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クリエーターたちの挑戦
Yuki Sugiura
杉浦 幸さん(商空間プロデューサー)
「人が集まる」場の魅力をつくりだす
lead
問「商空間プロデュースとは、どんな仕事でしょうか」
 そもそも、商空間とは何か。私は、単に「モノを売り買いする場」としてでなく、「人が集まる場」ととらえています。人が集まるからこそ、そこにコミュニケーションが生まれ、モノや情報がやりとりされるようになる。商空間をつくるとは、人が集まる場所をつくることなんです。

 商業の起源をたどれば、神社仏閣にいきつくでしょう。人間が生きていくうえで、求めてやまない何かがあって、それに引き寄せられて人々が集まり、商業が生まれた。現代の商空間は、宗教に代わる魅力で人を引きつけなくてはなりません。その魅力を見つける、またはつくりだすために、何が必要か考え、仕掛けをするのが私の仕事です。
大阪・梅田「イーマ」ファサード
 たとえば、2003年にオープンした商業施設「イーマ」の立地は、大阪の中心部にありながら、「人が行かない場所」でした。あたりはオフィス街でめぼしい店舗はなく、あってもチケットショップか金融機関ぐらい。通りには人影もまばら。そこへ人を呼び寄せるにはどうすればいいか、それが出発点でした。

 周囲に人がいないわけではなく、オフィスには多くの人が勤めています。ただ、地上が魅力的でないために、駅に通じる地下街へ下りていってしまう。幸い、イーマの敷地は、かろうじて地下街に接点を持っていました。そこでまず、地下と地上を結ぶ、通り道に選ばれる施設にしたいと考えたのです。「集まる」以前に、まず「通る」。通ってもらって存在を知らしめ、通る途中で目をひいて、立ち止まらせようという狙いです。

 敷地は大きくないので、地下から1階だけでなく、上階も有効に活用しなくてはなりません。上の階のショップまで行きたくなるような仕掛けが必要です。そのために、小さいけれど吹き抜けを2つつくりました。通りに面した店がウインドーディスプレーで人目をひくように、吹き抜けに面した窓や壁面の演出で、通行人の関心をひきます。同時に、吹き抜けは、ビルの中に外光をたっぷりと取り入れ、のびやかな空間をつくりだします。
「イーマ」計画時に作成したコンセプトグラフィック
「イーマ」内部。吹き抜け見下ろし
 商業施設の売り上げは、「賃料単価×床面積」で決まります。一般的には、吹き抜けをつくって床面積を削ることは利益に反しますが、ここでは、商業施設としての価値そのものを創出することが先決でした。立地など条件のマイナス面をプラスに転じ、価値のないところに価値を生み出す。それが、商空間プロデュースの仕事の大きな意義のひとつです。

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