



誰もがいつかは考えることになるお墓。家族のあり方が多様化しても、お墓は変わらず心のよりどころ、先祖への供養の場として存在する。最近では既存のお墓の形ではなく、自分らしいお墓を求める人も増えてきている。お墓を建てる際に大切なことは何か、日本人にとってお墓とはどういう存在なのかを、全国の優良石材店300社あまりで組織されている全優石(全国優良石材店)の吉田剛会長に聞いた。
亡くなった方を敬う心のよりどころとも言えるのがお墓です。人が亡くなったら墓を建立しなければならないという法律はありませんが、古代から洋の東西を問わず人はお墓を建てています。それは「亡くなった方を偲び敬う」という、人の心に自然に発生する気持ちから生じる行動といえるでしょう。それぞれの方の心のよりどころとなるお墓ですが、気軽に購入するものでもないため、皆さん、身近なこととして考える機会が少ないのでしょう。いざ、お墓を建てようという際にお困りになる方が多いようです。そこでお墓を建てる際に確認していただいた方がよいことを紹介します。
墓地には民営墓地、寺院墓地、公営墓地と3種類あり、どの墓地でも確認しなければならない事項が「墓地使用規則」に定められています。墓地使用規則は法律で決められているものではなく、各墓地ごとの規則となり、永代使用料や墓地の利用資格、宗教についてなどが細かく決められています。永代使用料でよく問題になるのは、墓地を購入したけれどお墓を別の場所へ建てることとなった場合、永代使用料は返却してもらえるのか、ということです。多くの場合、使用規則に「返却されない」と記載されているので、購入前によく確認をしておきましょう。宗教については、宗派不問となっている墓地には2種類あることを知っておいたほうがよいでしょう。一つはお寺の場合。墓地購入の際には、そのお寺の宗派と違っていても問題ありませんが、購入したら檀家にならなければなりません。もう一つは公営や民営の墓地・霊園の場合ですが、購入の際もその後も、宗派を問われることはありません。
とりあえず墓地を購入して、必要なときにお墓を建てようと考えている方もおられると思います。その場合も、墓地の使用規則をよく確認してください。「何年以内に外柵を作る」「何年以内にお墓を建てる」ということが決められていることが多いのです。
よいお墓を建てようと、墓石選びを気にされる方が多いと思います。かつて、1970年代にはすべて国内で生産されていた墓石ですが、現在は9割が中国産です。かといって品質が下がったということではありません。墓石に使われる石は大きく4種類に分けられ、細分化すると700~800種類もあります。そのため一般の方が日本産であるかどうかを見分けたり、よい材質の石を自分だけで選ぶことはとても難しいでことしょう。またお墓は、墓石を買って建ててもらったら終わりということではなく、代々使っていただくためにもアフターフォローが大事になります。最近では墓石のみを売り、アフターフォローを一切しない業者が出てきました。そうした業者から購入した墓石が2年でひびが入り割れてしまったということや、墓石の汚れに薬品を使って変色させてしまったなど、さまざまな相談が寄せられています。そもそも墓石が災害以外の原因で割れてしまったり、手入れに薬品を使うこと自体があり得ない話です。いずれのケースでも業者による補償はされませんでした。前払いで費用を要求され、建てる前に逃げられてしまったというケースもあります。きちんとした対応をする石材店ならば、このような問題は出てこないでしょう。なぜなら石材店は、基本的に地元密着型であるからです。地元で信頼が得られなければ、その土地で代々商うことができません。お墓を建てようとお考えの方は、地元に定着した石材店にまずは相談されることをおすすめします。
少し前までは、細長い長方形の竿石を中心とした昔ながらの和型のお墓が一般的でしたが、最近では洋型の墓石が人気です。2010年の調べでは、和型よりも洋型を選ぶ人が多くなりました。洋型は和型に比べて形が安定しているため、東日本大震災もきっかけに、倒れにくいお墓という点からも人々の関心を集めています。免震工法を用いたお墓もすでに登場しており、今回の震災でも倒れることなく無事でした。


