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第13回 オーダーメードマンションが普及しない理由とは?

 売り手にとっては、既成の間取りでは満足しなくなった消費者を新たな顧客として開拓するため、一方の買い手にとっては、自己のライフスタイルや感性を具現化する一法として、間取りを自由設計できるオーダーメードマンションが注目を浴びるようになった。ところが、タワーマンションのようなブームは到来せず、最近はすっかり影を潜めている印象だ。オーダーメードマンションが普及しない理由とは一体何なのか? その真相に迫る。

■今もなお、日本の住宅は貧しい
 一戸建て住宅に「建て売り」と「注文建築」が存在するように、マンションにも同様のことが当てはまるのは自然なことだ。ところが日本では、「マンションを注文建築する」といった発想は発展途上で、市民権を得ているとは言い難い。「日本の住宅は貧しい」といわれるのも、“犬小屋”と皮肉られる面積(=狭い)の問題以外に、洋服に例えれば既製服に身体を合わせるように、売り手が提案するプランに買い手が生活条件を合わせるという、本末転倒の事態が日常化しているからにほかならない。

 家族構成や生活スタイルの変化に応じて、部屋数(広さ)や立地(利便性重視あるいは自然環境重視)を自由に選択できるのが本来の“あるべき姿”であるにもかかわらず、決められた間取りの中で、肩身の狭い思いを余儀なくされているのが現状だ。すべてのしわ寄せは世のお父さんたちに降りかかり、マイホームを手に入れた途端に“2時間通勤”が始まるなどは、諸外国には例を見ない異常な光景といえる。衣・食・住の「住」に関し、経済大国日本は完全な後進国なのだ。

■マンションを自らの手で建設する、という発想
 そうした中、住み手が自らの力でマンションを建設しようと試みたのが、コーポラティブ(協同組合)方式による共同住宅、いわゆるコーポラティブマンションだ。事業計画の立案に始まり、用地の取得や施工業者の選定および発注、さらに入居後の管理に関する取り決めまで、すべてを入居(予定)者が手間暇かけて行っていく、まさに「注文建築版分譲マンション」。共同住宅と注文建築の“いいとこ取り”をした居住形態として、つくり手(≠買い手)の満足度は高い。

 しかし一方で、不動産取引や建築の知識が必須なのは当然として、最低でも工期は2年程度かかり、その間、マンションにかかりっきりにならざるを得ない。本業の片手間でこなせる業務ではないだろう。そのため、完全に自力だけでマンション建設する例は皆無に等しい。現在の主流は、煩わしい業務を入居予定者に代わって専門コンサルタント業者が代行(介在)し、すべてのお膳立て(用地取得や基本プラン)が整った状態で、専有部分だけを自由設計できる形式がほとんどだ。こうしたスタイルであれば事実上、マンションを買うことと同じ感覚でコーポラティブマンションに住めることになる。

■「企業の論理」が自らの首を絞める結果に
 オーダーメードマンションの発祥も、設計思想は前出のコーポラティブマンション同様、住み手の「こだわり」を具現化することが原点にある。住まいの理想系=あるべき姿に一歩でも近づいたことは評価に値しよう。しかし、コーポラティブマンションでは当事者が、委託者(協同組合)と受託者(施工業者など)であるのに対して、オーダーメードマンションでは売り主(分譲業者)と買い主(消費者)となる。つまり、コーポラティブマンションとの最大の違いは“売り主が存在する”ことなのだ。オーダーメードマンションでは「企業の論理」、すなわち売り主の“思惑”が作用してしまうことが、普及を遅らせる結果につながっている。

 言うまでもなく、オーダーメードマンションは自由に間取りを設計できることが最大の魅力だが、契約者の趣味嗜好(しこう)でプランニングされた住戸を契約解除されたら、新たな買い主のために原状回復しなければならない。限られた工期の中で引き渡し日が確定しているだけに、せっかく完成した間取りを現状に戻し、その後、新たな買い主のために再び内装工事するのは非効率極まりない。そのため、契約後のキャンセルは絶対に避けなければならないのだ。また、様々な注文を出す買い主の要望に対応するには、経験豊富なスタッフが欠かせない。こうした専門スタッフを抱えるには当然コストもかかるし、限られたスタッフ数では要望に応える能力にも限界が出てくる。

 こうしたことから、オーダーメードマンションは規模(世帯数)がコンパクトな物件が多くなりやすい。解約リスクや人件費を少しでも抑えるには、マンションの大規模化は難しい。フィットネスクラブやオーディオルーム、さらにはショッピングセンターなど、共用施設の充実が大規模あるいはタワーマンションのセールスポイントであることを考えると、ほとんど何もない小規模マンション(=オーダーメードマンション)はどうしても見劣りしてしまう。そのため、自由設計の魅力以上に共用施設の不足がマイナスに働いてしまい、結果として、オーダーメードマンション離れにつながっている。

 高齢化が進めば、和室が欲しくなったり、バリアフリー対応が求められたり、また、ホームシアターやカラオケルームといった趣味の部屋、さらには仕事場を兼用できるプランなど、今後、ライフスタイルや住宅観の多様化により、間取りも「非・画一化」が進むことは間違いない。それだけオーダーメードマンションの潜在需要は大きい。

 「生活条件に間取りを合わせる」・・・当然のことが当然となるよう、企業の論理(効率性や採算性)ばかりを追求せず、“顧客本意”に立った経営戦略を望みたい。

(住宅コンサルタント 平賀 功一)

[ 2006年1月25日 ]


住宅コンサルタント 平賀 功一氏
 「マイホーム選びの基準」とは一体何だろう? 世間ではマンションブームといわれる一方、地震や台風の災害リスク、金利上昇懸念やリストラによる返済リスク、さらに欠陥住宅といった構造上のリスクなど、夢のマイホームが悪夢に変わるおそれは少なくない。このことは、マンション購入に関する「成功の方程式」が見えにくくなっていることの表れであり、こうしたリスクを回避するには“トレンド”を読むことが欠かせない。敵(=時代の潮流)を知らずして、正しい戦略は立てられないからだ。
 そこで、はじめてのマンション購入のヒントとなるよう、時代をとらえた“旬”な話題をコラム形式でお届けしよう。

e住まい探しドットコム(http://www.e-sumaisagashi.com/)代表
ネットを中心に公平・中立なスタンスで「失敗しない住宅選び」のための情報発信を行う。
日経住宅サーチ「マンション管理サテライト」でも連載中。

ファイナンシャルプランナー 宅地建物取引主任者

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