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防犯ガラスの過信は禁物 旭化成ホームズの研究所が衝撃的な調査報告

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第15回「くらしノベーションフォーラム」(AP東京丸の内で)

 知らなかったのは記者だけかもしれないが、防犯ガラスは普通ガラスと比べそれほどガラス割侵入を防ぐことができないことが旭化成ホームズの調査で分かった。「科学的根拠に基づいた犯罪予防~防犯環境設計について考える~」をテーマにした第15回「くらしノベーションフォーラム」で12月8日、同社くらしノーベション研究所所長・松本吉彦氏が明らかにした。


松本氏

 松本氏は、過去10年間の戸建て侵入被害にあった同社施工の事案を様々な角度で分析した結果を報告。


 この中で、1階窓の被害があった363例のうち、侵入経路について2カ所にロックが付いている防犯ガラス183例ではガラス割侵入が48%、他手段の侵入が29%、ガラス割未遂が16%、他手段の未遂が8%だったと語った。


 一方、普通ガラスで被害があった180例では、ガラス割侵入が61%、他手段の侵入が22%、ガラス割未遂が9%、他手段の未遂が7%だったことを明らかにした。


 この結果から、松本氏は「防犯ガラスはガラス割侵入防止の効果あり」としながらも、高窓やシャッター付き窓の被害が少ないことなどから、外出時にはシャッター窓を閉め、面格子のある浴室窓を開けたままにしないよう喚起した。


 また、死角に侵入させないゾーンディフェンスやハードディフェンス、二世帯住宅や2階リビングなど建て方、さらには「みまもり型防犯設計」など総合的訪販対策を講じれば被害リスクは0.25倍(一般戸建ては0.43倍)に減ると語った。


 フォーラムでは、明治大学理工学部建築学科教授・山本俊哉氏が「科学的根拠に基づいた犯罪予防~防犯環境設計の効用と限界~」と題する講演を行った。山本教授は講演の中で「安全教育(Education)」(≒自助)「法制度・システムの執行(Enforcement)」(≒公助)「環境整備(Environment)」(≒共助)の「安全の3Eアプローチ」が重要と力説した。


 山本氏はまた、犯罪予防の視点からル・コルビュジエの思想に異論を唱える考えもあると話した。


山本氏

◇     ◆     ◇


 皆さんは、防犯ガラスと普通ガラスの被害状況の数字をどう思われるか。記者は防犯ガラスの破砕実験を体験している。大きなハンマーでたたいても割れず、破砕するまでずいぶん時間がかかり、ものすごい音が出る。間違いなく向こう三軒両隣に音が響き渡る。


 ところが、松本氏の報告では2枚の合わせガラスでも特殊な工具を使うためか約5分で穴があけられるというではないか。普通ガラスは1分間くらいだから効果があるといえばあるのだろうが、防犯ガラスの値段は普通ガラスの1.5倍くらいする。それほどコストをかけても数値は61%から48%にしかならないのであれば、単に気休めにすぎないとも思える。過信はできない。むしろ、防犯センサーとか松本氏が強調した電動シャッターなどを取り付けたほうがいい。


 なお、同研究所が2011年に発表した調査報告書では「普通ガラスの侵入率を1とすると防犯ガラスは0.39と約4割に減ることが分かりました」とあり、今回の調査データを2011年時と同じ計算式で侵入率を算定すると0.6倍くらいになるという。


 これだけでは断定的なことは言えないが、防犯ガラス割りの“技術”が進歩しているとも受け取れる。防犯対策と泥棒とのいたちごっこは続いているということか。


 松本氏によると、この種のデータはどこにもないようで、衝撃的な調査報告ではないか。


◇     ◆     ◇


 松本氏は、報告の中で2013年を前後に「中部三県」(東海三県ともいい、愛知、岐阜、三重)で侵入被害が“激増”したと何度も「中部三県」を口にした。


 三重県出身の記者は、被害が多かったのは愛知県で三重県ではないと思い、また温厚な人が多い三重県人の名誉のためにも、「松本さん、私は三重県出身。三重県は泥棒が多いはずはない」と迫った。松本氏は「確かに(木曽・揖斐)川を渡るとぐっと侵入は少なくなる」と答えた。


 してやったり。松本氏から1本取った。しかし、続編がある。取材を終え、ある忘年会に出席して夜中に帰ったのだが、田舎の身内に泥棒が入ったことを知らされた。


 みんなが寝静まっている深夜にどこかから侵入され、リビングに置いていた財布から多額ではないが、忘年会の参加メンバー約40人の会費を賄えるくらいのお金を盗まれたそうだ。それだけではない。娘の下着もなくなったという。


 犬も寝込んだのか、全然ほえなかったそうだ。駆けつけてきた警察官には大声でほえたという。犬まで温厚になってしまったのか、それとも権力には拒否反応を示す県民性を反映したものかよくわからない。おそらく鼻薬をかがされたのだろう。袖の下に弱いのは全国共通だ。犬も一緒。なので記者は犬よりネコが好きだ。


 それにしても泥棒の主たる目的は下着なのか金なのか。つかまるリスクとそろばんをはじくとどうなるのか。山本教授が話した、人間は損得の合理的計算のもとで行動を選択するという「合理的選択理論」(ロナルド・クラーク)に照らしあわせると、獲得する報酬はどうやって測るのか。私は人間は損得だけでは動かないと思う。女性の下着の価値は泥棒しかわからないはずだ。


[2016/12/9 提供:RBAタイムズWeb版]

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RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


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