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第145回 「銀座」という街の魅力について考えてみる

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 7月1日、国税庁から今年(2011年)の路線価が公表され、下げ幅こそマイナス3.1%と前年(マイナス4.4%)からは縮小したものの、全国平均で3年連続の下落となった。地域別に見ると東京都(同2.0%)、大阪府(同3.4%)、愛知県(同0.8%)と、3大都市も下落を免れず、改めて地価にデフレ圧力が働いていることを痛感させられる。バブル崩壊から20年が経過したが、失われたのは「10年」ではなく「20年」(失われた20年)であることを感じずにはいられない。


 しかし、こうした状況下においても不動の地位を保っている地点がある。東京都中央区銀座5丁目の文具店「鳩居堂」(きゅうきょどう)前だ。何と26年連続で全国一の路線価を維持しており、地価に下押し圧力が強まる中にあっても1平方メートル当たり2200万円(昨年2010年の全国平均路線価は12万6000円)という超・高額な価格を付けている。


 実は今年、同額(全国一)を付けた地点がもう2箇所あり、あんぱんで有名な「木村屋総本店」前と大手百貨店「銀座三越」前がそうだ。どちらも住所は銀座4丁目で、中央通りをはさんだ真向かいに位置している。筆者も何度となく行ったことのある場所だが、今さらながら銀座という街のポテンシャルを実感させられる。一体、そこまで路線価を吊り上げる力とは何なのか、不動産関係者ならずとも気になるところだ。そこで、今回はいつもと趣向を変え、銀座という街について考えてみたい。名実ともに東京を代表する商業地・銀座の魅力とは何なのか、分譲マンション事情にも触れながら、その現状と将来像について考察してみることにする。


■巻き起こるファスト・ファッション旋風 かつての「銀座らしさ」が失われ始める


 今年3月3日、晴海通りと並木通りが交差する交差点の一角(銀座4丁目)に、カジュアル衣料ブランドのGAP(ギャップ)が旗艦店をオープンさせた。国内最大の売り場面積だそうで、銀座という街に対する同店の強い思い入れが感じ取れる。


 突然、「何で衣料品店の話が出てくるのか…」と思ったかもしれないが、実は、銀座にとって象徴的な出来事がこの場所で起こっていた。当初、ビルの建て替え後は高級ブランドのルイ・ヴィトンが出店する予定だったのが、途中で計画変更となり、GAPに入れ替わったのだ。「ラグジュアリーブランド」から「カジュアルブランド」へと大転換が図られたことになる。


 ここ最近、銀座に足を運んだことのある人ならお気付きだと思うが、「名だたる海外ブランド店がひしめく高級街」というイメージはかなり薄れつつある。カジュアル色が強まっており、客層には若年化の波が押し寄せている。ユニクロを筆頭に、ZARA(ザラ)やH&M・フォーエバー21といったカジュアル専門店の一大勢力がこぞって銀座に出店したことで、来街客の低年齢化と低価格志向に弾みがつくこととなった。ファスト・ファッション旋風が銀座の街を席巻し始めている。


 こうした流れは顧客層の幅を広め、幅広い年代からの集客が期待できるようになる一方で、これまで守り続けてきた「銀座らしさ」を損ねてしまう危険がある。ルイ・ヴィトンが出店計画を中止した背景には、「銀座ならでは」といった街の価値や魅力が失われつつあることへの警戒感があった。昨年9月11日、銀座三越が増床リニューアルを行ったのも、その根底には「本物」「おもてなし」といった銀座のイメージが希薄化していることに対する危機感があった。420億円を投じて大改装を敢行したのは、「銀座三越ならでは」を取り戻したいという思いがあったからだ。


