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最後の同潤会「上野下アパート」 三菱地所レジデンスが現地見学会

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「上野下アパート」

 三菱地所レジデンスは5月8日、同社が「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」に基づき建て替える現存する最後の同潤会アパート「上野下アパート」の現地見学会を行なった。


 同アパートは昭和4年に建設された4階建て2棟全71戸の鉄筋造で、関東大震災後に16カ所で建設された同潤会アパートのはしりのマンションの一つ。終戦時の東京大空襲にも奇跡的に焼け残ったが、築後84年が経過し、建物の老化や面積の狭さ、住宅設備の旧式化・劣化などが激しいことから建て替えられるもの。完成後は制震構造の14階地下1階建て全128戸(店舗4区画、集会室除く)のマンションに生まれ変わる。三菱地所レジデンスは参加組合員として72戸を分譲する。


外観は洗い出し仕上げ

1階部分の通気孔

◇     ◆     ◇


 この日公開されたのは2号館の4つある階段室のほか、ファミリー向け・単身者向け住戸、共同水場、共同トイレ、屋上など。時間にして約30分だった。


 同潤会アパートは外観だけなら数物件見ているが、実際の建物の中に入るのは初めてだった。ファミリー向けが約25㎡、単身者向けが約10㎡という狭さにももちろん驚いたが、当時としては最新の設備機器や技術が採用されたであろうことは容易に想像できた。


 もっとも驚いたのはダストシュートが各戸に取り付けられていたことだった。キッチンの近くにある金属製のフタを開けて生ゴミなどを捨てると1階まで自動的に落ちる簡単なものだが、これなどは現在の最新のマンションと考え方は同じだ。


 もう一つは、通気・採光によく配慮されていることだった。1階の床下をはじめ各居室には全て自然換気口がついていた。内階段の階段室にも通気・採光窓が設置されていた。これもいまのマンションと変わらない。このほか、4階には浴室もトイレもない単身者向けの共同水場と共同トイレが設置されており、各階段室ごとに防火扉も設置されていた。屋上には共同水場があり、洗濯場や物干し、ベンチなどが設置されていた。これなども最近のマンションでいうコミュニティ施設となんら変らない。集会室には受付の窓口があり、窓の格子デザインも美しい。1階部分には鍵つき郵便受けが設置されていた(この郵便受けは当時からあったのかどうかは聞き忘れた)。


居室

玄関ドア

ダストシュート

◇     ◆     ◇


 現地見学会で建て替えにいたるまでの説明を行った上野下アパートマンション建替組合理事長・森瀬光毅氏(69)の話も興味深く聞いた。森瀬氏は「このアパートを語るには戦前戦後の歴史を振り返る必要がある」と切り出し、昭和4年の大恐慌のときに建設され、16年の戦争勃発のときに住宅営団に移管され、20年の東京大空襲にも奇跡的に焼け残ったこと、サンフランシスコ条約が締結された昭和26年に居住者に分譲され、所有者の組織「協和会」が設立されたこと、平成21年に管理組合を設立したことなどを語った。


 また、「あまり都を批判したくないが、区分所有法もないとき都は売りっぱなしで何もしてこなかったのが、建て替えを遅れさせた」と悔しさを滲ませ、「当初から住んでいる方は103歳の川口さんなど施設に入っている人を含め3人ぐらいしかいない。私の母親も3年前に亡くなった。皮肉な結果だが、建物の老朽化だけでなく高齢の入居者が減ったのも建て替えにつながった」と話した。


 建て替え後については、「ここは子ども会や婦人会なども盛んに行われていた。みんな親や兄弟のようなもの。人情溢れる下町の精神を残していきたい。私も100歳まで頑張る」と語った。


森瀬氏

集会室の格子窓

集会所の受付

◇     ◆     ◇


 記者は三菱地所レジデンスが建て替えを発表した昨年、“これで同潤会アパートは見納めになる”と思い、1階にあった区分所有者が経営する飲み屋で酒を飲み、いろいろなことを聞いた。アパートは風呂なしなのでみんな利用したと思われる隣にある風呂屋も利用した。酔っ払っていたので記憶は確かではないが、記者のような貧相な身体とは対照的な黒光りする肌に立派な刺青が彫られている人の裸身にしばし見とれたのもここだったはずだ。


郵便受け

階段室

屋上

共同水場

共同トイレ

共同水場

[関連記事] 三菱地所レジ、現存する同潤会アパート最後の「上野下」建て替えへ(2012/10/11)


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[2013/5/8 提供:RBAタイムズWeb版]

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RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


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