TOPLiving Styleクリエーターたちの挑戦

クリエーターたちの挑戦
Tabaimo
束芋さん(現代美術家)心に埋め込まれたモチーフが場所を得たとき作品が生まれる
 
lead
問「若くして目覚しい活躍ですが、作品制作に取り組むようになったきっかけは」
 初めて作品を発表したころは、美術家になるつもりがなかったんです。自分のつくるものが現代美術の世界に受け入れられるとは思ってもみませんでしたし、何より、会社に勤めて定収入を得て、堅実に生活することを目指していました。ですから、大学の卒業制作が最初で最後の作品のつもりで、もてる力をすべて出し切って取り組んだんです。

 ところが、就職活動は不調に終わり、卒業後も1年大学に残ることになってしまいました。そこで、その間に賞を取れば就職に有利ではと、卒業作品をコンペに応募したわけです。それが最優秀作品賞をいただいたことで、次々と展覧会のお誘いが舞い込むようになりました。
「にっぽんの台所」1999年、映像インスタレーション。キリンコンテンポラリー・アワード1999最優秀作品賞。ふすまを開けて入ると、和室の3面の壁それぞれに、台所を題材にした、いくつもの短いエピソードで構成されたアニメーションが展開される。(撮影:木奥惠三、写真提供:キリンビール)
 それまで就職しか考えていませんでしたから、急に作家活動に切り替えることなど思いもよりません。ただ、せっかくの機会は生かそうと、作品をつくり続けてきたことが、今につながっています。
問「アニメーションによるインスタレーションという表現方法を選んだ理由は」
 卒業制作展という機会を与えられたとき、自分に何ができるかと考えた結論がアニメーションでした。なぜなら、私には人を感動させるような絵は描けないし、立体物もつくれない。そこで、絵をたくさん描くことで動きを生み、命を与えられるアニメーションに可能性を求めたんです。

 ただ、単なる映像作品では、展覧会場で自分のスペースを確保できません。みんなの作品が1本のビデオに収められて一カ所で上映されてしまうからです。私の作品が映されていない間に通り過ぎてしまう人はたくさんいるでしょう。本当に見てほしい人に、私の作品の存在さえ気付いてもらえないかもしれない。

 そこで、とにかく自分の場所を確保しようと、まず小さな小屋をつくりました。それを最大限広く見せるために遠近法を用いた畳を入れ、映像も3つに分けて、イマジネーションが絡み合うような空間づくりを狙ったんです。当時はこういう手法を「インスタレーション」と呼ぶことさえ知りませんでした。卒業展の特性や会場の面積といった制約の中で、一つ一つ答えを出していった結果だったのです。
「にっぽんの台所」アニメーションより

おすすめ情報(PR)