日本経済新聞 関連サイト

住宅サーチ for Premium Life

住宅最前線 こだわリポート

業界紙出身のベテラン記者・牧田司氏の独自取材記事。街づくり、団地再生、震災復興などがテーマ。愛情あふれた辛口コメントに注目です。本コーナーの記事内容に対するお問い合わせは「RBAタイムズWeb版」までお願いします。

涌井史郎氏「わが国の自然はかみさんと一緒。美しいが扱いも難しい」

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をtwitterでつぶやく


「新しい木の時代 ~日本の森林再生と利活用~」シンポジウム(東京コンベンションホールで)

 住友林業が協賛し、読売新聞社が主催するシンポジウム「新しい木の時代 ~日本の森林再生と利活用~」が12月11日開かれ、約400人が会場を埋めた。


 この日は、2020東京五輪・パラリンピックのメーン会場になる新国立競技場の起工式が催された日で、このタイミングを計ったように、シンポジウムでは建築家の隈研吾氏が基調講演をし、競技場の技術提案等審査委員会委員を務めている東京都市大学特別教授・涌井史郎氏、住友林業社長・市川晃氏、女優で戸板女子短期大学客員教授・菊池桃子氏、トヨタ自動車MS製品企画部主幹で「SETSUNA」開発責任者・辻賢治氏による「各分野で期待が高まる木の価値」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。


隈氏

◇     ◆     ◇


 感動的なシンポジウムだった。記者は自らの勉強のためもあるが、主に取材のためにシンポジウムを年に数回こなす。だいたいが3~4時間ある。その内容を的確に伝えるのはとても難しい。読者の方々がどのような人なのかわからないからし、聴衆のレベルを無視して持論を一方的に話す学者先生が多いからだ。


 この日のシンポジウムは違った。隈氏の特別講演では、20くらいの美しい作品事例が紹介された。シンポジウムでもそれぞれ皆さんの担当する分野の話が分かりやすく伝えられた。


 それでもその中身の濃い話をここでは紹介しきれない。この日の模様は読売新聞が来年1月22日(日)付朝刊で発表するそうだから、それを読んでいただきたい。過不足なく伝えるはずだ。(記者はアンチ巨人なので読売新聞はほとんど読まないが、この日だけは買うか図書館でコピーして必ず読む。皆さんもそうしていただきたい。間違いなく料金の数倍の価値があるはずだ)


 なので、ここではひょっとしたら読売が書かないと思われる、しかし、これこそが神髄をついた言葉だと記者が感じた涌井氏の話を紹介する。


涌井氏

 涌井氏は、わが国の美しい自然とその災害が同居していることに例え、「うちのかみさんと一緒。美しいが扱いを間違えると大変なことになる」と話した。


 この言葉を文字通り解釈すれば、上野千鶴子氏あたりから痛烈な反撃を食らうだろうし、読売も女性の読者層の反発=販売部数減を恐れ、この涌井氏の発言部分をカットするかもしれない。


 しかし、記者は「かみさん」を「木」に置き換えた。これほど木(女性)と女性(木)の本質を文学的に的確に、男性の側から表現した言葉はないと思う。


 これは菊池氏も市川氏も辻氏も話したことと同じだし、隈氏の考えにも通じるものがある。


 菊池氏は自宅の椅子が壊れた話をした。椅子に使用されていたくぎから木目に沿って木が割れたのだそうだ。市川市は「木の性質をよく知ることが必要」と語った。辻氏は「経年」「想い」「継承」をコンセプトに「SETSUNA」にたどり着いたことを話した。隈氏も、街がどんどん年を重ねるごとに価値を増すと話している。


 女性も木も歳(年)に関係なく美しい。その美しさは不変だ。女性の梅干しのようなしわは、酒と同じようにそれだけ美に深みが増したと考えればより一層おいしく、いとおしく思える。そのしわにケチをつけるから険悪な関係に陥るのだ。


 それにしても涌井氏の話は面白い。話すのが本業とは言えこれは神業だと思う。涌井氏から「木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、一歩、歩くごとに人生3倍楽しくなる」と教わったのは20数年前だが、今回の「かみさんの美しさ」は5年前にも聞かされている。その記事も参照していただきたい。涌井氏は次のように語った。


 「私はもう66歳。美しいが、性格が厳しいかみさんとどうして折り合いをつけるのかという難問の答えを知ったのは20年ぐらい前だ。『いなす』『負けるが勝ち』これこそが夫婦円満の極意だ」


 あれから数え涌井氏は71歳。東京都市大学を定年になったそうだが、新たに「特別教授」の肩書がついた。


 シンポジウム後、涌井氏に「先生、これは終身教授という意味ですか」と聞いたら「特別教授にしてくれ」ということだった。ノーベル賞を受賞した大隅良典氏の肩書は東京工大栄誉教授だが、「名誉教授」も「栄誉教授」も退役した「教授」に与えられる称号だ。涌井氏の「特別教授」には「死ぬまで現役で続けてほしい」という大学側の強い要請があったからだと受け止めたい。


左から市川氏、菊池氏、辻氏

司会を務めたアナウンサーの渡辺真理氏

今春、ミラノサローネで世界で初めて公開されたトヨタ+住友林業の木の車「SETSUNA(セツナ)」も1階で展示された

[関連記事] 緑の都市賞を受賞した多摩グリーン森木会が記念講演会 (2011/11/29)


[2016/12/11 提供:RBAタイムズWeb版]

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をtwitterでつぶやく


RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


牧田編集長から住宅サーチ読者へのメッセージはこちら


バックナンバー


※正しく表示されない場合はしばらくお待ちいただくか
こちらのリンクをクリックしてください

 

このサイトについて

日本経済新聞社について