■伝統と先端文化が上手にバランスを取り、新たな「銀座スタイル」を作り出していく


 ここで、改めて「銀座らしさ」「銀座ならでは」とは何なのか考えてみると、イメージとして思い浮かぶのは「上質」「老舗」「洗練」「あこがれ」といった言葉だ。2003年ごろから名だたる海外の高級ブランド店が銀座の目抜き通りにお目見えするようになったが、こうした銀座の持つイメージと各ブランドのイメージがとても似通っていたことがブランド店の出店を後押しした。相場を逸脱した価格でも飛びついたのは、価格だけでは割り切れない銀座の魅力を高級ブランド各店が感じ取っていたからにほかならない。


 その結果、高級ブランド店の出店によって銀座の価値は向上し、また、価値の向上がさらにラグジュアリーブランド店を呼び込むという好循環メカニズムが生まれていった。バブル的な状況になりつつあったのも、まさにこの頃だ。


 しかし、2008年のリーマンショック以降、この勢いは鈍化する。前述したルイ・ヴィトンの出店中止、また、有楽町西武が26年の歴史に幕を閉じる(2010年12月)など、世界同時不況の高波は銀座の街にも襲いかかった。国内景気の後退による消費の冷え込みで高級品が売れなくなったのに加え、ファフト・ファッション旋風の到来により、低価格志向が強まったことが原因だ。


 銀座は明治以来、街の歴史を踏まえ、伝統を大切にしながら独自の発展を遂げてきた。そして、その過程において、街の景観を損ねるような銀座にそぐわない業容の店舗を排除する地元住民や常連客の目が養われていった。要は街並み形成において、銀座にふさわしいか否かを判別する一種の“ふるい”が出来上がっていった。このふるいは「銀座フィルター」と呼ばれ、長らく予防線としての役割を果たしてきた。


 ただ残念なことに、ここ数年のカジュアル化の過程においてはフィルターが十分に機能せず、「ラグジュアリー」から「カジュアル」への主役交代を阻止することが出来なかった。一体、銀座の将来はどうなるのだろうか?


 ここでマンション事情にも触れておくと、銀座には単身者を意識したコンパクトタイプの分譲マンションは数多くあるのだが、ファミリー向け分譲マンションはとても少ない。マンション用地に適した一定面積の土地が放出しにくいのが主因と考えられる。山一証券の自主廃業や北海道拓殖銀行の経営破綻など、1990年代後半の金融危機によって銀座エリアの主要行からも土地が放出されたが、こうした銀行の跡地はほとんどが高級ブランド店に買い占められていった。商業地としては世界中から注目される一方で、住宅地としては未成熟なのが現状というわけだ。


 ただ、そうした中で唯一と言えるファミリー向け分譲マンションがある。2003年に三菱地所が完成させた「銀座タワー」がそうだ。総戸数181戸、25階建てのタワーマンションで、有楽町線「銀座一丁目」から徒歩4分、銀座三越のある4丁目交差点へも徒歩9分という好立地に位置する。マンション適地が放出されにくいという事情が関係し、期間50年の定期借地権なのが特徴だ。平均坪単価250万円という価格設定は、定借マンションならではの魅力といえよう。


☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 今後の銀座を展望すると、これからは「ラグジュアリー」と「カジュアル」の融合が、新しい銀座らしさを生み出していくと筆者は考えている。かつての高級路線は軌道修正され、老若男女を問わず、より多くの人が楽しめる街に変わるだろう。伝統と先端文化が上手にバランスを取りながら共存することで、新たな銀座スタイルが出来上がる。敷居が引き下げられるため、大衆色が強まることは考えられるが、その分、親しみやすさが倍増され、相乗効果が生まれることが期待される。銀座が東京を代表する商業地として、今後もゆるぎない地位を保ち続けることは疑う余地もない。来年(2012年)の路線価も、鳩居堂前が最高額になることは間違いないはずだ。



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[2011/7/27]

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住宅コンサルタント 平賀 功一

e住まい探しドットコム代表。ネットを中心に公平・中立なスタンスで「失敗しない住宅選び」のための情報発信を行う。


e住まい探しドットコム http://www.e-sumaisagashi.com/


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