


吉川
墓地・霊園の購入時に覚えておいてほしいことが2つあります。1つ目は購入に際して。墓地の購入は一般の土地購入とは違って「永代使用権(※1)」と呼ばれる権利を購入することを指します。墓地の「永代使用権」を購入後、お墓を建てる予定がなくなったからといって、勝手に他の人へ権利を売買することはできません。使用することがなくなったら墓地を更地にしてお返しすることが決まりとなっています。
墓地の購入時にかかるお金として主なものに「永代使用料」、「墓石代」、それに毎年支払う「管理費」があります。購入総額は墓地の規模・場所により差はありますが、平均で250万円程かかります。この購入時の金額は遺族で分担することもありますが、「祭祀財産(さいしざいさん)(※2)」の権利は家族の中の一人のみが担うことになっています。そのため永代使用権は長男、仏壇は次男という形はできないことを覚えておいたほうが、後々トラブルにはなりにくいでしょう。
2つ目は墓地・霊園選びです。ポイントとしては、第一に交通の便ですね。墓地・霊園へお参りに行きやすい、交通の便の良さがあげられます。基本的に墓地・霊園の場所は人があまりいないところにあることが多いため、そこに行くための電車・バスなどの接続や運行本数など、チェックしておきましょう。
墓地・霊園の敷地内のポイントは、水はけの良さや法要施設の有無、バリアフリー化があげられます。水はけは、お墓の劣化にかかわるので、カロート(墓地に遺骨を納めるための納骨室)や歩道などに雨水がたまらないかどうかをチェックする必要があります。法要施設は、お墓の近くにあると折々の年忌(ねんき)法要で家族が集まりやすいという利点があります。施設・管理の様子などは現地に足を運んでご自身で確認したほうが良いでしょう。そこでおすすめしたいのが、墓地・霊園の見学バスツアーです。複数見学することが可能であるため、違いなども明確になり、比較検討ができます。専門家による説明会などもありますので、不明点をその場で確認すると良いでしょう。
吉川
ひとつのキーワードとして「住墓近接(じゅうぼきんせつ)」があります。自分の住んでいる場所に近く、お参りしやすいところにお墓を、と考える方が多くなってきました。昔と違い、兄弟・姉妹が少なくなったことと、故郷から遠くはなれた場所で働き、定年後も戻らず住み続ける方が増えていること……。そんな要因から、お墓を守るとしても、なるべく現在住んでいる場所の近くが求められるようになってきました。そのため、故郷からお墓を「改葬(※3)」される方も増えてきています。
また、都心でお墓を持つ場合、「小規模小区画」ということも認識しておいたほうが良いでしょう。一般的に昔からのお墓のサイズは1.5m2以上のものが多いのですが、 現在都内の多くでは1m2以下のものが増えています。都心の住宅事情と似て、区画を細かく割ることによって、多くの方を受け入れる、小家族向けという傾向です。「小規模小区画」になることによって、購入の費用を抑えられ、その分、お墓を建てること、つまりは墓石やデザインなどに費用がかけられるため、小さくても納得のいくお墓を建てられるというメリットがでてきます。
最近では今までの墓地・霊園のイメージから、明るく、お参りしやすい雰囲気が好まれ、常時、花がたくさん咲いているガーデンタイプなども増えてきています。
吉川
約6~7割くらいの方が生前に墓地・霊園を購入されています。「住墓近接」のために改葬して、自分がいずれ入るためだけでなく、家族が日頃のお参りを行いやすくすることを兼ねて生前購入される方が多いですね。一方で、故郷で後継者不在のため、改装される方もいらっしゃいます。以前は、お墓は後継者ありきでしたが、現在は少子化の問題もあり、自分が亡くなった後にお墓を守る人がいない場合が多くなってきたため、永代供養付きのお墓を生前に求められる方も増えているのです。
生前購入のメリットは、これまで見てきたようにご自身でお墓の問題を解決できること。先に購入することで、税金対策にもなります。祭祀財産には相続税がかからないためです。そして何よりも残された方々への負担軽減となります。遺族はお葬式の後、金銭面や祭祀の継承など問題が山積みになっていくなかで、お墓のことまで頭が回らなくなることも多いのです。生前購入によってご自身でお墓の問題を完結しておくのは、残された人への思いやりになると言えましょう。

吉川 美津子 (きっかわ みつこ)
葬儀の司会進行、仏壇・墓石の営業や販売などに従事した後、専門学校で葬祭ビジネスコースの運営に携わる。2003年より葬儀社起業サポート、コンサルタント業務を開始。現在は、葬儀社・葬儀関連業者向けコンサルティング、研修・教育、各地での講演・セミナー、取材・執筆を中心に活動。
<用語説明>
※1
「永代使用権」とは墓地を何世代にもわたって永代に使用できる権利のことです。正当な承継者に引き継ぐことができますが、他人に売却したり転売したりすることはできません。
※2
相続対象財産のうち、お墓、仏壇、位牌などを民法では「祭祀財産」といいます。祭祀財産はその特性から分割して相続することはできません。「祖先の祭祀を主宰すべき者」にあたる特定の1人にすべて承継されます。
※3
「改葬」とは、お墓を別の場所に移すこと、つまり引越しすることをいいます。墓地・埋葬等に関する法律の規定に従った手続きが必要です。