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第172回 提言! 住宅ローンも「ポータブル」の時代へ

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 これまで貸出金利の低さ、つまり金利のディスカウント合戦により顧客の囲い込みをしてきた住宅ローン市場に、ここ最近、ある変化が見え始めている。


 今年4月に3つの信託銀行が合併して誕生した三井住友信託銀行が、今夏から中古住宅の購入費用とリフォームの工事費用を一本化した住宅ローンの取り扱いを開始した。すでに同様のローンはスルガ銀行、千葉銀行、八十二銀行などでも提供されており、建物の確認検査機関や不動産仲介各社と提携しながら、新規貸出の増大に向けた動きを加速させている。さらに、住宅金融支援機構でも中古住宅の購入とリフォーム工事に必要となる資金を一体の手続きで借りられる「フラット35 リフォームパック」を7月から用意している。


 こうした変化の背景には大きく2つの理由がある。まず1つが金利引き下げの限界だ。金融機関の貸出ポートフォリオを見ると、近年、住宅ローンは重要な位置を占める主力商品になっている。特殊法人等整理合理化計画によって住宅金融公庫が廃止(2007年3月末)になったことで、ポスト公庫の座を狙い、民間金融機関はいっせいに個人向け住宅融資に傾注した。その結果、銀行間の競争は激しくなり、1人でも多くの顧客を自行へと誘導すべく、貸出金利のダンピング合戦をエスカレートさせている。今日、変動金利が実質(優遇後)1%を割り込むほどの低水準にまで引き下げられているのが、何よりの証拠だ。


 その利下げ競争にも限界が来ている。ライバル行に勝ちたいとはいえ、採算性を度外視してまで金利優遇幅を拡大することはできない。利益確保を犠牲にしてまで、金利優遇策を推進するには無理がある。そこで、金利のディスカウント合戦からの脱却を目指し、新たなローン商品の開発・提供を加速している。


 そして、2つ目の理由として挙げられるのが中古住宅市場の拡大期待だ。フローからストックへと、国策として長期間にわたって使用可能な良質住宅のストック形成が打ち出された。また、地球環境問題やエネルギー制約の観点からも、良質な既存住宅を適切にメンテナンスし、必要に応じてリフォームし、多世代にわたって使用していくことが求められている。こうして中古住宅への市場参加者が増大すれば、ローンの貸出も比例して増えると考えるのは自然なことだ。市場規模の拡大を見込み、数行の金融機関が上述の「一体化ローン」で先鞭をつける。


 ただ、さらなるマーケットの拡大には既成制度を打ち破る発想の転換が不可欠だ。いくら国を挙げて中古市場を盛り上げても、現実問題、購入者の資金計画という“目の前”の壁を乗り越えられなければ本格的な活性化は不可能だ。その壁とは住宅ローンの残債が売却額を上回る「担保割れ」のことを指す。一度、担保割れ状態に陥ってしまうと、いざ自宅を買い替えたいと思っても、超過分を自己資金で補填できない限り、いつまでたっても買い替えはできない。残債を上回る資金力がないと自力では身動きが取れないのだ。


 そこで、解消策として筆者が提案するのが「ポータブル住宅ローン」の創設だ。住宅ローンを“持ち運べる”ようにすることで、担保割れの状態でも自宅を買い替えられるようにする。既存の住宅ローンを背負ったまま、同時に新規のローンを組んで住み替えを成功させようというわけだ。Wローン(既存ローンと新規ローンの二重返済)の心配はあるが、“住宅ローン呪縛”から解放される意義は極めて大きい。中古市場の規模拡大に貢献するのはもちろん、金融機関にとっても貸出機会の拡大につながる。借り手・貸し手どちらにもメリットがあるのだ。決して絵空事を並べているわけではない。本コラムを契機に、一歩でも一体型ローンが実現する方向に前進してくれることを願ってやまない。


金融先進国の米国では9年前から「ポータブル住宅ローン」が商品化

 米国では、何と9年前(2003年)にポータブル住宅ローンが開発されており、すでに商品として実在している。やはり金融先進国だけあって、金融技術の進歩には一日の長がある。


