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第154回 ミドル世代から考えたい「ついの住み家」 5つの選択肢

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 突然だが、読者の皆さんはわが国の持ち家率をご存じだろうか。持ち家率とは、人が居住している住宅全体に占める持ち家数の割合のことで、総務省の「住宅・土地統計調査(2008年)」によると61.1%となっている。5年に1回の調査のため、2011年のデータがないのが残念だが、過去30年を振り返るとその平均は60.9%となり、日本では長らく「6割」で推移していることが分かる(グラフ参照)


 かつて「住宅すごろく」のゴール(=ついの住み家)といえば、郊外の庭付き一戸建てというのが一般的だった。社会人になって親元を離れ、アパート生活を開始し、結婚を機に今度は都心での分譲マンション生活へとグレードアップする。子供が大きくなるとマンションでは手狭になるため、最後は教育環境なども考慮しながら、郊外の一戸建て住宅に落ち着くというストーリーだ。あたかも人生を“すごろく”のように歩み、住まいを替えていくのが「住宅すごろく」である。その“あがり”(終着点)は一戸建て住宅というのが、これまで定番モデルとされてきた。


 しかし、しばしば住宅は「買う」ものか「借りる」ものか?――といった議論がなされるなか、上記の結果からすると、統計上ではおよそ4割が「非・持ち家派」ということになる。こうした現実を鑑みると、前述のような住宅すごろくは必ずしも万人に当てはまらないことになる。つまり、ついの住み家の選択肢には、もっとバリエーションがあっても不思議ではないはずだ。


 土地神話の崩壊に長引く資産デフレと、今では「マイホーム」=「資産」という等式は必ずしも成り立たなくなっている。先の大震災によって顕現化した「二重ローン問題」からも明らかなように、時と場合によって「不動産」は「“負”動産」(負の資産)に様変わりする。生活の基盤であるはずのマイホームが、一転、人生を狂わせる魔物へと豹変するのだ。


 それだけに、特にミドル世代の人たちには広い視野を持ってついの住み家を選んでほしい。ゴールをイメージし、そこから逆算して理想の住まいを見つけてほしいのだ。65歳で定年退職し、その後、80歳まで生きたとすると、約5500日(=15年)をついの住み家で過ごす計算になる。決して短い期間ではない。早ければ早いほど、準備に時間を費やすことが可能となる。ミドルの人生再設計は、いつから始めても問題ない。老後の安定した生活を手に入れるためにも、本コラムを参考に終着点を見据えた住まい方を見つけてほしい。


郷に入っては郷に従う精神なくして、充実したカントリーライフは過ごせない

 近年、日本全体では人口が減少局面へと転じる一方、大都市圏では人口流入が続いている。総務省の「住民基本台帳人口移動報告(2010年基本集計結果)」によると、転入数から転出数を差し引いた人数(転入超過数)は3大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)で7万6137人となり、1996年以降15年連続で転入超過の状態が続いている。特に東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)は著しく、その中でも東京都の転入超過数の増加は顕著だ。東京都への人口集中が鮮明になっている。


 その一因として考えられるのが、アーバンライフに憧れて都心回帰する人たちの存在だ。住宅すごろくに従い、郊外の庭付き一戸建てをいったんは手に入れるも、子供が独立してしまうと夫婦2人では広すぎ、しかも維持管理の煩わしさが加わって、次第に利便性の高い都心マンションを希望するようになる。こういう人たちは住まいこそ郊外だったが、勤務先が都心にあり、また、学生時代を都会で過ごした人も多い。そのため、もともと都心志向が強い傾向にあり、定年を契機に都心回帰へと行動を起こす。


 ただ、買い物に娯楽施設と利便性は高い半面、難点としては生活費が高くなりやすい。都内で新築マンションを購入しようとすると、最低でも5000万円程度は必要になる。利便性の享受と引き換えに生活面での支出が多くなるので、その点、資金的余裕がある人に向いている選択肢といえそうだ。


