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業界紙出身のベテラン記者・牧田司氏の独自取材記事。街づくり、団地再生、震災復興などがテーマ。愛情あふれた辛口コメントに注目です。本コーナーの記事内容に対するお問い合わせは「RBAタイムズWeb版」までお願いします。

理解できない超高層マンションの価値割合による課税変更

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 政府与党による平成29年度の税制改正大綱がまとまった。マンションの固定資産税、都市計画税、不動産取得税はこれまで取得する階数に関係なく専有面積割合で課税されていたのを、高さ60m以上の超高層マンションについては階数が高くなるほど課税額を増やす「価値割合」を盛り込むことが決まった。税制大綱の具体的な内容に沿って記者の考えを紹介する。


◇     ◆     ◇


 高さを60m超としたことについて。この数値については合理的な理由はそれほどない。建築基準法では高さが60m以上の建物については構造計算上、政令による技術基準を満たすことが求められており、これに準じたものと思われる。1層を約3~3.2mとした場合、階数は18~20階建てとなる。


 「価値割合」手法を採用するのであれば、超高層だけでなく低層、中層にも適用してもよかったのではないか。


 その「価値割合」による専有部の評価額だが、各住戸の価格は階数だけで決まるものではない。一般的に階数が高くなるほど高く設定はされるが、過去の事例では、低・中層マンションでも1層当たり坪単価で数百万円の差があったものもあるし、その逆に武蔵小杉の超高層では階数によってほとんど差異がなかった事例もある。


 なぜか。マンションの価格形成の大きな要因は眺望・日照・通風であり、その時々の市況も大きく影響する。低層マンションでも階数が異なれば眺望・日照条件が激変するケースは多く、逆に、前面に高い建物が建てられないエリアでは眺望が担保されていることから、階層によって価格差を設ける意味がなくなるからだと思われる。


 なので、今回のように「1階を100とし、階が1を増すごとに10を39で除した数を加えた」補正率は合理的な説得力を欠くと記者は考える。1層の補正率が10/39=0.26%という数値の理由も全然わからない。富裕層にとって20階建てで5%、40階建てで10%の増税など痛くもかゆくもないのではないか。そうでない層は税金が安い低層階を選好するようになり、上層階が売れないと困るデベロッパーは上層階の価格を下げる逆転現象が起きることはないのか。


 もう一つ、価格を形成する大きな要因は専有部の広さであり、設備仕様、デザインなどだ。これを固定資産税評価額に反映させるのは至難の業だと思う。免震や制振構造をどう強化するのかも注目したい。


 例えば天井高。具体的な事例を示すと、三井不動産レジデンシャルが2011年に分譲した「パークコート六本木ヒルトップ」では、標準階のリビング天井高は3,400~3,450ミリあり、廊下、キッチンでも2,350ミリ確保されていた。


 一般的なマンションのリビング天井高は約2,500ミリであり、廊下、キッチンなどは約2,200ミリだ。この差を評価額に換算すれはいくらになるのか。記者は分からないが、とてつもなく高い評価点になるのではないか。


 それでも当時の分譲坪単価は500万円だった。今なら坪800万円以上だろう。価格を形成する要因は、地価や建築費もあるが、その時の市況が大きく左右するという典型的な事例だ。


 また、超高層のペントハウスなどの価格は通常階の単価の2~3倍するものが少なくないが、これは前述した眺望の価値に加え、虚栄心を満たす豪華な設備機器を設置し“唯一無二”の“非日常”を演出する企画を盛り込むからだ。デベロッパーの企画担当者はこの商品企画に力を注ぐ。


 せっかく「価値割合」を採用するのなら、このデベロッパーの苦労もきちんと評価すべきだ。


 これは失礼だが、固定資産評価額をはじき出す担当者は広さ、設備機器を定量的に測ることはできるかもしれないが、トータルなデザインを評価する目利き力は兼ね備えていないのではないか。


 と、ここまで書いて大きな疑問が出てきた。いったい建物の評価は何を基準にするのかという問題だ。先に上げた「パークコート六本木ヒルトップ」は突出したレベルにあると思うが、仮にこのマンションの「質」を100とすれば、今売られている億ションのレベルはせいぜい70しかないと思う。全体の建物評価の整合性はどのようにして担保するのだろうか。


 税制大綱では、「区分所有者全員による申し出があった場合には、当該申し出た割合により当該居住用超高層建築物に係る固定資産税額をあん分することも可能とする」とあるが、多数決ではなく区分所有者全員というのはかなりハードルが高い。


 個人的には、「価値割合」も結構だが、街の景観に配慮した総合設計制度の適用を受けた物件とかCASBEEで高い評価を得た物件などは固定資産税、都市計画税の思い切った減免措置を取るべきだと考えている。さらに言えば、戸建ても含めて良質な住宅が市場できちんと評価される仕組みを構築してほしい。


[2016/12/10 提供:RBAタイムズWeb版]

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RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


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