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業界紙出身のベテラン記者・牧田司氏の独自取材記事。街づくり、団地再生、震災復興などがテーマ。愛情あふれた辛口コメントに注目です。本コーナーの記事内容に対するお問い合わせは「RBAタイムズWeb版」までお願いします。

価格調整進む 値引き販売がどう影響するか~今年のマンション市場

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 多くの媒体が書き、専門家の方が話しているように「今年のマンション市場展望」に挑戦しようと思う。


 しかし、最初に断っておく。外的要因である市場を取り巻くあれやこれらの経済指標を借用したところで消費者には“それがどうした”と言われそうだし、内的要因であるデベロッパーの供給姿勢については年間100件くらいしか見ていない記者は分からないというほかない。


 なので、歯切れの悪い文章になってしまうのを許していただきたい。物件選好の役に立つかどうかも分からない。“当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦”というくらいの気持ちで読んでいただきたい。


◇     ◆     ◇


 長谷工総研は先に「2016年の首都圏全体の分譲単価は前年比1.8%アップの79.3千円/平方メートル、平均面積は69.22平方メートルで同比2.2%縮小し、平均価格は5,490万円と、同比0.5%ダウンとなった。分譲単価の上昇幅(前年9.6%アップ)が縮小したことに加え、平均面積の縮小もあって、平均価格は前年を下回った」と発表した。平均専有面積が70平方メートルを割るのは1996年の69.45平方メートル以来20年振りだ。


 「アップ」「縮小」「上昇」「ダウン」の単語が交互に出てくると目が回る。分かりやすく書き改めると、「2016年の首都圏マンションの平均像は価格が5,490万円(昨年比0.5%減)で、面積は69.22平方メートル(同2.2%減)、1平方メートル当たり単価は79.3千円(同1.8%増)だった」となる。


 これでも理解しづらいかもしれない。もっとわかりやすく言えば、建築費の上昇分を分譲価格にオンすれば売れないので、面積を狭くして、さらに基本性能、設備仕様レベルを下げて価格が上がっていないように“見せかけた”のが昨年の首都圏マンション市場だ。


 単価の上昇幅が縮小した理由について、長谷工総研は「山手エリアでの供給が低調であった」「その一方で、都内23区以外の地域の分譲単価は前年比6.5%アップ」「分譲単価・平均価格の上昇傾向は継続している」としている。


 これはこれでその通りだろうが、記者は実際の建築費はもっと上昇していると見ている。つまり、基本性能、設備仕様レベルを落としているからこの程度の上昇幅に収まっていると考えている。


 具体的にいえば、建築費、設備仕様を落とす手段として、間口を狭め同じパターンのプランにする、二重床を直床にする、キッチン、洗面の天板の質を落とす、階高(天井高)を下げる、逆梁は順梁にする、食洗機、バックカウンター・吊戸棚はオプションにする、床暖房をやめる、スロップシンクやミストサウナはつけない、建具・面材・クロスの質を落とす…あらゆることが行われているのが現実だ。都心であろうと郊外であろうと例外はない。


 ただ、過度の基本性能、設備仕様レベルダウンは逆効果になるので、市場動向や近隣物件の商品企画と天秤にかけながら各社は値付けに苦労しているのだ。


 このように、単に価格や面積だけで市場を測ることはできない。契約率も同様だ。例えば、専有面積66平方メートルの8,000万円(坪単価400万円)と専有面積75平方メートルの3,000万円(坪単価132万円)のマンションが分譲されたとする。平均価格は5,500万円、平均専有面積は70.5平方メートル、平均坪単266万円となる。一方が売れ、他方が売れないと仮定すると、平均契約率は50%となる。平均値は昨年の市場とほぼ同じだ。


 では、この平均契約率は市場を正確に反映しているかと問われれば、ほとんどの人はノーと答えるはずだ。母数字が大きければ大きいほど平均値は全体像を反映するという人がいるかもしれないが、現在のマンション市場はよく言われる二極化現象が顕著で、すべての供給物件を足してその数で割ったところで全体像は把握できない。


 売れ行きの格差は大手・中小、デベロッパー間でも顕著で、いくらマクロデータをいじくってみても市場を把握するのは難しい。


 ましてや、一国の大統領が発するツイッターに世界の政治家や経営者が右往左往、右顧左べんし、株価が乱高下する世の中だ。この先どうなるのか全く読めない。


 多少の景気変動など問題にしない富裕層や、比較的元気な単身者、DINKS層向けは堅調に推移しそうなことくらいは読める。価格調整が進むのも間違いない。(こんなことはユーザーのほうがよく知っていることだ)


 しかし、需要層の中心である子育てファミリー向けは不確定要素が多すぎる。雇用の改善は進んでいるが、実質賃金は底ばいが続いている。これから3月末に向けて完成在庫の値引き販売が始まる。各社が堰(せき)を切ったように実施すれば、相場は崩れ、新規供給物件の価格下げ圧力はさらに強まる……などの不安要素はぬぐい切れない。


 一つだけ確かなのは、マンションは金融商品ではなく、購入者は買わざるを得ない切実な事情があるから買うということだ。


 その中心層は、分譲と比べ圧倒的に質が劣り、その割に賃料が高い賃貸居住者だ。これからも利回り優先の賃貸市場が変わらない限り、分譲マンションの優位性は保持される。市場規模が縮小するのは当たり前だ。いつの時代もデベロッパーの基本は商品企画だ。


 生鮮食品に例えるのは適当ではないかもしれないが、最近、家の者が“ちくわの穴が大きくなった。その分キュウリがたくさん詰まる”としゃべった。マンションも基本的には同じだ。景気は家庭の主婦に聞くのが一番いいかも。


[2017/2/8 提供:RBAタイムズWeb版]

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RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


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