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クリエーターたちの挑戦
Toshiro Tanaka
田中 稔郎さん(空間アーティスト)
グリッドフレームが目指す「ものづくりの連鎖」
lead
問「会社の名前になっている《グリッドフレーム》とは何ですか」
 建築や家具を構成するためのシステムパーツです。鉄のフレームをネジで組み立てるだけで、大小さまざまな形がつくれ、構造体として一定の強度も確保できる。私たちの空間づくりのベースになっています。いつも使うわけではありませんが、基本となるシステムを持っていることで、ゼロから構想するより、ずっと早く設計できます。
東京・原宿「セックスポット」クモの巣をイメージしたショーケース
 システムの原点には「図面を引かずに空間をつくりたい」という思いがあります。3次元のものをつくるのに、なぜ図面が必要なんだろうか。図面で考えるより、直接つくってしまう方が楽しいし、面白いじゃないですか。ただ、それには、つくるためのよりどころとなる手段が必要です。その手段として開発したのが、グリッドフレームなのです。

 ネジとドライバーさえあれば、だれでもつくれる。組み立てたり分解したり、試行錯誤を繰り返し、つくりながら考え、考えながらつくる。そのプロセスこそ、ものづくりの面白さではないでしょうか。
問「商業空間のデザインを依頼されたときも、図面はつくらないのですか」
 もちろん、打ち合わせのために簡単なスケッチは描きますが、描いたものに縛られず、つくる過程で派生する問題や、その場その場のひらめき、思いつきといったハプニングを大切にしたいと考えています。
東京・御嶽山(おんたけさん)「フェリース」内観全体
 例えば、美容室「フェリース」の設計では、初めに「南欧のカフェ風にしたい」という要望がありました。それは、これまで私たちが手掛けたことのないデザインイメージだったので、可能性を探るために、とりあえず現地に行って、壁をペイントしてみることから始めたんです。

 塗りながら、壁紙をはがした跡や取り外された柱や桟の痕跡に、古びた味があることを発見し、それを生かすことに決めました。そこで、古い壁を背景として、その前に新しい壁を立てる、2重壁の構想が生まれたわけです。
同上。鉄のフレーム
 新しい壁の下地として、鉄材のフレームを組んでいます。私たちらしい素材を取り入れたかったことも、2重壁を採用した理由といえるでしょう。

 美容室はすでに開業していますが、まだフレームがむき出しになったままの部分が残っています。本当は開業前に新しい壁をつける予定でしたが、途中で別のアイデアが生まれたので、保留に。幸い、アントニオ・ガウディのサグラダファミリアのような、「つくり続ける建築」に傾倒している施主だったので、受け入れていただけました。

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