マンション購入 トレンドウオッチ
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第155回 2012年のマンション市場動向 その「期待」と「不安」
今年12月中旬、“あの人”が報道されているニュースを久しぶりに目にした。2005年11月に発覚した耐震強度偽装事件で、安全性に問題があると知りながらマンションを販売して詐欺罪に問われていたヒューザー(破産)の小嶋進・元社長に関するニュースだ。
主犯の姉歯秀次・元一級建築士が建築基準法違反などで懲役5年、罰金180万円の実刑判決を言い渡され、また、確認検査機関イーホームズ(廃業)の藤田東吾・元社長が懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡されるなか、小嶋被告は一貫して「無罪」を主張し続けてきた。そのため地裁、高裁で決着せず、上告審で今月ようやく最高裁によって最終判断が下された。事件発覚から6年、被告側の上告が棄却され、懲役3年、執行猶予5年とした一審、二審判決が確定することとなった。
一連の騒動を振り返ると、この事件は「性善説」に立脚して成り立っていたすべての建築法規を根底から覆したことになる。「起こるはずがない」と誰もが信じていた構造計算書の改ざんが意図的に行われ、それ以降、あらゆる建物で耐震性に対して疑心暗鬼の念が持たれるようになった。「姉歯ショック」と言わしめた前例のない衝撃は、ネガティブインパクトとなって関係業界のみならず、社会全体に悪影響を及ぼした。
その後も2008年9月にリーマン・ショック、さらには都心部を中心としたミニバブルの崩壊による販売低迷と、住宅産業は数々の試練に直面してきた。あたかもドミノ倒しのように次々とデベロッパーが経営破綻に追い込まれ、マンション市場は完全な“冬の時代”に突入した。そして2011年3月、今度は東日本大震災がさらなる試練として追い討ちをかける。幸い、分譲マンションは壊滅的な被害を免れたが、回復傾向にあった市場のムードは一転、下降局面へと様変わりした。
しかし、筆者は悲観していない。幾多の逆境に遭遇しても、住宅業界は絶えず再生を成し遂げてきた。今回も必ずや乗り越えられると確信する。耐震偽装事件が物語るように、われわれは失敗から教訓を学び、その教訓を関連法の改正や住宅の商品企画に役立ててきた。ピンチをチャンスに変えてきたのだ。2012年は大震災の教訓が生かされ、防災性能に優れたマンションが登場してくることだろう。さらに「電気料金の削減」も重要なキーワードになってくる。はたして2012年のマンション市場はどのような動きを見せるのか、気になる最新トレンンドを追ってみたい。
震災の教訓を生かし、ハードとソフト両面による防災対応力の強化が進む
東日本大震災後、住まいに関する意識についてどのような変化があったか?――全国宅地建物取引業協会連合会が今年9月下旬~10月に実施したアンケート(有効回答数7145件)によると、以下のような結果(重複回答)となった。テレビで繰り返し流される倒壊した建物や液状化被害の惨状を目の当たりにし、多くの人が土地・建物の安全性に対する関心を高めている。
| ・築年数や構造(免震・耐震)について考えるようになった | ………63.7% |
| ・地盤などの状況を意識するようになった | ………55.5% |
| ・緊急避難場所がどこにあるかを意識するようになった | ………40.8% |
| ・学校や勤務先からの帰宅経路について意識するようになった | ………21.7% |
| ・冷蔵庫や家具などの防振対策をするようになった | ………21.4% |
| ・家族との同居や、近くに住みたいと思うようになった | ………13.4% |
| ・近隣とのコミュニケーションを重要視するようになった | ………12.6% |
(出所)全国宅地建物取引業協会連合会
こうした変化に呼応するように、各デベロッパーは防災対応力の高いマンションの供給に動き出している。たとえば、三井不動産レジデンシャルはマンションの災害対策のあり方を根本から見直し、今後、開発するマンションの防災基準の強化に乗り出した。免震システムの採用やエレベーターの加震対策といった構造面の強化にとどまらず、地中の液状化対策、電気や水などのライフラインを確保するための対策、さらに防災倉庫を設置して防災備品を装備するなど、救援機関による本格救護が開始されるまでの数日間をマンション住民で相互支援できる対策にも力を入れている。
