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クリエーターたちの挑戦
Watanabe Kenichiro
渡邊謙一郎さん(家具ショップオーナー・デザイナー)
「驚きのないデザイン」が「安心できる家具」をつくる
lead
問「大学の建築学科を卒業したそうですが、なぜ家具のデザイナーに?」
 僕は、建築にあまり興味のない建築学生でした。卒業を控えて建設会社の内定をもらったものの、どうも気が進まない。そこで、手当たり次第いろんな職業を試しました。映画のオーディションも受けたし、車の整備工場にも行ってみました。ちょうどそのころ、たまたま手にした雑誌で家具職人という仕事を知り、強くひかれるものを感じたんです。
カフェ「S.G.F.S.」。内装および家具製作を手掛けた
 そこで、今度は家具屋めぐりを始めました。これはと思う店を訪ねて、「職人にしてください」と切り出すんです。ところが、どの店も「うちに工場はありません」と言う。そこで初めて、「家具屋は家具をつくっていない」という事実を知りました。僕には、まるでレストランでレトルト食品を出しているように感じられました。

 けれども、当時も工場を持つ家具屋がなかったわけではありません。その一つを探しあて、同じ調子で「職人になりたい」とやったんです。そうしたら店長にこっぴどく叱られました。「おまえは、技術とお金の両方が欲しいのか」と。それを見ていた店員が、あとでこっそり、職業訓練所の存在を教えてくれました。ここから、僕の家具修業がスタートしたわけです。

オーダー家具の例
問「以前から家具や工作が好きだったというわけではないんですね」
 残念ながら違うんです。もともと体育会系なんですね。負けず嫌いで、目標に向かって努力するのが好き。家具屋で手厳しく叱責された悔しさから、そこに入社することが当面の目標になったんです。
問「そしてわずか1年で目標を果たした、と」
 僕を叱った店長は、そのことを覚えていなかったようですが。案の定厳しい会社で、ずいぶん鍛えられました。その後、もっと技術を身に付けたくて、オーダー家具専門の木工所に移ったんです。

 そのころは僕自身の技術が伸び盛りでしたから、木工所の仕事だけでは飽き足らず、副業で友人や知り合いのために家具をつくり始めました。それが次第に評判を呼び、仕事が増え、周囲の求めに応じて独立することになったのです。

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