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クリエーターたちの挑戦
Matsui Tatsuya
松井 龍哉さん(ロボットデザイナー)ロボットを心に咲く花のような 21世紀のプロダクトに育てる
 
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問「ロボットをデザインするとは、どんな仕事なのでしょうか」
 よくプロダクトデザインと混同されるのですが、現状のロボットのデザインは、むしろ建築設計に近い仕事です。なぜなら、家電や自動車などのプロダクトには需要と供給が確立し、市場が形成されていますが、ロボットには市場がない。建築物と同じく、オーダーメードの一品生産です。
「Platina」(撮影:岡本成生)
 仕事のプロセスそのものも、建築ととてもよく似ています。まず、クライアントの目的と意図を汲み取ってコンセプトを立て、予算など諸条件のもとで最も有効な構造体を導き出す。さらに、それを具体化する設計を行い、機構や電気配線の技術者、プログラマーなどを指揮、統合して、ひとつの作品を完成させるのです。実際、私はロボットと並行して銀行や美容室などの設計も手掛けていますが、常にスタンスは変わりません。
美容室「NEWSHOTEL」(撮影:宮本啓介)

 そもそも建築家の仕事とは、人間が生活するための装置やシステムをつくることだと思います。それは住宅やビルに限りません。情報化社会の未来を考えれば、都市と人間、建築と人間との間に、必ず何か新しいインターフェースが必要になるはずです。それはネットワークにかかわるデバイス(装置)であり、おそらくロボットがその一端を担うと思います。

 私はロボットの外形をデザインしているわけではありません。設計者としてさまざまな技術や知恵を集め、時代が求める新しい生活のシステムをデザインしているつもりです。

問「ロボットに注目した理由、きっかけは」

 1999年に視聴覚統合研究用人間型ロボット「SIG」をデザインした時のことです。この時は、純粋に外形だけを設計しました。

 従来の設計は物が静止していることが前提で、正面を決め、平面図や立面図、断面図など2次元の図面を描いてデザインしていきます。しかし、何百年と続いてきたこの方法も、ロボットという動くオブジェクト(物体)には万全でなかった。隅々までSIGをデザインしたつもりだったのに、予測はあっさりと超えられてしまったのです。

 SIGは完成して動き始めた時、デザインした私自身が思いもよらなかった姿を現しました。それは、これまで学んできたデザインの概念が覆された瞬間でした。ロボットをデザインするとは、オブジェクトではなくダイナミズムそのものをデザインすることだと思い知りました。

 ロボットは、ある言葉や状況に呼応して自ら動きます。機械はスイッチを押したら必ず同じ反応を返しますが、ロボットはそうではない。ロボット自身の中にある回路を通して、予期しない反応を示すことがある。そこに、時代を変えるインパクトを感じました。

「Posy」(撮影:岡本成生)

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