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業界紙出身のベテラン記者・牧田司氏の独自取材記事。街づくり、団地再生、震災復興などがテーマ。愛情あふれた辛口コメントに注目です。本コーナーの記事内容に対するお問い合わせは「RBAタイムズWeb版」までお願いします。

不動産鑑定のあり方が問われている 「士」を安売りすべきでない

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 「セカンド・オピニオン」を売りにしているあるWebサイトを見ていたら、たまたま記者が取材し、記事にもした公園に隣接するマンションについて、ユーザーの方が「このマンションを評価するうえで有利と言えますか」という質問をしていた。


 この質問に対して、不動産鑑定士が次のように回答している。


 「公園など緑が豊富な場所が近くにあるということは、一般的に環境面で優れていると評価され、価格形成要因としてプラスになると言えるでしょう。


 ただし、公園が近くにある場合でも、幹線道路を渡らないと公園にいけないとか、公園まで坂道や階段があるなど立地やアプローチの内容や、特に夜間における防犯上の懸念など、実態を踏まえて評価の度合いを考える必要があります。


 また、公園が近くても、最寄り駅からバス便である場合やスーパーなど利便施設が近くに無い場合などは、プラスとマイナスが作用することになり、ほかの項目との相関の程度も踏まえて判断する必要があります」


 さて、この不動産鑑定士の回答は質問者の意図する回答になっているか。ほとんどの方は「ノー」というはずだ。質問者は物件名をあげて「このマンション」と具体的な物件の価値について聞いている。回答者は「このマンション」の価値について答えないといけないのに、一般論で終始している。


 このマンションについていえば、幹線道路もないし、近くにスーパーはあるし、駅にも近い。学校も隣接している。夜間の防犯上の懸念は知らないが、申し分ない立地条件だったためほとんど即日完売しているのをよく覚えている。SOHO的な利用も可能とする先駆的なマンションでもあった。いまの中古市場での評価も高いはずだ。


 Webの不動産鑑定士は質問者と契約を交わし報酬を得て回答しているわけではないが、こんな「回答」は逆効果だ。質問者を失望させるだけだ。「士」を安売りしてはいけない。(かといって、きちんと契約を交わせば数万円のフィーが伴うだろうし、しかも回答まで時間がかかる)


 記者に言わせれば、こんなことは何も不動産鑑定士に聞かなくとも近くの不動産業者に聞いたほうが早い。ほとんど瞬時に売買事例をはじき出し、適切なアドバイスをしてくれるはずだ。しかも無料で。


◇     ◆     ◇


 中古住宅のインスペクション(住宅診断)に建築士や不動産鑑定士を介在させることが決まった。安心・安全の取引のためには結構なことだ。


 しかし、当然のことながら報酬も伴う。仲介手数料にその費用を上乗せできるのか。記者は宅建士、建築士、鑑定士の3人の「士」(大手ハスウメーカーで構成する優良ストック住宅推進協議会には「スムストック住宅販売士」もある)を不動産取引に介在させないと「安心・安全」が担保されない、何の役にも立たない「セカンド・オピニオン」士が徘徊(はいかい)する市場をなんとかしなければならないと思う。屋上屋を架すことになりはしないか心配だ。


 不動産鑑定士でいえば、国交省は先に不動産鑑定士の業務や魅力を紹介した動画「不動産鑑定士という選択」をホームページで公開した。へそ曲がりの記者などは“それだけ人気がないのか”と読んでしまう。


 難しい試験を突破するために寸暇を惜しんで勉強に励んでも30歳、40歳にならないと受からず、その割に報酬が少なく“仕事がない”と愚痴らざるを得ず、法律を犯すと厳しい罰則もあり、弁護士ほどの称賛を得ることもなく、絶えずクライアントのプレッシャーにおびえなければならない不動産鑑定のあり方を考えないといけない。


 しかし、“武士は食わねど高ようじ”――鑑定士の皆さんには気位を高く保ち、自らをおとしめるセカンド・オピニオンなどに手を染めるべきではないと思うがいかがか。


[2017/3/4 提供:RBAタイムズWeb版]

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RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


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