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住宅ねっと相談室 あらかると

一戸建ての新築時や居住中の疑問・トラブルなど、読者から寄せられた相談に建築士やFP、弁護士ら専門家が回答します(この連載は終了、新たな質問の受け付けも終了しました)

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QUESTION

京都の町家を買いたいが、違法建築かも

(東京都 60歳代 会社員 男性)

 会社を定年退職し、夫婦で京都に移り住もうと考えています。


 物件探しをしていたところ、築60年以上の古い町家を購入してリフォームしてはどうかという話がありました。現地を見に行ったのですが、よく見ると瓦屋根の一部(10~15センチくらい)が、片側のお隣さんの町家住宅とお互い重なり合って境界線を越境していました。


 仲介業者からは、越境についての説明が全くなかったので、こちらから質問をして初めて発覚しました。ちなみに、もう片側のお隣さんとの距離は十分あり、越境していません。


 当初は利便性の良い立地なので前向きに購入したいと考えておりましたが、「相互越境のある物件=違法建築」なら購入しない方がいいのかも、と思い始めています。


ANSWER

「おたがいさま」の精神が生んだ合理的な住まい方

(住宅ねっと相談室カウンセラー 司法書士 石田 光廣)

 京都に限らず、都市の住宅密集地は、外壁と外壁をくっつけて、土地をできる限り有効に活用するとともに、家の間に不審者や動物が入り込まないようにする工夫をしてきました。また、家並みが引っ付いていることで、活気のある素敵な都市景観も作り上げられました。


 そして、その際に取るべき重要な物理的対策は、人が入れないほどの隙間ではメンテナンスが困難なので、その間に雨が入らないようにすることです。そこで、京都の先人は、お隣と大屋根の高さに段差をつけ、上になるお宅の大屋根を越境させて、あるいはお互いの屋根を重なり合わせて(越境させて)家と家との間に雨風が入らないようにしてきました。これは、京都に限らず、日本中のどの都市でもあった「おたがいさま」の精神から生まれた慣習だと思います。


 ところが近年、一方の町家が壊された瞬間におたがいさまの関係が崩れ、“越境”という問題にすり変わってしまいます。決して違法建築ではありませんが、違法建築であるという誤解から、まだまだ使える貴重な京町家が壊されている原因の一つにもなってきました。


 さて、どうすれば安心して購入することができるかですが、まずは、隣家との境界標があるかどうか確認してください。無ければ、屋根の位置に関係なくお互いの境界線を特定する標(鋲)を設置することをお隣と相談してください。この方法は、標(鋲)が滅失しても大丈夫なようにきちんと測量する方法から、とりあえず、目印としての標(鋲)のみを設置しておく方法までいろいろ考えられます。


 次に、隣地所有者と覚書などの契約を書面で交わす方法があります。実際には、これらの方法を組み合わせるのですが、確実性と費用は正比例しますので、お隣との相談が必要です。仲介業者に協力してもらってトライしてみてください。ちなみに、こんなことに協力しない仲介業者は、京都で仕事をしないで欲しいものです。


 具体的な法的作業については、土地家屋調査士に指導を受けてください。地元の土地家屋調査士会で、町家の境界問題に精通している調査士を紹介してもらうと良いと思います。


[ 2014/7/24 掲載]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 司法書士 石田 光廣

 『相続のたびに“まち”が壊されていく!』。これが長年のまちづくり研究で分かったことです。不動産や住宅は、経済資源ではありません。国家の重要なインフラです。秩序ある不動産の継承は、「まちづくり」の原点です。皆さんに正しい知識をもっていただいて、暮らしやすい社会を実現したいですね。こんな思いから司法書士になりました。


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