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住宅ねっと相談室 あらかると

賃貸住宅の入居・退去時や居住中の疑問・トラブルなど、読者から寄せられた相談に建築士やFP、弁護士ら専門家が回答します(この連載は終了、新たな質問の受け付けも終了しました)

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QUESTION

競売で家主が変わった場合の敷金と修繕費請求

(京都府 20歳代 学生 女性)

 教えていただきたいことがあります。現在、住んでいる賃貸マンションに抵当権がついていて、それが実行され、競売でマンションの家主が変わりました。新しい家主さんから3カ月以内に出て行ってくれと言われました。


 引っ越し先を見つけたのですが、いろいろインターネットなどで調べてみると、こういう場合は、敷金は前家主に払ったことになるので返ってこないようです。敷金は諦めるしかないでしょうか? それと、逆に部屋引き渡しの際に修繕費としてお金を請求されることはあるのでしょうか?


 いろいろ自分なりに調べてみたのですが、よく分からないので教えて下さい。よろしくお願いします。


ANSWER

まずは、前提知識の学習から

(住宅ねっと相談室カウンセラー NPO役員 石田 光曠)

 最近、同種の相談が増えていますので、相談者だけでなく、一般の方にもぜひ知っておいていただきたいと思い、前提知識からお伝えします。


 平成16年4月にある法律の改正がありました。「短期賃貸借契約制度」の廃止です。 「短期賃貸借制度」とは、賃貸住宅のような建物賃貸借の場合、3年以内の比較的短期の契約期間(3年以内の更新期間中にも適用)であれば、たとえその間に優先権のある抵当権等の実行により競売が行われ所有者が変わったとしても、契約期間内については、退去させられることはなく、敷金返還も新しい所有権者に請求できるという制度でした。ある意味、賃借人の立場からは、ごく当然の制度です。


 ところが、この良心的制度を悪用し、競売妨害をする暴力団関係事件が多発しました。そこで、金融機関などの強い要望により、仕方なく平成16年に廃止になり、代わりに、6カ月間は立ち退き猶予するという「明渡猶予制度」のみになりました。この点で、相談内容のような「3カ月以内に出て行け」という主張は無効ですし、従前における修繕費についての債務は、新所有者とは無関係です。もっとも、敷金は従前の賃貸人にしか請求できず、現実には泣き寝入りするしかないのが実情です。


 そんなわけで、同様の相談が多いのですが、いろんな公的相談窓口に行っても、返って来る答えは「無理」がほとんどのようです。この相談室で、以前、私が「がんばって交渉してみてください」なんて書いたら、「消費者にぬか喜びさせるな!」という某機関の専門家から、おしかりのメールをいただきました。


 でも、よく考えてみてください。おかしいと思いませんか。今まで、消費者保護の観点から存在した制度が、諸事情で改正になったからといって、本当に被害を被っている善良な消費者が、全く保護されないということがあるわけがありません。まだ判例、先例が出ていない制度改正ですから仕方ありませんが、正直、法令の文言をそのままごく当たり前のように困っている消費者に伝える専門家の方が情けないと思います。正確な情報を伝え、何とか救済する方法がないものかということを、一緒になって考えるのが法律家や専門家の仕事ではないでしょうか。


 と、まあ青いことを言ってしまいましたが、現実には難しいのも事実です。でも、諦めるのも悔しいではありませんか。そこで、次の対抗策を検討してみてください。


(1)抵当権の実行が分かった段階で、賃料の支払いをストップし、新しい所有権者が所有権を獲得するまでの間の賃料その他旧賃貸人に対する債務と敷金の相殺を宣言する。
(2)賃貸借契約の際の仲介業者の職責として、重要事項説明を口頭および書面でしなければいけないという業法規則があり、抵当権がついている物件を貸す場合は、その旨と、万が一抵当権が実行されたときの問題点を分かりやすく説明しなければなりません。
もし、それを怠っていたとすれば、仲介業者から損害賠償を取れる可能性も出てきます。
(3)すぐに法律相談に行き、納得いく方法が見つかるまで、複数の法律家に話を聞く

 今回の相談者の場合、(1)については手遅れかもしれません。しかし、抵当権の実行による差し押さえがされたときに、大家、並びに管理会社には、賃借人に伝える責任があると思います。もし、その責任を怠っていたとしたら、これも債務不履行の要因になりえます。


 決して、法律を悪用してはいけませんが、正義のためには、十分に活用し、戦う気持ちだけは持ち続けるべきだと思いますし、それこそが適正な市場の形成の源です。


 どこかの辞任した大臣も口にした「ごね得」は、私も賛成しませんが、諦めない精神と勇気を持った行動は、消費者庁の創設も求められているわが国にとって、今一番必要なことだと思います。何より、この国の住宅市場の健全化を心から望みます。


[ 2008/10/30 掲載]

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住宅ねっと相談室カウンセラー 司法書士 石田 光廣

 『相続のたびに“まち”が壊されていく!』。これが長年のまちづくり研究で分かったことです。不動産や住宅は、経済資源ではありません。国家の重要なインフラです。秩序ある不動産の継承は、「まちづくり」の原点です。皆さんに正しい知識をもっていただいて、暮らしやすい社会を実現したいですね。こんな思いから司法書士になりました。


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