 他方、都心回帰派の対極としてカントリーライフを望む人たちの存在も忘れてはならない。一口に田舎暮らしといっても、生まれ育った故郷へ戻るケースもあれば、縁もゆかりもない土地で新たな生活を始めるケースもある。どちらも都会の喧騒から開放され、自然と触れ合い、スローライフを満喫できるのが最大の魅力だ。


 しかし、特に新たな環境を求めて新天地へ住み移る場合には注意が必要だ。その土地には長い時間をかけて形成された地域コミュニティーが存在している。そこへ新参者として飛び入り参加するのだから、地元の古くからある風俗や習慣をきちんと守るなど、郷に入っては郷に従う精神が欠かせない。週末を別荘で過ごすようなリゾート感覚では困るのだ。人間関係を良好に保ち、地域に受け入れられる努力ができないと孤立してしまう心配がある。


住宅すごろくは100%オーダーメイド ゴールには定番も正解も存在しない

 続いて、3番目として今度は国内から飛び出し、海外での長期滞在について見ていこう。海外移住の最大の魅力は日本に比べて物価が安く、異文化体験ができる点にある。たとえば、ロングステイ先として常に上位にランキングされるマレーシアの場合、物価は日本の3分の1程度だそうだ。マクドナルドのハンバーガーセットを注文しても200円程度で済むそうで、月額20万円もあれば夫婦2人で十分な生活ができる。治安も衛生環境も決して悪くはなく、気ままな異文化体験を満喫するには好都合なロケーションといえる。


 ただ、ここでも注意点がある。言葉の壁と宗教や文化の違いには細心の注意が必要だ。異国の地である以上、言語や信仰・生活習慣が異なるのは当然。だからこそ異文化交流が体験できるわけだが、地元の風習やしきたりを知らないと思わぬトラブルに発展することになる。その国の一員であるという自覚と認識をしっかりと持つことが重要なのだ。現地生活をエンジョイするためにも、前もってその国のことを下調べしておくと安心だ。


 そして4番目、話を日本に戻して高齢者のための施設に入所するという選択肢も忘れないでほしい。特に健康に不安を感じていない人には縁遠い話かもしれないが、将来、子供たちには面倒を掛けたくないという自立自助の考えを持つご夫婦には検討する余地があるだろう。


 不幸にして、高額な入居一時金や介護報酬を不正請求する老人ホームや、従業員による認知症高齢者への虐待などのニュースが途絶えないが、高齢者施設に入ることで健康面での不安や心配から開放される幸せは何物にも代えがたい。今春、住生活の安定の確保と向上の促進のための基本的施策を定めた「住生活基本計画」が見直され、国策としてサービス付き高齢者向け住宅の供給促進が本格化されることとなった。少しずつではあるが、環境整備は進んでいる。要介護の状態になってから慌てて探しても、条件に合った満足のいく施設は見つからない。発想を転換し、元気なうちから準備しておくことが得策と心得たい。


 以上、4つの選択肢を紹介したが、最後、5番目として現状維持という方法もある。住めば都というように、無理して生活の拠点を変更する必要はない。重要なことは計画的にゴールインすることなのだ。定年後をどのように過ごすかは人それぞれ。すべてその人次第となる。住宅すごろくのゴールには定番も正解もない。100%オーダーメイドだ。それだけに未来予想図を描き、その実現のための準備を早い時期から始めることが良い結果につながる。ミドル世代はまさに、そのスタート時期といえる。住まう人のスタイルに合わせた多彩なプランの中から、自分に最もふさわしいついの住み家を上手に見つけてほしい。


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[2011/12/13]

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住宅コンサルタント 平賀 功一

e住まい探しドットコム代表。ネットを中心に公平・中立なスタンスで「失敗しない住宅選び」のための情報発信を行う。


e住まい探しドットコム http://www.e-sumaisagashi.com/


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