体制を敷き、職務ならびに責任を分担させることが効果的だ。お互いがお互いを監視するという双方チェック機能も期待できる。マンション管理士単独での第三者管理ではなく、その地域のマンション管理士会や管理士連合会といった組織で第三者管理者を請け負えると不安材料の払拭に一役買うだろう。区分所有法上、管理組合の代表者に制限(適格要件)は設けられていない。個人事業主でもNPO法人でも就任は可能だ。機能不全となった管理組合のニーズに応じて、その管理組合が第三者管理者を自由に選べることが重要となる。


☆  ☆  ☆


 結びとして、本稿のタイトルである第三者管理者方式はマンション管理の救世主となるか?―― 筆者は必要性・必然性は強く感じるものの、条件整備が進まないと救世主にはならないと考えている。オフィスビルや商業施設では「所有と経営の分離」が進展しているように、分譲マンションも「所有と管理の分離」が進むのは自然な流れといえる。ただ、検討すべき課題が山積しており、不安材料ばかりが目立つ。機が熟するまでには、もう少し時間がかかるだろう。今年6月ごろには検討会としての中間とりまとめが発表される予定となっている。一体どのような結果が公表されるのか、その内容に注目したい。



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[2012/4/2]

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住宅コンサルタント 平賀 功一

e住まい探しドットコム代表。ネットを中心に公平・中立なスタンスで「失敗しない住宅選び」のための情報発信を行う。


e住まい探しドットコム http://www.e-sumaisagashi.com/


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