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クリエーターたちの挑戦
Murazumi Chiaki
小林純子さん(トイレ・アーキテクト)
五感を解放する、心地良いトイレをつくりたい
問「いつもどんなことを考えてトイレの設計に取り組んでいますか」
 トイレの概念を変え、そして空間を変えたいと常に思っています。与えられたスペースの中に必要な数のブースをつくるだけでいいのか。快適な便器さえあればいいのか。何か違うことは考えられないか。そもそもトイレとは、人にとってどういうスペースなのか。

 トイレは、単に排せつのためだけの場所ではありませんよね。街を歩いていて、ちょっと気分が悪くなったとき、髪が乱れたり、裾がほつれたりしたときに駆け込む場所でもあります。あるべき姿が崩れそうになったとき、深呼吸して自分を取り戻すスペース。排せつと同時に、自分自身を調整する場所がトイレではないでしょうか。
京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンター客用トイレ。
問「住宅のトイレについては、どうお考えでしょう」
 日本の住宅のトイレは、空間としてはとても貧相ですよね。洋便器が1つか2つ付いているだけ。男性は不便な思いをしているでしょうし、多分みんな、あまり満足していないはず。なのに、それが当たり前だと思っている。昔のほうが、よほどいいトイレがあったのではないでしょうか。

 ある古い家で見たトイレには、通風の窓と外を見る窓、それに障子がきちんとしつらえてありました。窓の外にはしだれ梅があって、便器の前には一輪挿しを置く棚が付いている。もっと昔なら、母屋から渡り廊下を通って、風に吹かれながらトイレに行ったでしょう。排せつに行くという行為と重なって、自然とのふれあい、五感の解放があったと思うんです。
マリエとやまトイレ。子供と一緒に入れる「ファミリートイレ」は、どこの施設でもとても人気が高いという。
 今のトイレは、利便性ばかり追求された結果の姿です。温水洗浄、暖房、脱臭と便器の機能はどんどん進化しているのに、空間は置き去りにされている。お金もかけていないし、トイレとはどんなスペースか、考えられてもいない。住宅の中にあって、見捨てられた場所ではないでしょうか。

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