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住宅ねっと相談室 あらかると

土地の購入時や居住中の疑問・トラブルなど、読者から寄せられた相談に建築士やFP、弁護士ら専門家が回答します(この連載は終了、新たな質問の受け付けも終了しました)

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QUESTION

隣地の擁壁の安全性について知りたい

(茨城県 50歳代 主婦)

 隣地の擁壁についての相談です。地盤や造成についての専門家が周りにおらず、お知恵を拝借したいと思い、この相談室に投稿しました。


 元は竹藪だった隣地の傾斜地に、宅地造成(9区画)に伴って1.75~5メートルのプレキャスト擁壁が施工されました。施工当初には無かった擁壁間のすき間が、3カ月ほど経って底部で1センチ、上部で4センチ程度に広がってきました。すき間の隣りのコーナー擁壁が外側に傾斜しているのが原因のようです。同様に擁壁間のすき間(1~3センチ)がほかにも多数見られます。


 さらに斜面に沿って施工された基礎コンクリートが既存の土地レベルより高い部分があり、そこに施工された擁壁数枚の根入れが数センチほどの砂利で埋まっているだけで十分に施されていません。


 土地の所有者である施工業者は、施工前から地域住民には一切説明しない方針なので、以上の内容を市に弁護士連名で意見書として提出しましたが、何ら回答をいただいていない状態です。このまま市が完了検査を通してしまえば家が建つことになりますが、このような状態で安全性が確保されるのでしょうか。よろしくお願いします。


ANSWER

擁壁の管理と被害の可能性

(住宅ねっと相談室カウンセラー 地盤コンサルタント 高安 正道)

 擁壁がその自重により沈下する際に、現象として顕在化するパターンとしては、

  • 前面への滑り出し
  • 上部の前傾
  • つなぎ目の目地のすき間の拡大
  • 擁壁最上部(天端)の横方向の水平性が失われる
  • 擁壁の垂直の壁面が土圧によって外部へと膨れる
  • 擁壁内部(背面部)の埋め戻し土の陥没


――などがあります。ご指摘の擁壁の異常は、懸念されるような擁壁の沈下に付随するものである可能性があります。


 高さ2メートル以上の擁壁については「工作物確認申請」が役所へ提出され、その構造の適正性、十分な支持機構かが問われます。構造計算書およびボーリング試験などの地盤調査、地盤が擁壁を支持できないような軟弱地盤であれば支持杭を打設する計画案などが提出されます。「工作物確認申請」が受理された擁壁については完了検査が役人立ち会いのもとで行われ、「検査済証」が発行されます。


 あくまでも概算ですが、高さが3メートル以上の擁壁で、一般の住宅であれば十分な地耐力を持っていると考えられる地盤であっても、自然に形成された地盤では、よほど岩盤に近い地盤でない限り沈下の懸念があります。役所に対しては、意見書への返答の前に、上記の「工作物確認申請」(または開発申請)の書類とそれに必須とされる書類について不備がなかったのかを問う必要があるのではないでしょうか。


 擁壁は地震などで崩壊する危険があり、隣接する居住民にとっては、生命や財産を脅かす危険をはらむ構造物です。また、擁壁を築造する高台側の責任が大きな構造物でもあり、擁壁の保守管理は新たに購入する高台側の住民の責任となります。地震によって擁壁が崩壊した場合には、背面の土砂が滑り出し、擁壁の上に載っている住宅の崩壊、擁壁の下部の住宅への土砂の流入などの甚大な被害が発生する可能性は否定できません。したがって、施工者や行政に対し、十分に説明を求めることは否定されるものではないと思います。


[ 2013/5/23 掲載]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 地盤コンサルタント 高安 正道

地盤は、土地の購入、住宅の建築に際し看過されがちな分野ですが、思いがけないリスク(軟弱地盤・洪水・湿気・地すべり・地震・汚染など)が潜んでいます。これまでのコンサルタント経験を生かし、分かりやすくエンドユーザーの皆様に解説します。住宅地盤品質協会会員。


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