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住宅ねっと相談室 あらかると

マンション購入時や居住中の疑問・トラブルなど、読者から寄せられた相談に建築士やFP、弁護士ら専門家が回答します(この連載は終了、新たな質問の受け付けも終了しました)

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QUESTION

マンションでのピアノ教室

(東京都 40歳代 自由業 女性)

 昨年の春に、全45戸の分譲マンションに引っ越してきました。そこは、住まいとして使っていますが、昨年秋から近所の子供たちのためにピアノ教室を始めました。


 教室である一室を約300万円かけて防音室にし、騒音対策を施しました。両隣の方からも、全く聞こえないと言っていただいております。また、レッスンが終わると、私が生徒の手を引いて一緒にエレベーターに乗り、1階のオートロック玄関の外に出てお迎えの親に渡し、次の生徒をその親から預かり、再び玄関のオートロックを解錠して中に入り、一緒にエレベーターに乗って5階に上がり、教室へ連れてきてレッスンをしています。


 このように、ほかの住民の方には絶対にご迷惑をかけないよう精一杯の努力をしているつもりでいたのですが、先日管理組合の理事長や一部の人がピアノ教室に反対し、やめるように言ってこられました。


 管理規約を読むと、「専有部分は主として住宅として使用する。また、主として住宅以外に使用する場合には、不特定多数の人が出入りするなど周辺に迷惑をかけないようにすること」となっており、違反行為に当たらないのではと反論すると、今の規約のままではピアノ教室をやめさせるのは難しいと判断したのか、今年4月初めの定期総会に管理規約を改定する「特別決議」(専有部分は専ら住宅として使用すること)を緊急提案すると言ってこられました。強引な事前工作をして「特別決議」(4分の3以上の賛成)が可決された場合、ピアノ教室はやめざるを得ないのでしょうか。理事長側は、新規約に基づき裁判をしてでもピアノ教室をやめさせると言っているそうです。


 もし、裁判になったら敗訴して、ピアノ教室をやめざるを得なくなる可能性はあるのでしょうか。


ANSWER

法の不遡及原則

(住宅ねっと相談室カウンセラー 司法書士 石田 光廣)

 住居専用マンションでどこまで仕事をしてもかまわないかという問題は、線引きがとても難しいですが、現在の管理規約でそのような文言があれば、居住しないで仕事のためだけに使用することも認めているようにも解釈できますね。たとえば、漫画家が仕事場専用に使ったり、私のような資格者が自宅兼事務所として使ったり。いずれも、住民に迷惑がかからなければ構わないという規定のようにも解釈できます。


 しかし、現実は管理組合の理事長に睨まれてしまったということですが、何か思いあたる節はないでしょうか。目立つ看板を掲げているとか、エレベーターの使用率が高いとか、エレベーターや廊下で子供がはしゃぐとか、防音工事の際、理事長に承諾を得なければいけない規約があるにもかかわらず得なかったとか…。


 刑法の考え方の基本原理に、「法の不遡及」というものがあります。法で罰するには、行為時にその法律がなくてはならず、後から法律をつくって遡及的に処罰してはならないという考え方です。これを参考にして考えると、規約の改定があっても、その効力は、施行された後にその行為をした人にしか適用できないというのが原則です。したがって、たとえ裁判になっても、相談者の行為がすぐに否定される可能性は低いと思われます。


 かといって、同じ管理組合員同士の確執は困りますので、なんとか円満に解決したいところです。たとえば1日平均何人の生徒が来て、何回エレベーターを使っているのか(エレベーター使用電気代が一番問題になります)、看板はどのような形態なのか、防音対策と周辺住民のご意見など、進んで資料を提出するという方法もあります。その結果、必要があれば、改善策を提示したり、エレベーター使用料を支払うことも考えられます。


 住居専用マンションにおける使用の実態は、これからの時代、ますますニーズは多岐にわたると思います。社会のニーズが変化している近年、就職難のせいだけでなく、「職住同源」といって、仕事場と住まいを一致させ、地域に根ざしたサービスの提供が再び見直されていく時代です。分譲マンションも昼間の人口を増やし、触れ合う機会が高まることは良いことですので、資産価値が低下する行為とそうでない行為の線引きを柔軟に考えるべきだと思います。


 がんばってほかの住民の理解を勝ち取って下さい。


[ 2011/2/27 掲載]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 司法書士 石田 光廣

 『相続のたびに“まち”が壊されていく!』。これが長年のまちづくり研究で分かったことです。不動産や住宅は、経済資源ではありません。国家の重要なインフラです。秩序ある不動産の継承は、「まちづくり」の原点です。皆さんに正しい知識をもっていただいて、暮らしやすい社会を実現したいですね。こんな思いから司法書士になりました。


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