現在、お墓づくりは新たな方向へ移りつつあります。故人を偲ぶ、敬うということに変わりはないのですが、既存のお墓の形ではなく、故人の「個」を尊重する方向へと変わってきているのです。あるご遺族は殉職された白バイ警察官の息子さんのために、白バイに乗った警官を形取った墓石を建てました。また別のご家族では墓石に家族団らんで使っていたソファを原寸大で再現しています。いずれみんな天国へ行くのだから、またあの世でも家族団らんが楽しめるようにという、お父さんの思いが表現されています。
これまでは個性的な人生を歩んだ人でも、皆等しく和型の墓石に納まるのが一般的でした。しかし今は、それぞれの思いを込めたデザイン性の高い墓石を望む人が増えました。もちろん、今まで通りの和型を望む方もおられ、お墓の形は社会同様、とても多様化しています。また霊園も徐々に変わりつつあります。ヨーロッパでは霊園は町の中にあることが多く、まるで公園のように美しい花々が咲き、散歩する人の姿も多く見られます。霊園は死者と生者のコミュニケーションの場とされているのです。日本でもその考えが取り入れられ、従来の霊園のイメージとは違う明るい印象の霊園が増えてきています。
全優石ではお墓を建てる方が安心して石材店を選べるようサポートを行っています。万が一トラブルがあった場合には全優石全体で責任を持ち対処する、業界では唯一のダブル保証書を発行して安心をお届けしています。墓石を購入した石材店が倒産した場合なども、組織全体でお客様をバックアップいたします。東日本大震災の被災地では、多くのお墓も被災しました。修復するにも被災地の石材店だけでは限界があります。そこで全優石では全国の会員石材店に呼びかけ、被災地に派遣し、お墓の修復に努めています。大変な状況のなかですが、力をあわせ少しでも早く復興していきたいと思っています。
全優石でお墓を建てられた方から写真や手紙をいただくことがあります。そのなかで、まだ幼いお子さんが、お墓の前で手を合わせている写真がありました。祖先や目上の人を敬う気持ちを、お墓参りで自然に養うという象徴的なシーンであると思いました。お墓というのは亡くなった方の安息の地だけではなく、まさにこれから先も生きているご家族や人々にとっても、心のよりどころであるのではないでしょうか。

全国優良石材店の会 会長 吉田 剛
1940年、東京に生まれる。慶応幼稚舎/中/高/を経て、慶応義塾大学法学部卒業。
在学中、先代社長(父親)の急死により東北工業株式会社(現・インターロック株式会社)の三代目社長に就任。2008年代表取締役会長に就任。1975年より墓石業界の経営近代化のため各種情報提供・セミナーなどを実施。更に消費者が安心してお墓づくりを任せられるお店作りを目途に「全優石」を1982年に設立。石材店と組織で守るダブル保証制度を確立。また、早くから石文化の構築を提唱し、1987年にはセンチュリーハイアットホテルにて、ニューデザイン墓石を発表、墓石業界に一大旋風をおこし墓石デザインコンテストの継続的実施をはじめ、石文化サロンなどを主宰、お墓文化づくりに長年にわたって尽力。また、お墓博士としてテレビ、ラジオ、新聞等に出演するほか、早稲田大学オープンカレッジをはじめ、お墓講座の講師として全国各地で講演。丁寧でわかりやすいお墓講座は各地で好評を博している。
現在、一般社団法人「全優石」(全国優良石材店の会)会長。全国建築石材工業会常任理事。著書:『これだけは知っておきたい最新お墓の話』(ワニブックス)、『おもい入れのお墓づくり』(言叢社)、『想いを込めた新しいお墓づくり』(現代書林)、監修:『あなたはいつもそこにいる』(アートデイズ)他。