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業界紙出身のベテラン記者・牧田司氏の独自取材記事。街づくり、団地再生、震災復興などがテーマ。愛情あふれた辛口コメントに注目です。本コーナーの記事内容に対するお問い合わせは「RBAタイムズWeb版」までお願いします。

一つの懸念材料 市街化調整区域内の古民家などの用途変更緩和

国交省が指針改正

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 国土交通省は昨年末、市街化調整区域における建築物の用途変更について、古民家などの既存建築物を地域資源として地域再生に活用する場合に、許可要件を弾力的に運用できるよう開発許可制度運用指針の一部を改正した。


 集落の人口減少・高齢化の進行、空き家の発生などにより地域コミュニティの維持が困難となりつつあることを踏まえ、空き家となった住宅などを観光振興や集落の維持のために活用しようという狙いだ。都市計画法では、市街化調整区域内の既存建築物の用途変更は地方自治体の許可が必要で、これまで古民家や店舗などを他の用途に変更する運用基準は各自治体によってまちまちだった。


 具体的には古民家を宿泊施設や飲食店にしたり、自己用住宅を移住・定住促進のための賃貸住宅、グループホームなどにしたりすることが想定されている。


 実際の許可権者は地方自治体にあるため、国交省は用途変更がどの程度行われるか不明としている。各自治体の動きが注目される。


◇     ◆     ◇


 過大な期待は持てないだろうが、地域コミュニティを維持・活性化させる指針の改正には大賛成だ。


 そもそも市街化を図るべき市街化区域と開発を抑制すべき市街化調整区域に区分する線引きがなされたのは高度成長期の昭和43年の新都市計画法で、現在の人口減少、少子・高齢社会の状況では線引きそのものの意味も薄れている。


 このため国は平成12年に法律を改正、大都市圏と特定都市を除き、線引きは各地方自治体の判断にゆだねられることとなった。その結果、現在では10を超える自治体が線引きそのものを廃止した。


 その後も地方都市での人口減少傾向は加速し、中心市街地の空洞化、限界集落への転化、コミュニティの崩壊など地方自治体の抱える問題は深刻化している。このため全国の自治体は、移住助成措置をとったり空き家バンクを設置したりするなどして懸命に取り組んでいる。今回の指針改正は、これらの動きを後押しするものになる。


 ここで懸念される問題もある。用途変更によって違法建築物があぶり出されないかということだ。線引き前に建てられていた古民家などは問題ないだろうが、都市計画法第43条1号で規定されているいわゆる1号店舗には違法建築物が隠れている可能性がある。


 1号店舗とは、調整区域に居住する人向けの小売業、飲食料品店、書籍・文具店、洗濯・理容・美容・浴場業、コンビニなどだ。これらは各自治体の判断によって建設することが許される。


 国交省によれば、平成26年度の1号店舗の許可件数は全国で775件。単純計算すれば1日当たり約2件、1都道府県当たり約16件と少ないが、ある県は全体の17.2%に当たる133件と突出。この県はもともと件数が多く、昭和60年前後のピーク時には少なくとも年間200~300件が許可されていた。


 これらの1号店舗が果たして適法に利用されているかどうか。建築基準法では、建物が完成したときは建築主事又は指定確認検査機関による完了検査を受けて検査済証の交付を受けなければならないことになっているが、当時は検査済証の交付を受けていない建築物がたくさんあった。つまり実態は闇だ。


 今回の指針改正でも、用途変更が認められるのは適法に建てられ、その用途に供されていたものであるものに限られる。この要件を満たさなければ、既存建築物は用途変更も建て替えも不可となる可能性が大きい。空き家となったら最後、そのまま朽ちるのを待つほかない。


[2017/1/15 提供:RBAタイムズWeb版]

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RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


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