日本経済新聞 関連サイト

住宅サーチ for Premium Life

住宅最前線 こだわリポート

業界紙出身のベテラン記者・牧田司氏の独自取材記事。街づくり、団地再生、震災復興などがテーマ。愛情あふれた辛口コメントに注目です。本コーナーの記事内容に対するお問い合わせは「RBAタイムズWeb版」までお願いします。

三浦展氏の「パラサイト」論 もっと多角的な検証を

旭化成ホームズ 第8回「くらしノベーションフォーラム」

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をtwitterでつぶやく


講演する三浦氏

 旭化成ホームズの「くらしノベーション研究所」は先に、第8回「くらしノベーションフォーラム」を開き、カルチャースタディーズ研究所・三浦展所長が「団塊親子の今後と住宅」と題する講演を行った。


 三浦氏は、少子・高齢化が進行する首都圏の人口動態から1980年代の「ニュータウン」は2010年には「オールドタウン」となり、2040年には「ゴーストタウン」になる可能性があると指摘。そうならないためにはシェア的なライフスタイルの提案や価値を維持できる住宅のメンテナンスビジネスを育てることが必要と話した。


 三浦氏は講演の中で、郊外で生まれ育った団塊ジュニアは都心と新興郊外に流れているとし、既婚率が高い千葉ニュータウンや港北ニュータウンなどの一部を除き、未婚の男性は半数に達し、女性も3割が未婚だとしている。また、郊外を中心にパラサイトシングルが増加しており、「所得が300万円以上でないと結婚できない」などと、パラサイトシングルと所得問題について語った。その一例として船橋市をあげ、「学歴が低く、独立できないパラサイトシングルが多いのではないか。仮説を検証する必要がある」とした。


◇     ◆     ◇


 記者が注目したのは、「くらしノベーション研究所」の入澤敦子研究員の「熟年夫婦と未婚の子世帯のくらしとすまい」に関する調査結果についてだった。


 国勢調査によると、親と単身の子世帯や夫婦のみ世帯、単独世帯がここ40年間、一貫して増加しているのに対し、三世代・二世代の世帯は、若干の増減はあるがほぼ100~140万世帯で推移している。


 そこで、同研究所は、「親と単身の子世帯」が増加していることに着目し、「熟年夫婦と未婚の子世帯のくらしとすまい」についてWEBアンケートやヘーベルハウス居住者への電話ヒアリング、訪問調査を行ってレポートにまとめている。


 WEBアンケート調査対象は、この10年間に戸建て住宅に建て替えた熟年夫婦またはその未婚の子で、「熟年夫婦と未婚の子世帯」の属性は、夫が62歳、現在就業が7割(対象196人)、妻は58歳(対象157人)、同居未婚子が31歳、平均年収350万円(対象122人)。「熟年夫婦のみ世帯」の属性は、夫が63歳、現在就業が5割(対象93人)、妻が59歳、子は32歳、平均年収は450万円。


 親と子が同居するのは、それぞれが同居を同意するから満足度が高くなるのは当然だが、同居家族の同居に対する満足度は親も子も80%以上に達している。別居家族も満足度は高いのだが、別居未婚の子の満足度はほかと比べて10ポイント以上低くなっている。


 レポートはその理由を明らかにしていないが、親子間の複雑な家族関係がうかがわれる。同居したいが同居できない理由があり、別居したいが別居できない理由があるのだろう。


 建て替えた理由については、「建物の老朽化不安」の回答が58%ともっとも多かったが、経済的・体力的に「ラストチャンス」と考えている回答が42%と2番目に多かった。


 これらの結果から、同研究所は、「妻が、同居する子が、将来住む家に困らないように」という考えから建て替えに踏み切り、家族観としては、「核家族」ではなく「個の充実」とともに「おとなの交流」を望む「拡家族」の考えが広まっていると結論づけている。


入澤さん

◇     ◆     ◇


 三浦氏の講演と同研究所のレポートはなかなか興味深い。しかし、記者は「パラサイト」という言葉が「寄生虫」をイメージさせるので好きではないし、「パラサイト」=「低所得」「低学歴」と短絡的に結びつけるのは差別的であり、危険な考え方だと思う。


 三浦氏が「パラサイト」が多いとした船橋市については、人口動態のみのマクロデータではなくもっと多角的でかつミクロデータで検証すべきだろう。船橋市以外で女性の「パラサイト」が多いのは、三浦氏が示したデータによると世田谷区、大田区、江戸川区、足立区、武蔵野市で、その次に多いのが町田市、八王子市、横須賀市、藤沢市、所沢市、川越市だ。


 この区市名で分かるように、足立区、江戸川区を除き人気の高い住宅地だ。これらの地域は都心から比較的近く、団塊世代やそれ以上の世代が分譲住宅を求めて移り住んだエリアだ。郊外エリアでも戸建ては数千万円していた。


 船橋市で「学歴が低く、所得が低いパラサイトが多い」とする仮説が正しいとすれば、世田谷区や武蔵野市など他の区市はどう説明するのだろうか。確かに船橋市の生活保護率はこれらの区市と比較して極めて高い。だからといって「所得が低いパラサイトが多い」などとはいえないのではないか。


 記者が街路樹の取材でたずねた東横線菊名駅近くの住宅地は時価1億円をくだらない高級住宅街だが、「ここは後家住宅地といわれているし、子どもが結婚しない家が多い。うちは3人の子どもが結婚しないで家に住んでいる」とあるお年寄りが話していた。


 「パラサイト」ができるというのは、それだけ経済的な余裕があるとも考えられるし、旭化成ホームズがターゲットとする建て替え層とも一致するのではないか。それぞれの区民には失礼だが、同じ「パラサイト」が多い足立区や江戸川区とこれらのエリアは同列に考えるべきではない。船橋市と市内に住む「パラサイト」は怒るのではないか。


挨拶する同研究所・松崎昭夫所長(所長は、研究員の人数をこれまでの7人から9人に増員したことを明らかにした)

[2012/6/25 提供:RBAタイムズWeb版]

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をtwitterでつぶやく


RBAタイムズ 牧田司

第三企画(東京・新宿)が発行する住宅・不動産業界情報紙「RBAタイムズ」編集長。記事の大半を自身で取材・執筆している。月1~2回の紙面発行に加え、「RBAタイムズWeb版」で随時ニュースを配信中。紙面は住宅・不動産業界の親睦と発展を目的に業界関係者に無料配布しているが、広告を一切掲載せず、(第三企画も含めた)特定企業の利害にとらわれない編集方針をとっている。


牧田編集長から住宅サーチ読者へのメッセージはこちら


バックナンバー


※正しく表示されない場合はしばらくお待ちいただくか
こちらのリンクをクリックしてください

 

このサイトについて

日本経済新聞社について