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問「メディアアートに取り組んでしばらくは、聴覚に焦点を絞った作品の発表が続いていますね」
1999年につくった「Sonic Interface」から「I/O」の連作までは、人間が「耳」を媒介として空間とどうかかわっているかをテーマとしています。
Sonic Interface 1999年
「Sonic Interface」は、鑑賞者が町の中を歩き回るのと同時進行で、周囲の音を拾い、リアルタイムに加工する装置です。全部で3つのステージに分かれており、最初は周囲の音が少しずつ遅れて聞こえ、次にモザイク状に音が断片化し、最後は音が繰り返し重なって聞こえてくる。空間と時間と聴覚の間にズレを生じさせることで、そのかかわりを問いかける作品です。
また、「I/O」の連作は、人の耳にマイクを入れる「バイノーラル録音」という方法を用いたインスタレーションです。
聴覚による空間認識は、頭や耳の形状に大きく依存しています。私たちは、頭がい骨や髪の毛や耳たぶの形によって音の前後左右を感じ取っているんです。だから、ある空間において人間に聞こえる音を忠実に採録するには、実際に耳の中にマイクを入れるのが手っ取り早い。それが「バイノーラル録音」です。
[I/O] white room 2000年
「white room」は、同じ空間で過去に起きた出来事を、聴覚だけで追体験するインスタレーションです。作品をつくるときは、まず録音者が部屋の中央に座り、その中に鳥を飛ばしたり、床に水を張って人が歩いたり、大勢の人がただ無言でたたずんだりと、10ほどの出来事を起こします。
展示では同じ条件の部屋をつくり、鑑賞者は録音者と同じ位置に座ってヘッドホンを着けます。そこで再生される音によって、周りには何も起きていないのに、その空間ならではの立体的な聴覚体験が味わえる。過去に録音者が聞いた音を、そのまま自分の体験のように聞くことができるわけです。
[I/O] warehouse 2000年
「warehouse」は、「white room」と同じ仕組みですが、場所が限定されているという違いがあります。「white room」はどこでも同じ条件の空間がつくれるけれど、「warehouse」では、鑑賞者は、録音者が録音したのと同じ、ある特定の場所に行かなければその音を体験できません。ここでは、音と空間がより強固に結びついているのです。
[I/O] distant place 2001年 ICC無響室展示(写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター)
さらに、「distant place」は無響室の中で、モロッコの街頭でバイノーラル録音された音声を体験する作品です。鑑賞者は架空の音空間に身を置き、時空を隔てた場所で起きたことを聴覚だけで体験します。
「I/O」では面白いことが起こりました。目の前に何もなくても、聴覚によって視覚イメージが喚起されるのです。たとえば鳥の羽ばたく音によって、鑑賞者は自分のそばを鳥が通り過ぎる影のようなものを感じたというのです。おそらく、視覚と聴覚はばらばらに存在するのではなく、相互を制御するネットワークのようなものがあって、聴覚が精密でリアルな体験をするとき、視覚もそれに少し引きずられるのでしょうか。
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