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クリエーターたちの挑戦
Ogata Shinichiro
緒方 慎一郎さん(和食店・和菓子店オーナー/デザイナー)
現代の暮らしの中に日本の伝統文化を再生する
lead
問「和菓子店“HIGASHIYA”は、緒方さんにとって和食店に次ぐ2軒目の店だそうですが、デザイナーが店の経営に乗り出した理由は」
 それまで、10年近く店舗のインテリアデザインを手掛けてきましたが、店にとって、空間が果たす役割はせいぜい3分の1に過ぎないという思いがありました。あと3分の1は商品、残る3分の1は人、つまりサービスにかかっています。インテリアデザイナーの立場ではそこまで関与できないことに、ジレンマを感じていたんです。いつか、100%自分の理想でまとめ上げた店を実現したいと願っていました。

 実際に経営に踏み切ったのは、それまでの蓄積を通して自分なりのコンセプトが固まったからです。会社の設立と同時に、和食店の経営に着手しました。
左上/和菓子店「HIGASHIYA」外観
左下/ エントランス・右/1階店内

 そのコンセプトとは、日本文化を継承し、発展させていくこと。

 特に海外に出たとき強く感じるのは、世界の中に自分の位置を定めるには、自国の文化に立脚しなければならないということです。日本の文化を創造することこそ、インターナショナルな活動ではないでしょうか。

 日本の伝統文化の中には、現代の暮らしから取り残されているものが数多くあります。これを新しくつくり変えていく必要がある。現代の日本文化を創造することが、自分の進む道と思い定めたのです。

 では、何から始めるか。文化の根源は「食」にあると思います。一番重要な、食べることからスタートする。それが、和食店「HIGASHI-YAMA Tokyo」を始めた動機なのです。

 もっとも、そこにはごく単純な動機もあって、何しろ食べることが大好きなんです。どこに行っても食べたり飲んだりしています。そのおかげで、自分の中に理想の和食店のイメージが出来上がっていたのです。

左/和食店「HIGASHI-YAMA Tokyo」アプローチ
右/エントランス

 「HIGASHI-YAMA Tokyo」も「HIGASHIYA」同様、入り口はわざと分かりにくくつくっています。道路からいったん細い階段を上がって、それでも店内は見えない。テラスにしつらえた池を見ながら右に折れ、そこで初めて店の全景が目に飛び込んでくるようになっています。

 店舗の設計においてアプローチはとても重要です。隠すからこそ見えたときの感動が大きい。それも日本の美学ではないでしょうか。緊張感のあるアプローチをくぐり抜けることによって日常から切り離され、店内で過ごす時間がより生きてくるのです。


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