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クリエーターたちの挑戦
Mitsuko Shimada
島田 満子さん(造形作家・環境アーティスト)
科学と遭遇した環境アート
lead
問「なぜ、“しわ”なのでしょう。このモチーフに魅せられたきっかけ、理由は」
 最初は偶然の産物でした。展覧会のために用意していた作品に、ふとした失敗からしわが寄ってしまったのです。しかし、そのかたちは実に奇妙で、美しい。意図的につくろうとしても、繰り返すたび、違うかたちが現れます。そのおもしろさにすっかり魅了され、もう20年以上つくり続けています。
「ジェネシス(創生)」2004年
 考えてみれば、私たちが住む地球の地形も、地殻変動によってできたしわです。その顕著な現れが火山とすれば、幼い時期を過ごした阿蘇の記憶が、私の原風景になっているのかもしれません。宇宙でさえ、収縮と膨張を繰り返している。そのテーマをしわによって追求していきたいのです。
センチ単位のしわ マイクロメートル 単位のしわ
 人間の脳や腸にも、しわがありますよね。しわが寄ることで、小さなところに大きな表面積を詰め込むことができる。しわは自然の合理性が生んだ造形です。そこには何かの機能があるはずだと感じていました。
問「しわの実用化のひとつとして、水質浄化素材が生まれたとか」
 しわのオブジェを野外に設置すると、コケがよく生えるんです。それなら海の藻場や川岸の緑化にも使えるのでは、と熊本県の関係部局に持ちかけました。そこで、試験的に坪井川の護岸工事に採り入れていただくことができたのです。しわの陶板を水辺に並べて張る。陶板そのものは水面下に隠れますし、やがて藻が生えてくるでしょうが、それも含めて、アートととらえています。
坪井川の護岸に並べられた、しわの陶板
 複雑で有機的なしわは、型ではつくれません。私が試行錯誤のなかから編み出した製法には、特許も下りました。そして、この製法を用いれば、陶土だけでなく、ペースト状のものなら、どんな素材でもしわがつくれるのがミソ。坪井川の陶板には、のこくずや木炭粉を混ぜましたが、下水道の汚泥を用いた新素材も開発しました。この素材は、木炭の約2倍の吸着性をもつことが実証されています。廃棄物を有効利用でき、水質浄化に役立ち、しかも木炭に比べて強度が高く、ずっと安価。海や河川の浄化など、広く応用できる素材だと思います。
熊本県大津町浄化センターロビー・陶壁画「奔流」1988年 熊本新港・風で動く彫刻「人生航路の贈物」2001年

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