また、同社は日産自動車と連携し、電気自動車の駆動用バッテリーからマンションの共用部分に電力供給するシステムを導入する試みも始めている。有事の停電対策というわけだ。いずれも未曾有の震災被害があったからこその対応力強化といえるだろう。2012年、こうした傾向はさらに強まっていくはずだ。ハードとソフト両面による防災対応力の強化が、住宅の「安全」「安心」の確保につながる。
マンションも「スマート化」の時代へ! 一括受電で電気代を引き下げる
続いて2012年のトレンドとして、「電気料金の削減」も忘れてはならない重要キーワードとなる。すでに一戸建て住宅では「スマートハウス」といったように、宅内電気を最適化して節電するシステムの導入が進んでいるが、分譲マンションでも電気料金削減の仕組みが取り入れられ始めている。
三菱地所レジデンスは自社が手がける一定規模以上の新築マンションに電力の「マンション一括契約サービス」を導入し、各住戸の電気料金を安くできる仕組み作りに取り組んでいる。通常は電力会社と各家庭が個別で電気の契約を結ぶが、これを「家庭ごとの個別契約」から「マンション一棟の一括契約」に切り替えることで、電気料金のコストダウンを図る。一括契約(大口契約)のほうが電気料金の単価が安いという特性を生かし、その差額で電気料金の引き下げを実現する。電力料金削減サービス事業を展開する中央電力と連携しながら、東京と大阪を中心に約5万戸の分譲マンションにすでに導入を果たしている。
追随するように、三井不動産レジデンシャルも首都圏のファミリー向け新築分譲マンションに「マンション受電一括システム」を積極導入していくと発表。また、年末には大京も首都圏と近畿圏で小規模マンション向けに「電力一括購入システム」を導入することを表明した。オリックス電力と組んで原則50戸以上、電気室のないマンションすべてに導入していくという。
3月11日以降、計画停電に電力使用制限令の発動(昨夏比15%節電)と、誰もが電気の最適利用を意識するようになった。原発利用に慎重な意見が多いなか、電気料金の値上げは避けられそうにない。電気料金の削減システムは、その値上げ分を吸収する効果が期待できる。2012年、導入事例はさらに増えるだろう。今後、電気の一括受電システムはマンションインフラのスタンダードになっていくはずだ。
専有面積は狭く、単価もファミリーに比べて割高なコンパクトマンション
以上、2つのトレンドを紹介したが、その一方、あまり喜べない話題もある。コンパクトマンションの台頭だ。下表は首都圏コンパクトマンションの供給数の推移だが、2008年度をボトムに再び増加傾向にある。首都圏マンション全体に占める割合(シェア)も同様に拡大傾向を示しており、調査元の不動産経済研究所は「今後もコンパクトマンションは全マンションの中で確立された分野として確実に市場を作っていく」と予想する。
| 年 度 | 供給戸数(戸) | シェア(%) | 年 度 | 供給戸数(戸) | シェア(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2001年度 | 6,827 | 7.56 | 2006年度 | 6,133 | 8.66 |
| 2002年度 | 8,303 | 9.77 | 2007年度 | 5,667 | 9.75 |
| 2003年度 | 13,448 | 16.15 | 2008年度 | 5,324 | 13.25 |
| 2004年度 | 10,295 | 12.47 | 2009年度 | 7,574 | 20.06 |
| 2005年度 | 8,454 | 10.12 | 2010年度 | 7,667 | 17.03 |
(出所)不動産経済研究所「首都圏のコンパクトマンション市場動向」
ここで一体、何が問題なのかというと、筆者は専有面積の縮小を憂慮している。新たなカテゴリーとして定着すること自体は歓迎なのだが、「犬小屋」「猫の額」と揶揄(やゆ)され、ただでさえ諸外国と比べて狭い日本の専有面積が、さらに狭くなっていくとしたら、これは喜べる話ではない。
販売価格(グロス)はファミリーマンションに比べて安価に設定されているが、単価(ネット)で見ると実は割高になっている。2010年、首都圏マンション全体の平均単価が1平方メートル当たり66.4万円だったのに対し、同年度、コンパクトマンションだけの平均単価は同79.4万円と13万円も高い。都心の新築マンションが4000万円以下で買えるのは魅力的だが、狭くて単価も割高なのがコンパクトマンションの特徴だ。「犬小屋」から「うさぎ小屋」にレベルダウンしないためにも、シェアが一定範囲に収まるような配慮が必要だ。
2012年は辰年、龍のごとく飛躍の年になることを切に願う。
◇
[2011/12/27]
住宅コンサルタント 平賀 功一

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