 改めて概要を説明すると、自宅を買い替える際、従前の住宅ローンは消滅せず、抵当権が買い替え前の家から新規に購入した家へと付け替えられる仕組みだ。債務を“携帯する”ことから「ポータブル」という名称が用いられている。米国の場合、融資対象は借入者自らが居住するための住宅となり、返済期間は最長30年。金利水準は通常の住宅ローンより高めで、借入者の信用力(返済能力)についても通常より厳しい条件が付されている。


 また、米国には買い替えに特化したローンとして、「アシューマブルローン」というローンもある。住宅ローン債務が自宅の買い替えに伴い、売り主から買い主へと承継されるローンだ。ポータブルローンのような抵当権の移動はなく、融資対象となっている住宅のローン返済義務者が売り主から買い主へと入れ替わる。要は、貸し出された住宅ローンの名義人(抵当権設定者)だけが変更される仕組みだ。売り主から買い主へと1つの住宅ローンがリレーされるのをイメージすると分かりやすいだろう(下図参照)


(出所)自民党政務調査会「200年住宅ビジョン」

 そのため、売買の「前」と「後」で貸し出された住宅ローンの融資内容(借入金利や返済期間、残債額など)は変わらない。すべて、そのまま買い主に引き継がれる。金利上昇局面において従前の低金利がそのまま利用できるのは、こうした仕組みのためだ。このアシューマブルローンは1970年代後半に登場しており、すでに30年以上の歴史がある。わが国では自民党政権時代に打ち出された「200年住宅ビジョン」の中で紹介されている。


自由な住み替えを可能にすべく、制度の柔軟化に期待

 振り返ると日本にも買い替えに特化したローンとして、残債抹消資金と新規の住宅購入資金を一体で借りられる「買い替え専用住宅ローン」がある。ただ、当該ローンは担保価値以上の融資となるため、審査は厳しく、事実上、所得水準の高い人に利用が限定されている。取りっぱくれないようにするにはどうすればいいのか?――金融機関は常に、そんなことばかりを考えている。


 もともと日本の住宅ローンは「リコースローン」といって、長期滞納の結果、競売の実行により自宅を奪われても、残債がある限り住宅ローンは払い続けなければならない。住むところを失っても、住宅ローンはなくならないのだ。東日本大震災の地震や津波で自宅を失った被災者も例外ではない。原因が地震や津波という自然災害(不可抗力)であろうとも免責されない。これが“住宅ローン呪縛”だ。もちろん、借りたものを返すのは当然だが、担保設定に関し、日本の金融機関は借り手側を縛り過ぎていないだろうか。


 米国は「ノンリコースローン」といって、いくら借金が残っていても自宅を手放しさえすれば、その後の返済は免責される。つまり、金融機関が最終リスクを負う仕組みになっている。借り手と貸し手の間で、リスクバランスがほぼ均衡しているのだ。その点、日本は住宅ローンに内在するリスクを借り手側に一方的に押し付けており、そのやり方はアンフェアーと言わざるを得ない。


 文頭で、中古住宅の購入費用とリフォームの工事費用を一本化した住宅ローンについて触れたが、すでに「有担保」の住宅ローンと「無担保」のリフォームローンを組み合わせるという“芸当”が実現している。努力すれば担保設定の柔軟化は不可能ではないのだ。


 担保割れに陥ると身動きが取れなくなる最大の理由は、既設の抵当権を完全に抹消しないと新規の住宅ローンが組めない点にある。ということは抹消の必要性をなくすことができれば、格段に担保割れ住宅の流動性は高まる。中古住宅の流通量を増やすことができる。資産デフレが長引くなか、担保割れ住宅の救済は待ったなしだ。中古ストックの循環利用を図るためにも、大胆なテコ入れが欠かせない。早急な住宅金融(個人向け住宅融資)の機能強化を切に願う。



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[2012/9/12]

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住宅コンサルタント 平賀 功一

e住まい探しドットコム代表。ネットを中心に公平・中立なスタンスで「失敗しない住宅選び」のための情報発信を行う。


e住まい探しドットコム http://www.e-sumaisagashi.com/


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