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業界紙出身のベテラン記者・牧田司氏の独自取材記事。街づくり、団地再生、震災復興などがテーマ。愛情あふれた辛口コメントに注目です。本コーナーの記事内容に対するお問い合わせは「RBAタイムズWeb版」までお願いします。

多摩ニュータウン学会 「木質ペレットで多摩の緑は生かせるか?」

「小規模分散型の街づくりにペレット利用を」伊井野氏

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伊井野氏(多摩市立グリーンライブセンターで)

 多摩ニュータウン学会(会長:吉川徹・首都大学東京教授)は11月25日、NPO赤目の里山を育てる会理事長・伊井野雄二氏を招き「木質ペレットで多摩の緑は生かせるか?」と題する木質ペレット製造~燃焼実験、伊井野氏の講演、パネルディスカッションを行った。多摩の緑と木質ペレットの可能性について理解を深めるもので、会場となった多摩市立グリーンライブセンターでは、木質ペレットストーブで焼いたピザや恵泉女学園大学キャンパスで採れたレモングラスのハーブティーなども道行く人たちに振る舞われにぎわった。講演会、パネルディスカッションには定員いっぱいの約60人が参加した。


国産の薪・ペレット併用ストーブ(震災後は約4,000台が売れたという。煙はほとんど出ない)

国産の薪・ペレット併用ストーブ(震災後は約4,000台が売れたという。煙はほとんど出ない)

国産の薪・ペレット併用ストーブ(震災後は約4,000台が売れたという。煙はほとんど出ない)

◇     ◆     ◇


 伊井野氏は講演の中で、1960年代のエネルギー革命によって薪炭が石炭や石油などの化石燃料に取って代わられたことや、自らが1990年に三重・名張市でのゴルフ場建設反対運動に関わっていくうちに自然を守り利用する活動に傾注していったことなどを紹介。


 木質ペレットの導入については、石油危機がきっかけで82年から国内でも生産されるようになったが、石油価格の下落によりコスト的競争力が低下し、現在では50カ所以上の大工場がありながら稼働率は3分の1以下にとどまっていることを話した。


 そこでも伊井野氏は、2003年から自前の安価で使い勝手がよいペレタイザー(ペレット生型機)を開発できないかと取り組みだし、悪戦苦闘、試行錯誤の末、2008年3月に年間11トンのペレットを生産できるパーソナルペレタイザーを業者とともに完成させた。その後、障害者の就労事業所「赤目の森作業所」も立ち上げ、ペレット製造を就労の場とした。


 伊井野氏は「雑木林の伐採─萌芽─生育のサイクルを20年間とすると、6.6ヘクタールの森林があれば年間18トンのペレットが生産でき、われわれの施設は維持できる」とし、「これからは電気を熱にするような効率が悪いことはやめようと思っている。ペレットボイラーで熱と電気を生み出し、合理的な利用を促進するために、熱エネルギーを運動エネルギーに、また運動エネルギーを熱エネルギーに転換できるスターリングエンジンに着目し、電気も作っていきたい。電気自動車は木質ペレットで動かす」と語った。「これからは小規模分散型の街づくりが大事」と力を込めた。


木質ペレット

ペレットストーブ(こちらは約3万円)

◇     ◆     ◇


 パネルディスカッションでは、同学会・吉川会長がコーディネーターを務め、パネリストの伊井野雄二氏、川島実氏(NPOいなぎ里山グリーンワーク理事長)、松村正治氏(恵泉女学園大学人間環境学科准教授)、祐乗坊進氏(ゆう環境デザイン計画代表取締役 東京農大客員教授)、宇野健一氏(アトリエU都市・地域空間計画室代表取締役)が多摩での木質ペレットの普及・啓蒙活動などについて話し合った。


 川島氏は、議員を辞めてから約10年間、地元の里山で江戸時代の炭窯を再現し、農業体験や里山体験を市民にしてもらえる活動を行っていることなどを紹介。「せっかく作った炭を100%使ってくれる人がいないのは残念。エコな暮しを楽しめる社会になってほしい」などと話した。


 松村氏は、10数年前から横浜で里山をテーマに活動していることを紹介。木質ペレットについては「バイオマスはブームの様相を呈しているが、拡大・成長する世界市場に対して日本の市場は成熟しておらず、里山保全と結びつけるのは難しい」と問題を提起した。


 祐乗坊氏は、「地元で20~30年、炭焼きをするなど緑と関わってきた。多摩市は緑が豊富で、この緑を資源として考え、薪やペレット、木工利用などベストプラクティスを探っていくべき」と多様な利用方法を考えるべきとした。


 宇野氏は、「いまの緑は愛でる緑になってはいないか、プランナーとしてこれでいいのかと考え続けてきて、持続可能な緑を提案することが大事だと思うようになってきた。今、稲城市の南山の区画整理事業に関わっているが、街づくりに緑を生かす提案を行っていく」と話した。


 伊井野氏は「われわれは最初からペレットを使いたいから使ったわけではない。自然とどう向きあうのか、どうして自立していくかから始まった。ペレットが普及すればコストは大幅にダウンする」と訴えた。


吉川学会長

左から川島氏、松村氏、祐乗坊氏、宇野氏


◇     ◆     ◇


 記者はペレタイザーなるものを初めて見たが、少しは予備知識があった。外気温が零下30℃のモンゴルではゲル(燃料は石炭だったのか羊の糞だったかは覚えていない)の中はストーブ一つで温かいのを経験したし、アキュラホームの宮沢社長宅では薪ストーブが大活躍していたのも見た。マンションなどの集合住宅では課題もありそうだが、薪ストーブにしろペレットストーブにしろ戸建てには普及する可能性があると見ている。公共施設にはぴったりではないかとも思う。


 一つ気になったのは松村氏の指摘だった。国産材の自給率を現在の27%から50%にまで向こう10年の間に引き上げようと国は必死で取り組んでいるが、遅々として進んでいない。松村氏は、わが国のペレットは国際市場から取り残されており、産業として成り立たないという。間伐に対して補助金が出る人工林の活用と、里山資源の活用については同列に論議すべきではなく、多摩の里山資源を活用する方法として木質ペレットの利用は難しいというのだ。


 この松村氏の主張には耳を傾けるべきだろう。記者などは切り捨てられたままになっている間伐材を木質ペレットにして普及を図ればいいと単純に考えるが、すでに産業として成り立たなくなっている森林・林業問題と同様、このペレット問題は単純ではなさそうだ。


 多摩の緑を愛でるのも、趣味の範囲内で考えるのも結構だが、もっと森林・林業・里山について真剣に考えろということだ。われわれの生存基盤である生物多様性の母とでも言うべき森林・林業の再生がどうすればできるのか、国産木質ペレットの普及を阻んでいる要因は何なのか、どうしたら普及が進むのかを考えないといけない。


 田舎に帰り、害獣の侵入を阻んでいるはずの電気柵を見ると、檻の中に入っているのはわれわれヒトではないかという錯覚を覚えるほど、森林も田畑も危機的状況にある。アユもうなぎも姿を消しつつある。せっかくの選挙だ。森林・林業・農漁業について、せめて領土問題や自衛隊の呼称問題と同じぐらいのエネルギーをかけて論議をするべきだろう。「お前は自然とどう向き合うのか、どう生きるのか」の刃を突きつけられている問題でもある。


ペレタイザー

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[2012/11/27 提供:RBAタイムズWeb版]

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RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


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