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業界紙出身のベテラン記者・牧田司氏の独自取材記事。街づくり、団地再生、震災復興などがテーマ。愛情あふれた辛口コメントに注目です。本コーナーの記事内容に対するお問い合わせは「RBAタイムズWeb版」までお願いします。

“掃除は科学、床は朝日・窓は読売” マンション管理員のスゴ技体験

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「マンション管理員業務講習会」(大京アステージ研修所)

 公共職業安定所(ハローワーク)の就職フォローアップ事業の一つ「マンション管理員業務講習会」を取材した。「掃除は科(化)学」「床は朝日新聞、窓ガラスは読売新聞」「ホコリは取るもの、誇りは持つもの」などという講師の話と手際よいスゴ技に目からうろこが落ちた。


◇     ◆     ◇


 講習会が開かれたのは大京グループの管理会社・大京アステージの研修所。年間16回くらい実施しておりほとんどが満席だという。マンションの構造から共用部分、専有部分、給排水・防火設備、免震装置などあらゆるものが備えられているのが選ばれている理由のようだ。


 この日、講習開始の9時30分に集まったのは20数名。55歳代半ばから記者と同年代と思われる60歳代で、女性も数人。


 事前にスケジュールは知らされていたが、昼食、休憩を含み16:30まで7時間。配布された資料はA4約70枚。素人でも理解できる内容ではあるが、何しろ掃除が大嫌い。始まる前に腰が引けた。


 主催者の挨拶のあと、講師は朝の準備体操から制服を着て、手書きの日報(記者は漢字が書けない)で終わる1日の業務を説明。「管理員の仕事の7~8割は清掃」「誇りとサービス精神」「礼節を重んじる」などと話した。


 ここまで約1時間。講義を聞きながら、配布された“求人リスト”を見た。給与は時給にして1,000円前後、月曜から土曜日まで1日8時間働いて月給は12万円台から17万円台。“これでは生活できないではないか”と管理員になったつもりで考え絶望的な気持ちになった。“もう帰ろうか”とも思った。


 そんな記者を救ったのは、大京アステージ人財マネジメント部研修センター講師・春田道雄氏(67)だった。


 春田氏はどこか坂上二郎さんに似ていた。登壇すると講釈師のように「多く給与もらっていないのだから、体調が悪い時は休みなさい」「掃除のメリハリを付けなさい」「光るものは光らせなさい」「雑巾は手首で絞るとけんしょう炎になる」「掃除は科(化)学」「ウォッシャーは左を下げて」「自在ほうきはヘッドエンドを持つ」「モップは後退しながら拭く」「入居者が拭いた後を汚しても注意しない」などとわかりやすく説明した。舌を巻くほかなかった。話し上手は綾小路きみまろさんクラスだ。


 目からうろこが落ちたのは、朝日新聞と読売新聞に言及したときだ。和室は茶渋を用いて掃除することを引き合いに出しながら、「ここでクエスチョン。エントランスの床の微細なホコリやチリを効果的に取り除く方法は?」と受講者に問いかけ、「答えは新聞紙。小さくちぎって水を含ませてすくい取るのです。どの新聞がいいか、朝日新聞です。読売新聞はふさわしくありません。なぜか。科学的には証明できませんが、経験値からわかったことです。朝日はインクが薄い、読売は濃い。インクが濃いと床が汚れることがある。こんなことをしゃべると読売派の方に怒られますが、読売のほうがいいところもあります。窓ガラスです。インクの作用でコーティングして、汚れにくくする効用が読売にはあります」


 なるほど。朝日と読売を比べた場合、見出しは朝日のほうは明朝体が多く、読売はゴシックが多い印象を受ける。それがインクの濃淡につながるのかと思い、そのまま朝日と読売に問い合わせた。残念ながら双方ともわからないということだった(漢字はどちらが多いか、見出しは明朝かゴシックか、ホワイトスペースの多いのはどちらか――これを調べれば科学的に証明できそうだ)


 そんなわけで、終了の16:30までつつがなく取材を終えることができた。記者のようなタバコ好きの掃除嫌いや余計なお世話好きには向かないが、普通の人ならできるのではないかと思った。受講者はみんな楽しそうだった。


 春田氏も「管理員になるまではお客さまから直接“ありがとう”という言葉をかけられる仕事でなかったが、管理員になって“ありがとう”という声を掛けられたときは本当にうれしかった」と話した。


「みなさん、掃除は科学ですからね」春田氏

「自在ほうきはヘッドエンドを持つんですよ」

◇     ◆     ◇


 マンション管理の仕事がどのようなものか全く知らないのに“マンションは管理を買え”などと話したり記事を書いたりするのが管理員や購入検討者に失礼だと思い、少しでも実際の仕事内容を理解するために取材を大京広報担当者にお願いし、快く引き受けてもらった。同社と大京アステージの方々に改めてお礼申し上げる。


 今回の経験を今後のマンション管理の取材に生かしたい。マンション管理業界では管理員の確保が深刻化しているとも聞くが、管理員はモチベーションを高く持ってマンションの価値維持・向上に務めていることを実感した1日だった。デベロッパーや管理会社は管理員の待遇改善に一層力を注いでほしい。


「ちりとりだって音が立たないよう工夫しているんですから」

「給水システムは本物を縮小していますが原理は同じです」

[2017/2/25 提供:RBAタイムズWeb版]

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RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


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